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翼竜に乗った撃墜王  作者: 犬尾剣聖


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11/40

11 追尾






 敵攻撃騎から放たれた火槍が僕に迫る。


 咄嗟とっさに回避行動をとろうとするが、ワイバーンが言うことを聞かない。

 わずかに翼を傾けたに過ぎなかった。


 駄目だ、命中する!


 そう思ったのだが、火槍はワイバーンの前方辺りで急速に落ちていく。

 

 有効射程には距離が足りなかったようだ。


 僕はホッと胸を撫で下ろす。


 しかしここで気を抜いてはいられない。

 火槍を放ったばかりと言うことは、再装填まで無防備ってこと。


 チャンス!


 僕は降下を初め、敵攻撃騎のギリギリまで接近する。


 最後尾の敵からの石弾魔法攻撃が始まった。


 だが想定済み。


 石弾は目の前で消えていく。


 魔法が届かないギリギリの距離を保っている。


 だが相変わらずワイバーンに落ち着きが無く、微妙に左右に揺れながら飛行する。


 この揺れで火槍を当てられるのか?


 僕は砲筒の安全カバーを外し引き金を握る。


 敵騎が中々射線上に入らない。


 駄目だ、揺れに合わせなくては……


 僕は撃つことに意識を集中する。


 吹き出す汗が風に吹き飛んでいく。


 徐々にワイバーンの鼓動を感じ始める。


 そうだ、心臓の鼓動に合わせるんだ。


 突然、飛行による風切音が僕の耳から消えた。


 同時にワイバーンの揺れが止まる。


 その時、僕は無意識の内に引き金を引いていた。


 火槍が空を滑る様に飛翔して行く。


 発射したのは二本。

 わずかに時間差をつけての発射だ。


 僕はワイバーンを上昇させながら、火槍の軌跡を目で追う。

 

 一本目はわずかに翼竜の下を通り過ぎる。


 しかし二本目の火槍は翼竜の左翼に命中。


 パッと鮮血が舞った。


 途端とたんに敵騎はバランスを崩し横転。

 低空飛行が災いし、そのまま地面に激突した。


「やった!」


 一騎撃墜だ。

 思わず拳をギュッと握った。


 気が付けば直ぐ下の地表では、味方槍兵部隊がゴブリン歩兵と戦っている。ここは最前線のど真ん中らしい。


 気を取り直して僕は再び体勢を立て直す。

 まだ敵は二騎いる。


 すると敵の翼竜は左右二手に別れて飛行を始めた。


 逃がすか!


 僕は取り敢えず、左に逃げた翼竜の後を追った。


 一旦は上昇し高度を上げる。


 そして降下。


 逃げる翼竜の斜め後ろ上方から襲い掛かった。


 かなり早い段階で敵は火槍を撃ってきた。


 もちろんこの距離では当たらない。

 オブザーバー席にいると、恐怖心からつい引き金を引いてしまう。その気持は分かるけど、それが命取りになる。


 火槍を撃てば再装填するか魔法攻撃しか手は無い。

 僕も元偵察員をだったから、それくらいは知っている。


 今度はさっきより落ち着いて狙いを定めた。


 一本発射。


 直ぐにワイバーンを上昇させ、火槍の動向を見る。


 しかし火槍は空を切った。


 う〜ん、こんなにも当たらないものか。


 気を取り直して再び下降。


 後部席のゴブリンが、火槍の再装填を終わらせたのが見えた。


 僕は少し遠い距離から先に火槍を一本発射。


 釣られてゴブリンも火槍を発射。


 僕はそれを予想して、撃たれる前にワイバーンを左に滑らせた。


 敵の火槍はワイバーンの右翼下を飛んで行く。


 こうなればこっちのもんだ。

 地面すれすれに飛びながら火槍を発射。


 敵も必死で翼竜の身体を左右に振る。

 

 まだ残弾は四発ある。

 落とせる!


 火槍は右に逸れる。


「これでどうだ!」


 もう一発発射。


 今度の火槍は左に逸れる。


 ちょっと焦ってきた。


 ゴブリンは必死に石弾を飛ばしてくる。

 魔法攻撃をしてくるってことは、火槍の再装填は無いから安心だが、石弾魔法が意外とウザい。


 このままだと敵の支配地域に逃げられてしまう。


 残弾は三発。


 慎重に狙いを定める。


 発射のタイミングでワイバーンが揺れた。


 火槍は明後日の方へ飛んで行く。


「ハルバート、邪魔するな!」

 

 声に出したが、このやんちゃワイバーンに聞こえている様には思えない。

 

 これで残弾は二発。


 改めて狙いを定めて引き金を引こうとした時だった。


 声が聞こえた。


 いや、そうじゃない。


 意思の様な何か?


 思念?


 ーー魔力が強過ぎるだって?


 そこで騎兵学校の授業を思い出した。

 教官の言葉だ。


「翼竜に命令を出す時は、手綱の動きに加えて魔力を流すと教えられたと思う。そこでひとつアドバイスをしてやろう。翼竜によって魔力の受け皿が違う。それに合わせて魔力を流せるようになれば一人前だよ。まあ、君ら訓練生がこれを理解するのはまだまだ先になると思うが、ベテラン操竜士になれば理解できるから覚えておくと良い」

 

 魔力の流す量を調整……


 僕は操竜する時の魔力を気にしながら流してみた。

 ワイバーンの様子を気にしながら、それはそれは繊細せんさいに。



 ーーワイバーンの横揺れがピタリと止まった。



 心なしかワイバーン、ハルバートが嬉しそうに感じる。


 意思が通じた気がする。


「ハルバート、やれるか?」


 ハルバートが返答するように鳴き声を上げた。


 教官はこのことを言いたかったのか!


 僕は高揚した。

 

 そしてその高揚感のまま引き金に手をかける。


 距離は変わらないのに、敵の翼竜が近くに見える。


 狙いたい箇所、翼の付け根が大きく見えた。


 僕の引き金に掛けた手が、まるで魔道具の一部になった様に自動的に動いた。


 火槍が飛んで行く。


 どういう訳か発射した瞬間、命中すると思った。


 火槍は狙い通り翼の付け根に突き刺さる。


 敵の翼竜がけたたましい鳴き声を上げる。


 そしてクルッと横転し、地面に背中から激突した。


 土煙が舞い上がる。


「やった、撃墜した……」


 言葉が漏れた。


 地表では大騒ぎなのが見える。


 戦闘中に突然翼竜が現れて、勝手に空中戦を行なって勝手に墜落したんだ。

 大騒ぎになるのも当然か。


 さて、ここでゆっくりはしてられない。

 右側に逃げた翼竜がいる。あれを落とさないといけない。


 僕はもう一騎の翼竜の後を追った。









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