表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

『街を出ていざ旅へ』

 簡潔に言おう。俺は旅に出ることになった。


まず第一に、この世界に召喚された俺の使命だ。

簡単に言えば、この世界は魔王軍と呼ばれる謎の勢力が、裏で暗躍している。

魔王軍が生み出し、人間社会に送り出す者たち。

それは奇怪な能力、残忍性、そしてその見た目や経緯から、異界の魔物と呼ばれていた。


だが魔王軍と言うのは、この世界の人間がそう認識しているに過ぎない。

実情は俺が元居た世界、つまるところの地球に関係している。

その経緯から…。

ーーー

世間から正義の味方と呼ばれる正義のヒーロー・イーグルマスク。

そして奴が戦うのは、強化人間を生み出して世界征服を目論む〈悪の組織〉。

かくいう俺も、その組織が生み出した強化人間の一人だ。


組織の連中と違うのは、俺に世界征服なんて野望が無いことだった。

正義への復讐の為に強化人間になった俺は、イーグルマスク組織の両方と対立していた


そして俺は負けたのだ。イーグルマスクに殺された。

ーーー


しかし、そこが問題だったんだ。

イーグルマスクがいつも使う必殺技・イーグルセイバー。

実はその技には、何らかの物理的要因が重なって()()()()()()()()()らしい。


結果、それで殺された俺を含む複数の強化人間たちが、()()()()()()()()()()()()()()()してしまったという事だ。


その後、転移した強化人間の技術が利用され、この世界が危機に陥る。

そう、その転移技術を持って創られたのが魔王軍だ。

ーーー



他の連中とは違う意志を持った俺。

この世界の創造主とやらは、そんな俺を利用して魔王軍を排除しようと試みたらしい。

女神の化身・リトルと名付けた小さなオオカミを添えて。


************************



『タツヤ、忘れ物はない?』

「そもそも持ち物がねぇよ! いきなり異世界に放り込まれたんだからよ。」


魔王軍のキメラ・ヴェルディとの交戦で、俺は街の人間に見られてしまった。

俺を完っ全に魔王軍の手先だと思い込んだ民衆。

誰かを悪だと決めつける思い込みは、どう説明したって理解してくれないんだ。

だからもう、俺はこのエルメスティア領にはいられない。


『それに、他の魔王軍を探し出さないとね。』

「わかってるよ。…それが俺の使命、だろ?」


次なる怪人と、魔王軍の情報を求めて。俺は旅に出ます…!


******************


まるで「今から出発します」みたいなこと言ってるけど、実際はもう街から離れている。

文明がさほど進化していない景色。

人が歩いて築いただけの街道を、俺は歩く。リトルは飛ぶ。


「さて、これからどこに行くべきだろうか…。」

『ここからだと…この街なんかどうかな。〈商人の地・カレティア領〉』

「商人の街…? そうか、まずは金を稼がないと。」

『ここならお金の種になる物も多いし、クエスト的なのを受けることもできるよ。』


金の問題は頭が痛くなるなぁ…。

日本でも金に苦労したっけ。安い牛丼やカップ麺には助けられた…。

クエストと言えば、スライムみたいな魔物と戦ったりするんだろうか。

先へ進めば進むほど、異世界らしくなってきたな…!



「――ちょっと待ったァァァァァ‼」

「…あ?」

『…おや?』


突然、後ろから響く声。聞き覚えのある、女の声だ…。

パッと振り返ってみれば、街道の先から走る人影。

あのピンクの髪は…⁉


「エリーゼ…⁉ お前こんなところで何してんだ…?」


見れば大荷物を背負って、ラフな上着に、太もも丸出しのエッチぃ短パン。

大して速くもないダッシュで、俺の元までやって来た。


「ハァ…ハァ…、お願い…! 私も連れて行って‼」

「ふぁ⁉ 急にどうしたよ、実家は?」

「抜け出してきました…!」


抜け出したって…、こいつは一応領主の娘だ。

それにここからの旅、どんな危険に突入するかわからない…!

強化人間との戦いに、戦えない奴を連れて行くわけには…、



「ヴェルディに裏切られた私だけど…、やっぱり私は冒険をしてみたい、たくさんの人と出会いたい、世界を見てみたい…!」

「し、しかしなぁ…。」

「私はもう、領主の箱入り娘じゃないんだから‼」


俺がエリーゼに手を焼いていると、リトルが肩を突いてきた。


『いいんじゃない?彼女の決意は本物らしいし。…それに、初めて君をヒーローと言ってくれた人だろ?』


そういうとリトルは、俺の背後から飛び出して驚くべき行動をとった。


『やあエリーゼ、初めまして。私はリトル。タツヤの相棒で、力の根源たるオオカミだよ!』


え…?いやいや、リトルは俺以外の人間には見えないはず…


「え、なにこの子可愛い…! タツヤの仲間…?」

「いや見えてんのかよ…⁉」

『前にも言ったじゃん。見せようと思えば見せられるって。』


ありゃ、既にイチャイチャし始めてる…。

リトルの毛並みをモフモフ、尻尾でぺちぺち。


『タツヤ、彼女と一緒に魔法を習得してみない? これから先、その馬鹿力だけじゃ大変だよぉ?』

「あ、私も魔法覚えてみたい! やりたいことの一つ。」


うーん。俺はこの世界の人間じゃないから、いろいろ不都合なことがあったりするのか。

だとしたら現地人の仲間がいたほうがいい…かも?

それにリトルの言う通り、こいつは俺をヒーローと呼んでくれた初めての人間…。

魔法だって覚えなきゃいけないし…。



「…仕方ない。エリーゼよ、ついてくるがいい。」

「――やったぁ! これからよろしく、二人とも!」

『よろしくねぇ。』


「ただし! 俺の戦いにとって邪魔だと思ったらすぐ見捨てるからな? どこかに売り飛ばして飯のタネにしてやる。」



という訳で、これから二人と一匹の旅になりそうです…。

ダークヒーロー、これからどうなるのか見当もつきません。

ひとまずは金を得るため、商人の街へ向かいます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ