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第97話 全員対魔王軍

 ―――俺がこの国の勇者。

 今日、ヘリルス王国で新たな勇者が誕生した。

 名はスメラギ・ジューヤ。

 見事、勇者候補だったフリューゲル・グローテルを倒して、銃夜が勇者としてこの国に君臨した。

 ストリートダンジョンに王様が空間転移魔法で迎えに来た。


「ほっほっほっ、スメラギ・ジューヤ殿そなたがヘリルスの勇者じゃ」


 王様はそう断言した。

 通信魔法がまだ接続されているのでその言葉はヘリルスの全国民に伝わっていた。


「ありがとうな」


 銃夜は一礼する。


「長年この世界は魔王軍からの蹂躙を受けてきた。今こそ魔王軍を討伐する勇者として名を馳せてくれ」


「もちろんだ。しかし―――」


 銃夜は深呼吸をする。


「俺だけが勇者ではない!」


 王様は少しびっくりした様子だ。


「今まで戦ってきて魔王軍を倒そうとみんな必死に頑張ってきた!みんな魔王軍への復讐を誓い、ここまで上がってきた!だから―――」


 再び、銃夜は深呼吸をする。


「みんなが勇者だ!俺のこのパーティーだけでなく、みんなだ!みんなで魔王軍をぶっ倒そう!」


 通信魔法でそれを見ていた人達が歓声を湧き上がらせる。

 拍手と喝采が辺りを包んだ。


「これは全員の物語だ!全員対魔王軍で戦争を開始する!」


 こうして、銃夜の演説は切り上げられた。

 その後、『ユキヒメと愉快な仲間達』は王室に呼ばれ、王様の前でひざまずいている。

 そして、王様がその口を開いた。


「勇者であるジューヤ殿が決めたことじゃ。口出しはしない。じゃが、全員とは?どういうこじゃ?」


 王様はその白く長く伸びたヒゲを触りながら言った。


「そうですね。全員というのはヘリルスはもちろんアインハルトや他の魔王軍の蹂躙を受けた国全員で戦うのです」


「なるほどの〜」


「そこで、他の国と同盟を結ぶため、エンゲル様には少しやってもらいたいことがあるのです」


 銃夜がそう言うと、横からフリーデンと完治したユキヒメが「おおいっ!!」などと言う。

 王様への無礼とでも思ったのだろう。

 しかし、王様は「よいよい」と笑いながら言ってくれたのでその場は収まった。


 一方その頃。

 ヌル・バタリアン達は着々とヘリルスへ向っていた。


『ねぇいつ着くんだよ』


 通話越しにバナンの声がした。

 とても飽き飽きしている様子だ。


『でも、バナンが来るのは意外だったわ〜』


 マディリンが言った。

 マディリンは基本誰とでも仲が良い。

 と同時にクラスのマドンナ的存在にある。


『そうかな〜、でもまぁ、家族を置いてきたのは嫌だったけどね……』


「そうだな。しかし、よくやった。これで奴らへ思う存分復讐ができる」


 ヌルのその言葉は少々狂気じみている。

 それには他の隊員もドン引きである。


『けれどリンジーの兄妹がヘリルスにいるってのは初耳でっせい』


 ガースが言った。


『そうそう、しかも兄は最強ときた』


 続けて、グイリオも。


『黙っててごめんね……』


 リンジーの悲しそうな声がその場を斬り裂いた。


『いやーいいんですけどねー?なんでかなーって』


『特に意味はないの。忌まわしきヘリルスから完全に解放される私自身への嘘だったりするし……』


 少しの沈黙が続く。


「ついたぞ」


 ヌルが話題を無理矢理遮る。

 そして、ヌル達ガンマ隊はとうとうヘリルスの門の前に到着した。



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