第96話 第7試合その➃
ルーナの剣術はまさにヘリルス王国初代剣聖そして、ルーナ達の実の母親、エリス・グローテルのものだった。
エリスが亡くなったのはルーナが産まれた後だった。
フリューゲルは過去にエリスが亡くなるまでの期間、直々に剣術を教わっていたのでルーナの太刀筋や行動振る舞いを見て、すぐにエリスの剣術であることを理解した。
現在の剣聖、フリューゲル・グローテルが唯一超えることのできなかった絶界の壁がルーナの剣術もとい、エリスの剣術なのだ。
「ルーナぁぁ!!」
フリューゲルは立ち上がり、それでも尚、ルーナと剣を交える。
しかし、フリューゲルはその剣術に圧倒される。
「なぜだ?」
フリューゲルが剣でルーナの攻撃を受け止めながら聞く、しかし、今のルーナには聞く能力や話す能力がない。
なぜなら、気絶してしまったからだ。
そして、現在の肉体の主導権はルーナではないのだ。
「なぜ、母上の、エリスの剣術なんだっ!!」
実際は、母親エリスが死亡し、守護霊としてルーナの体についたのだ。
そして、ルーナが気絶または、気を失った時、肉体の主導権はエリスに移る。
そして、とうとう、フリューゲルは剣では勝てないことを判断し、魔法を使うことにした。
「くっ……時間魔法、ラストゲームっ!!!」
――時間魔法ラストゲーム。
それは、一言で言うと全ての場合の時間軸が一点に交わることだ。
この世界にはいくつものありえたルートが存在する。
そのルートとは、時間軸ということ。
フリューゲルの『ラストゲーム』は全てのルートを実現する力を有する。
いわば、全ての可能性を一度に実現するというもの。
瞬間、フリューゲルの近くに真っ黒い銀河のような穴が空間に出現した。
その穴から全ての可能性であるフリューゲルが無数に出現する。
その無数に出現したフリューゲルは全てのありえた可能性を同時にこなす。
それを一つの時間軸で完結させてしまう。
「シャイナー戦で見せた最後の技っ!?」
銃夜はエターナルライフを構えるが無数のフリューゲルの手によって瞬殺だった。
その無数のフリューゲルはそれぞれ時間停止を行うし、時間逆行も、時間飛ばしだってなんでもしてくる。
まさにカオスな状況が続いた。
いくらルーナでもこの攻撃に耐えることができず、あっけなくやられてしまう。
そして、フリューゲルは『ラストゲーム』を解除した。
「ふっ、はっはっはっ、ジューヤ、ルーナ一時はどうなるかと思っていたが……私が勇者だっ!!」
フリューゲルはそう発言し、辺りを見渡す。
しかし、銃夜とルーナの体は見当たらなかった。
フリューゲルは一瞬、考える。
そして、ある結論にたどり着いた。
「ああ、そうか、もう早速空間転移してしまったか……」
しかし、そのフリューゲルの考えは間違っていた。
刹那、フリューゲルの体に無数の穴ができる。
「……っ!?」
(なんの音もしなかった……一体…どこから…?)
フリューゲルは辺りを再度見渡す。
そして、ストリートダンジョン内にあった教会の屋根の上に人影を見つけた。―――皇銃夜だ。
「ジューヤぁぁぁ!!」
「正解!」
教会の屋根の上で銃夜がルーナの体を抱えている姿があった。
「なぜ、生きている?」
「バカかお前は?もともとこの大会はアイテムありだぜ」
「アイ…テム…?どんな?」
「知りたいか?」
「ああ」
「アイリスが必死こいて作ってくれたアイテムだよ。そうだな〜俺もドデカイサーペント狩ったり色々貢献したし、少しは使う権利があるよな〜」
銃夜は自身のアイテムボックスからそのアイテムを取り出す。
透明の小瓶に入っている赤色の液体だ。
「回復ポーション?いや、普通なら緑色のはずだ…!!」
「御名答、このポーションは特殊で、飲めば一定時間魔法攻撃、物理攻撃、精神攻撃、ありとあらゆる攻撃を全て無効化できる最強のポーションなのだっ!!」
銃夜はフリューゲルの体を指さした。
「そして、フリューゲル、俺の時間停止でお前は既に負けてるぜ」
それは、銃夜の【弾速してレベル3】によるものだった。
銃夜は既にその弾丸を何発か撃っていたのだ。
「物理攻撃耐性とか書いてあったなお前のステータスに、しかし、止まった時の中ではそのスキルは通用しない」
「なん……だと……?」
瞬間、フリューゲルは一定ダメージに達し、例の部屋に強制転送された。
第8話で作ろうとしていたアイリスのポーションが実は完成してました。




