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第72話 第6試合その③

「む、とまれっ……!!」


 シャイナーは身の危険をモルゲンレーテに知らせた。

 そして、モルゲンレーテは若干舌打ちをしながらその命令に応じる。


 すると、木の裏から一人の男が出てきた。

 その男は白髪ロン毛で圧倒的オーラを放っている。

 その腰に装備している剣はまさに彼に合う器を持っている。


「おいおい、いきなりラスボスとエンカウントかよっ!!」


 フリューゲルは木の裏から完全に姿を出し、シャイナー達に問いかける。


「君達は、なんのために魔王を討伐する?」


「なんだよ?僕達は友達か?それ言ったら勝たせてもらったりして……?」


「いいや、ただの好奇心だ。それに、勝つのは私だ」


「おい、シャイナー、何かやばいぞ」


 モルゲンレーテは何かを察する。


「私の動機は母の仇討ちだ。かつてこのヘリルスを救ったとされる剣聖、アドルフィーナ・グローテルなっ!!!」


 フリューゲルは剣を持ってシャイナー達に斬りかかる。


「うわっ……!!」


 かろうじて避けることができたシャイナーだが、バランスを崩し、そのまま地面に寝転ぶ。


 そして、フリューゲルは寝転んだシャイナーの顔の前に剣を向ける。


「次で、チェックメイトと行こうか」


「おい、私を忘れるなよっ!!」


 モルゲンレーテは自身の存在を示すように、魔法を使う。


「土魔法、土球ソイルボールっ!!」


 モルゲンレーテは手のひらから土でできた球を飛ばした。


「土遊びか。少し付き合ってやるよ。だが少しだ。いや、時間的に表現するとマイナスと言ったらいいか?」


「……!?モルゲンレーテっ!!」


 シャイナーが何かを警告しようとモルゲンレーテの名前を叫ぶ。


「遅い。時間魔法、フロクシノーシナイヒリピリフィケイションっ!!!」


 フリューゲルがそう言い放った瞬間、フリューゲル以外の時間が停止した。

 その停止した時間の中では、全ての運動が拒絶される。

 ただ一人を除いて。


 フリューゲルは止まった時の中をゆっくり歩いた。

 その足は止まった時の中でも確実にモルゲンレーテに近づいていた。


「これが、時間魔法だ」


 フリューゲルは一人、そう呟き、モルゲンレーテの体に斜めの斬撃を入れた。

 しかし、停止した時間の中では血は吹き出ない。


「時間魔法、リプロダクション。これより、時間は正しい方向へと進む」


 先程までピタリと何も動かない世界から一変して、全ての運動能力が許可された世界になった。

 その運動はこの世の全ての物に無理矢理与えられる。


 当然、フリューゲルが傷つけたモルゲンレーテも。


 刹那、モルゲンレーテの体から、突然、血が吹き出した。


「!?」


(どうなっていやがる……!!)


 モルゲンレーテはリタイアする瞬間、自身のスキルである錬合れんあいカリキュレーションをフル稼働させた。


(考えろ。あと数秒後に私は強制転送される。その前に何が起こったのかをシャイナーに伝えるのだ。それが、私の最期にして最大の役目なのだ。フリューゲルとかいういけ好かんやつを倒すために……!!)


 モルゲンレーテはさらに考える。


(さっき奴はシャイナーの目の前にいた。だが、気づくと私の体は斬撃を受けていた。―――だめだ。どう計算しても説明がつかないっ!!)


 そして、モルゲンレーテはある結論にたどり着いた。


(説明がつかない……!!どんなことをしても説明がつかない。そうか、説明がつかないということが解なのだ。つまり―――)


 モルゲンレーテはリタイアする直前、シャイナーにたどり着いた結論を伝える。それは、モルゲンレーテが今までの人生で出したことのないような声量だった。


「おいっ!金髪っ!!解は時間停止だっ!!!」


 シャイナーは心の中で全てが繋がり、「はっ!」とした。


「オーケー。電卓、よくやった。落ちていい」


 モルゲンレーテはリタイアする瞬間、「くそがっ!」とシャイナーに言い放った。


「すごいな。たったの一回でバレてしまうとは。おたくの電卓君は頭の回転が早いんだな。うちのゲミュートとは大違いだ。全く」


「じゃあ、そんな優秀な電卓君が残した最後の遺産を僕は存分に活用してやるっ!!来いっ!フリューゲルっ!!」


 シャイナーは起き上がり、腰にあった剣を抜き、フリューゲルに向けた。


「ほう、一人で私に立ち向うと?面白い。やってみろぉぉ!!!」




モルゲンレーテは計算ができても魔法は弱いのです。

それと、フリューゲルとルーナの苗字はグローテルです。

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