第73話 第6試合その④
「さっき僕に動機を聞いていたな?」
シャイナーはフリューゲルを下から覗き込みながら言う。
「僕の動機は、父だっ!!」
「父?」
フリューゲルは自身と同じ境遇であることを一瞬、考えた。
「僕の父は魔族にさらわれた。何故かはわからない。が、父が失踪したあの日、父の部屋には多大なる魔力が観測された。僕はその謎を解かなくてはならない」
シャイナーの目はまっすぐを見ていた。
「よってお前を倒すっ!!」
シャイナーは我を忘れ、鬼の形相でフリューゲルに斬りかかる。
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
しかし、シャイナーは意外にも冷静でいたらしく、斬りかかる直前で、
「光魔法、閃光!!!」
シャイナーから光が発生する。
その光はフリューゲルの視界を破壊した。
それでも反射的にフリューゲルは手で視界を遮る光を排除しようとした。
(くっ…!これは……!!目眩ましっ!!こいつ、意外にも冷静でいるっ!!)
さらに、シャイナーはそのままトゥインクソードで光を遮るフリューゲルの腕にダメージを与えた。
そして、シャイナーのスキル黄金化が発動する。
斬られたフリューゲルの腕は金メッキなどではなく正真正銘ゴールドになった。
たしかにリッチで高価なのだが、今のフリューゲルにとってはただの足かせにしかならない。
その重量は10キロを超えていた。
つまり、現在のフリューゲルの腕には1〜2歳の子供が乗っているというふうに考えられる。
いや、あくまでも10キロを超えているのでそれ以上なのかもしれない。
とにかくフリューゲルにとって本来喉から手が出るほど欲しい金は戦場ではゴミと化してしまうのだ。
(おも……!!)
フリューゲルはその重さにふらついてしまう。
黄金化してしまった腕は地面に落下していく。
そして、シャイナーは自身のトゥインクソードをフリューゲルの顔面の前に突きつける。
「モルゲンレーテが時間停止とか言うので少し戸惑ってしまったが、案外弱いな。それでヘリルスの勇者候補か?」
フリューゲルは大きくため息をつく。
「はぁ~」
「なんだ?」
「弱い犬ほどよく吠える」
たった一言そう告げて、
「時間魔法、フロクシノーシナイヒリピリフィケイション」
刹那、再び全ての運動エネルギーがゼロになる。
シャイナーはその驚いた間抜け面のまま停止してしまった。
全ての時間が止まるので当然、フリューゲルにかかっているスキル黄金化の効果は無効化された。
フリューゲルは軽々しくひょいと立ち上がる。
そして、モルゲンレーテ同様、シャイナーにも斜めの斬撃を入れた。
「時間魔法、リプロダクション」
そして、フリューゲルは自身の時間停止を解除する。
瞬間、先程まで有利な状況が一変して、真逆へ。
シャイナーに斜めの斬撃が入り、血が噴水のように吹き出る。
「ぐはっ!!」
それでも、シャイナーのスキル幸運は発動する。
傷自体はあくまでも時間停止後につけられたとされ、しっかり幸運のスキルは発動していた。
発動内容は、フリューゲルの斬撃の浅さだ。
盛大に血が吹きでたと言っても幸運である程度無効化され、傷が浅くなっていたのだ。
フリューゲルはそれに驚愕する。
「貴様、なぜ、立っていられる?」
「時間停止か?だが、どうやら、僕の日頃の行いがよかったからだろうか?」
そして、何を思ったのかシャイナーは自身の傷を気にしながらは180度方向を変え、そのまま森の中を走っていってしまった。




