第86話 魔王軍討伐作戦その③
「押されてますね」
ダースが当然というように言う。
「ええ、ここまでは計画の内よ」
それに対し、カーナは答えた。
「そろそろやっちゃってよー。早く帰りたいわー」
パンドラは相変わらず眠そうだ。
「御意。では、参る」
ダースは真っ赤なマントをひらりとなびかせ、漆黒の馬から飛び降りた。
ひらりと浮かび上がったマントの裏にはギラギラとたくさんの宝石がついていた。
そして、ダースは右手に先端に赤い宝石がついている杖を構え、何かの呪文を唱え始めた。
その呪文の内容は理解できない。
明らかに現代語ではないからだ。
「―――殺」
ダースが呪文を唱え終えた瞬間、目の前にズラリと並ぶアンデッドの行列が崩壊した。
スケルトン全種、暗黒騎士、マミー、ローパー、レイス、ゾンビが刹那にして殺害された。
そして、それらの死体が一斉に浮かび、ダースに向かっていった。
「はっはっはっこれだよこれっ!漲ってくるぅぅぅ!!!」
ダースのプレッシャーがより一層強化される。
ダースからは今までとは違う感じがする。
「これが、私のスキルっ【生贄】だっ!!」
ダースのスキル【生贄】は、生物を殺害すればするほどステータスが強化されて行くというものだ。
生贄が強ければ強いほど、多ければ多いほどステータスの数値が上がっていく。
現在のダースのステータスは、
【攻撃力】 5万
【防御力】 3万
【魔力】 9万
【素早さ】 1万
【運】 2万
はっきりいって化け物だ。
ただでさえ化け物なのに【生贄】でさらに上昇するステータス。
それは、文字通り最強。
語彙力の欠如なのは重々承知だが、それ以外に表す言葉が見当たらない。
しかも、これに匹敵するのが残り2人いる。
ヌルは、その殺気を感じ取った。
『なんだ!?敵の数が減っていくぞっ!』
グイリオ・ターニが警戒の合図を出す。
そして、ダースによって回収されたアンデッドは約1000体。
敵の数が三分の一程度まで減少した。
その数が吉と出るか凶とでるか。
その時、ガースがとんでもない光景を発見する。
その光景を見てガースは青ざめた。
『た、大尉っ!!』
「なんだ?」
ヌルは目の前にいる敵にブレードで斬撃を加えながら言った。
そして、ガースはゆっくりと口を開く。
『衝撃だっ!!』
「だからどうした?」
『ほ、報告、マレナの死亡を確認』
「!?」
その報告はヌルだけでなく、ガンマ隊全隊に伝わった。
『う、嘘っマレナが!?』
マディリンが言った。
『ガース!何かの間違いじゃないか?』
バナンが叫んだ。
『いや、間違いねぇ、マレナの死体を確認した。今、画像を共有するっ!!』
ガースからガンマ隊、シーラ帝国司令室にマレナの死体の画像が共有された。
ヌルは、アルカディオンに共有されたウィンドウに画像が映される。
その画像は、マレナのアルカディオンの横転と、それから身を乗り出しているマレナの死体が映されていた。
そして、その画像の奥には、真っ赤なマントを羽織ったダースの姿があった。
マレナの死体のすぐそばで、ダースはニヤリと不気味な笑みを浮かべていた。




