第95話 第7試合その➂
「これが、俺の時間停止。言うなれば、俺のフロクシ……フロクシー…うーんなんでもいいや!」
「ジューヤぁぁぁっ!!!」
「そーんなに眉間にしわ寄せて、もしかして、焦ってらっしゃいます?」
「時間魔法、フロクシノーシナイヒリピリフィケイションっ!!!!!!」
再び、フリューゲル以外の時間が止まる。
しかし、銃夜はこれを読んでいたため、【弾速強化レベル3】の弾丸を打つことに成功していた。
その弾丸はフリューゲルの腹に直撃する。
「ぐはっ…!!」
フリューゲルはこの攻撃が当たることを承知で時間停止を発動させた。
―――フリューゲルの時間停止には制限がある。
―――それは、歩数か停止できる時間か。
フリューゲルが持っている制限はその歩数にある。
時間停止中、最大で動ける歩数は約10歩だ。
スナイパーライフルでかなりの距離がある皇銃夜を狙いに行くのは容易ではない。
しかし、銃夜にも欠点がある。それは、一発でしか撃つことができないこと。
フリューゲルが時間停止を行う直前に引き金を引かなければならない。
よって、フリューゲルの時間停止中に引き金を引くことができないので、必然的に一発ずつでしか撃つことができないのだ。
フリューゲルは銃夜を倒すことができないと判断し、その刃をユキヒメに向けた。
「ふんんっ!!」
フリューゲルは大ぶりでユキヒメに攻撃を加える。
ユキヒメの手足を切断した。
(これでもう…魔法での応急処置ができないだろう…)
フリューゲルは腹に食らった弾丸を取り出す。
「時間魔法、リプロダクション」
再び、時間が正しい方向へと進む。
「えっ……」
瞬間、ユキヒメに激痛が走る。
手足の切断。そして、一定ダメージにより、即退場した。
「ユキヒメっ!!」
銃夜は一瞬、ユキヒメと目があった気がした。
そして、回復魔法師の所へ移動させられた。
「時間魔法、巻き戻し(リ・セット)」
フリューゲルは自身の体の傷を元の状態まで時間を巻き戻した。
それは、傷だけでなく、体力までもリセットされてしまった。
いわば最強の回復魔法だ。
瞬間、シュギンっ!!
フリューゲルの腕が切断された。
なんだと思い、フリューゲルは振り向く。
そこにいたのは先程、気絶したと思われているルーナだった。
フリューゲルは切断された左腕をかばいながら言う。
「まだ、生きていたのか。ルーナ」
フリューゲルは全く焦っているようには感じない。
「時間魔法、巻き戻し(リ・セット)」
切断された腕が治ってしまった。
しかし、ルーナは動じない。
なぜなら、今の彼女はルーナではないからだ。
―――無双状態。
瞬間、会場が歓声で湧き上がる。
それは、今までそれを疑っていたフリーデンさえも。
ルーナの雰囲気が明らかに今までとは別の何かを感じる。
フリューゲルはこの体験が初めてだ。
(なんだ……?それに、おかしいこの私の防具を貫通し、腕を切断するとは…?)
ルーナはフリューゲルに向かって剣を斬り込む。
その剣速は常軌を逸していた。
フリューゲルは思わずその剣速に対応する。
ジャギンジャギンと金属と金属がすり減る音が銃夜の耳に聞こえた。
(なんなんだ…?こいつの剣速は…?)
フリューゲルは急なルーナの成長に驚く。
(成長……?なのか…?)
そして、ルーナの剣速はフリューゲルの剣速を上回った。
ルーナの剣はフリューゲルの腹を斬り裂いた。
しかし、浅い。
フリューゲルはその場に尻をついて斬られた箇所を手で抑えている。
ルーナはまるで、チェックメイトと言わんばかりに剣先をフリューゲルの頭に向ける。
そして、フリューゲルは思い出す。
ルーナのこの剣術を。
―――母上。




