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第88話 魔王軍討伐作戦その⑤

『ヌル!加勢しようか?』


 バナンが言った。

 それに対してヌルは、


「いや、平気だ。こいつは、こいつだけは、俺一人で殺す。殺さなければならない。いいか?バナンだけじゃなくて、みんなに言っているんだ。手を出すなよっ?」


『そっか、無理すんなよ』


「ああ、お前達は他の幹部を倒しに行け」


 リンジーは、思う。

「いつものヌルじゃない」と。


『だめだよ!私は残る。残ってヌルと戦う!』


 その音声が通話を通してヌルの耳に入る。


「ダメだ。なら、リンジー、お前からぶち殺すぞっ!!」


 その思いがけないヌルのセリフでガンマ隊は騒然とする。

 ここで、やはり、バナンが仲裁に入った。


「おい、リンジー。あまり、じゃまをしないほうがいいぞ」


「なんで…?なんで…?みんなはヌルを一人にしたがるの?」


 バナンは知っている。

 妹の件を。

 その仇をいまここで打とうとしていることを。

 バナンは、歯を食いしばり、震える声でリンジーに言い聞かせた。


「俺だって…俺だって行かせたくないよっ!!でも、これが隻眼のデッドライナーなんだっ!!今、果たさないでいつ果たすんだよ!俺は知っている。あのアルカディオンには妹がいるんだ!!」


 リンジーは何かを察する。


『どういうこと?バナン!どういうことなのっ?』


「アルカディオンの素材は妹を食ったワイバーンって俺、少佐から聞かされたんだ。だから、だから、兄妹での思いを晴らさせてあげようよっ!!それに、俺は知っている。ヌルはあんな骸骨に負けないっ!!」


 しかし、リンジーは通話越しに『でも…でも…』と繰り返していた。


「お前は!!リンジー!お前は、ヌルが嫌いなのか?」


『まさか…そんなことは……』


「だったら少しは信じてやれよ!!仲間だろっ!!」


 このバナンの言葉はリンジーの心を突き刺した。

 リンジーはまるで、呪いが解けたかのようにはっとする。


 ポロポロとリンジーの瞳から数滴の涙がこぼれ落ちた。


「あれ?なんで?なんの涙なの?」


 リンジーはその分けのわからない涙を拭う。


「何でかわからないけどこの涙はきっと自分に向けられたものだと思う」


 そして、

「私は…私はヌルを信じる!!」


 どこかで引っかかっていた鎖が今外れた気がした。

 それは、『信頼』という鍵によって解除された。


『ヌル!やばくなったら言えよ!』


 リンジーは涙の中の笑顔でヌルに呼びかけた。


「ああ、任せろ。この骸骨を壊したらすぐに向かう」


『やっぱー最強は言葉の説得力が違うねー』


 グイリオが手を後ろに組んで言った。


『大尉!じゃあ俺達は先行きまっせー!!』


 ガースがヌルを横切りながら言う。


「ああ。瞬殺してやる。血祭りいや、骨祭りだ!!」




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