第80話 新機種
ヌルはサドラー少佐に「見せたいものがある」と呼ばれ、アルカディオンが収納されている倉庫に向かった。
倉庫はかなり広い、それも縦に。
なにせ、アルカディオンは全長9m、全高2.5mある大きな機体だからだ。
倉庫の中にはアルカディオンの性能チェックやメンテナンスを行っている整備士がたくさんいた。
その中に見慣れた人が一人。
「サドラー少佐」
「ああ、ヌル。いいところに来たわね」
サドラー少佐はニヤリと笑う。
「それで、見せたいものって?」
「ふっふっふ。こっちにあるわついてきなさい」
サドラー少佐はヌルについてくるよう促す。
そして、ヌルは倉庫の外に出た。
「外ですか?」
「ええ、その見せたいものってのが少々大きくてね。外にあるのよ」
「はぁ」
少し歩いて広大な広々とした地形に出た。
その大地にポツンと黒い布で覆われている何かでかい物が置かれていた。
おそらく、サドラー少佐が見せたい物ってのはこれのことだろう。
「それで、なんなんです?これ」
その黒い布で覆われている物を指さして、言った。
「とうとう完成したのよ。あなたが2年前に討伐したワイバーンをフル活用して作ったの。とくとご覧あれ!」
その台詞と同時にサドラー少佐は黒い布を思いっきり取った。
それは、サソリの形をしていた。
しかし、金属特有の光沢を帯びていてピカピカと光を反射している。
全長18m全高3mとやはりバカ高い。
これでは倉庫に入ることはないだろう。
「どうだ?すごいだろ?」
「ええ」
サドラーはそのサソリ型のアルカディオンに手をつきながら、
「こいつはお前に任せる」
「え、俺ですか?」
「ああ、当然だ。次の魔王軍討伐に役立て給え」
「わかりました。それで、性能は?」
「相変わらずリアクションが薄いな。まぁいいや。性能について説明してやる」
サドラー少佐から聞いた性能はこうだ。
性能その①鋼鉄のボディー。
ワイバーンの鱗から作られた頑丈な素材で、全属性魔法への耐性がある。
性能その➁猛毒。
サソリ型アルカディオンの尻尾には猛毒がある。
この部分はサソリと同じだ。
ワイバーンの爪にある猛毒を使って作ったのだ。
性能その③安定した機動力。
サソリを模した機体なので、8本の足が生えている。
その足で小回りを効かせ回転させたり、ジャンプしたりと自由自在だ。
性能その④ブレード。
サソリの前足二本がブレードとなっていて、相手に斬撃を与えることが可能となっている。
「以上、簡単な性能説明だ。わかったかな?」
「はい」
「じゃ、私はやることがあるのでここでおさらばさせてもらうよ」
そう言って、サドラー少佐はアルカディオンを整備している倉庫に戻ったのだった。
そして、外に取り残されたヌルは一人、サソリ型アルカディオンにそっと手を触れさせる。
「………」
少しの間顔をうつむかせ何かを考え込む。
次の瞬間、ヌルは機体をドンッと思いっきり叩き、歯を食いしばる。
ワイバーンの素材を使ったこの機体。
しかし、このワイバーンはヌルの妹と左眼を殺したのだ―――
複雑な心境の中、ヌルは2年前を思い出す。




