第7話 デカ犬と少女
一度魔法を諦め、ヘリルス王国に向け少し道を歩くと向こうからなにやら騒がしい様子がした。
この地図によるとヘリルス王国はまだまだのはずなんだが。
また、何か厄介事か?と銃夜は思う。
「?」
と、ルーナ。
どうやら銃夜は無意識に嫌な顔をしていたらしい。その表情がルーナの瞳に映ったのだ。
ドドドドド
何かが走っている音がする。
もう、厄介事が確定したようなものだ。
銃夜は「はぁ〜しょうがねぇ助けてやっか〜」というテンションでスキルを発動させる。
スキル【感覚探知】
銃夜は感覚探知でここら一帯の動いているもの、つまり生態反応を調べた。
シルエットとして、隣にルーナ。そして、騒がしい方に注意を向けると、モンスターだろうか。何かを追いかけている。もう少し感覚探知に集中すると追いかけられているのは人間だということがわかった。
ルーナにこの事を言っている暇がないので銃夜は一人走り出しルーナを置いていく。
「えええええっ!」というようなルーナの声が聞こえた気がするが、そんなのはお構いなしの銃夜であった。
弾丸の如く電光石火で草原を走り抜けていく。
例の場所につくとそこは、地形的に銃夜がいる場所より低所に位置していたので降りるのに少し時間がかかってしまう。
つまり、銃夜は今崖の上にいる。
追いかけているのは女の子だった。一人の少女だ。
少女は泣き叫びながら必死に走っている。
「ぎぃやあぁぁぁぁぁーー!!!!
やめてぇー、こっち来ないでぇーー!!
誰か助けてぇぇぇーー!!!!」
追いかけているモンスターは2つの顔を持っている大きな犬の様な化け物オルトロスだ。
オルトロスは涎をたらしながら少女を追いかけており、ベロを出しハフハフしている。
目が尋常ではないぐらいキマっている。
きっと少女を食うつもりなのだろう。
(やばいっ!追いつかれるっ!)
銃夜は下に降りることを諦め、すぐさま銃を取り出す。銃の形状はスナイパーライフルだ。
セミオート式である。二脚架を丘の上に立てかけ、引き金をがっしりもち、スコープを覗く。
照準をオルトロスの脳天に向け、弾丸を発射する。
発射された弾丸はとんでもない速度でオルトロスの2つの頭を1つの弾丸で一気に貫いた。
銃夜は汗を拭う。
「ふぅーあぶないあぶない」
異世界に来てからずっと冷や汗が止まらない銃夜だった。
見事にヘッドショットを決め、安堵していると、後方からルーナが息を切らして「まっへふははい」と走ってきた。
「おそいぞー!もう終わっちゃったからぁー!」
「えー!?何があったんですかー?」
銃夜はルーナに事情を説明する。
すると、ルーナが「もぉー私のこと嫌になったかと思いましたよー!事情は初めに説明してくださいね!」
と、怒られた。メンヘラかよ。
そして、銃夜は崖を滑り降り、少女の所へ向かう。
なお、ルーナは怖くて崖から降りられない模様。
それを放置する銃夜。
「大丈夫か?」
銃夜は少女に手を差し出す。
その少女は林檎のような真っ赤で美しい赤髪で、その髪は日本にあったツインテールのように頭の後ろで髪を二つに結んでいる。
背中には大きなリュックを背負っている。
少女は俺よりもルーナよりもずっとずっと小さく小柄だ。
身長は150cmといったとこだろうか。
少女は銃夜の手を取り、起き上がった。
少女は目をパッチリと見開いて、
「ありがとう助かったよ少年」
と、思ったよりも低い声でびっくりした。
さっきまで泣き叫んでいた少女とはまるで、別人のように落ち着いている。
(ん?少年?)
一瞬、違和感を覚えた。
「君ー名前は?お母さんとお父さんはどうしたの?」
と、いつの間にか崖の上から降りてきていたルーナが遊園地で迷子になっている子供に声をかけるように聞いた。
「失敬なっ!小娘!私はこれでも成人しているのだよ」
その少女(?)はルーナを怒鳴りつける。
ルーナは何か意表を突かれたように固まってしまった。
「え?もう一度聞いていいかな?お母さんとお父さんはどうしたの?」
現実を受け止めてめられていないように再度その少女(?)に尋ねる。
「何度も言わすなっ!小娘っ!わ・た・し・は成・人・し・て・い・る・の・だっ!
お前より年上だぞっ!人生の先輩だぞっ!」
再び硬直するルーナ。
そして、ようやく現実に帰したのかゆっくり言葉を発し始める。
頭を抱えながら、
「なっ!う、嘘だ。私より年上…な、の、にロ、リだ、と」
と、ルーナは何故か落ち込んでいる様子。
その通りだ。彼女は背は低いし(150cmぐらい)、胸なんてぺったんこである。おまけにそのツインテールときた当然童顔だ。
(合法ロリか…?)
一瞬血迷った銃夜だったが、運良く特殊性癖が覚醒せずに済んだ。
元の質問から遠ざかっている気がするので話のレールを戻すことにする。
「俺は皇 銃夜。君の名前は?」
「私はアイリスだっ!よろぴくよ。少年」
アイリスは左手を腰に当てて右手でピースサインを作った。
「アイリスはこんなところで何をしていたんだ?」
「そうだなーではまず、私の職業の説明をしたほうが良さそうだな。私の職は薬師なのだ」
「薬師?」
「主にポーションなどの回復アイテムを作って商人達に売っている。そこで、新たな回復ポーションを作るためオルトロスの牙が必要だったのだ」
「だからあんな目に……」
「だが、オルトロスの牙はこうして無事にゲットできた。」
アイリスは俺が倒したオルトロスの所へ行き、ドロップした牙を手に持つ。
「それで?次は何が必要なんだ?」
「?」
銃夜の問いかけにアイリスはポカンとしていた。
「だーかーらーまだ必要な素材があったら手伝ってやるってーのーっ完成させてやるよお前の望みを。」
アイリスの表情が明るくなった。
アイリスは指で鼻をすすりながら、
「ありがとう。」と、感謝の言葉を述べる。
「ではお言葉に甘えて」と、次の要件を話し始める。
「次に私が欲しいのはサーペントの血液だ。
サーペントの血液にはあらゆる毒に対する免疫がある。それが欲しいっ!安心してくれお礼はしっかりする」
「ふんっ」と鼻で笑う銃夜。
続けて、
「そのサーペントの生息ってのはもうわかっているのか?」
「ああ、問題ない。私について来いっ」
「念のため仲間になるんだ。鑑定してもいいか?」
「ああっ!もちろんだとも。それにしても、鑑定のスキルを持った人間は珍しいな」
【名前】 アイリス
【年齢】 23
【種族】 人間
【性別】 女
【レベル】 25
【職業】 商人
【装備】 なし
【称号】 それなりの薬師
【攻撃力】 26
【防御力】 58
【魔力】 100
【スキル】 俊足
なるほどスキルのお陰で逃げれていたのか。
追いつかれそうだったけど。
(って…やっぱ俺より年上じゃねぇか……)
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