第71話 第6試合その➁
そして、第6試合が開始した。
森の中でフリューゲル達の動向が伺いにくい。
シャイナー、モルゲンレーテはフリューゲル達に気づかれぬよう、木々を盾にして移動することにした。
「ちっ、全く見つからないのだよ」
モルゲンレーテがそう言葉をこぼす。
シャイナーはこの言葉に構わず、どんどん先へ進む。
一方、シエルとラーシェはというと、そこら中に、魔術を施している。
地面や木々に魔法陣を描いて魔術結界を作っているのだ。
これは、全てシエルの指示だ。
シエルの予知能力はかなり信頼されているらしい。
「―――こんなもんでいいでしょう」
数カ所に魔法陣を書き終えてシエルはそう言った。
「シエル、次はどうする?」
「うーん」
シエルは考える。
「ラーシェ、少し右。3cmほど右にずれてください」
ラーシェはシエルの言う通りにする。
「こう?」
「そうです。そして、2秒後に攻撃が来るので待機を」
「え?」
シエルとラーシェの真横を矢が通過する。
シエルの言うように3cm右にずれていなかったら死んでいた。
その矢はラーシェの目の前にある木にぶち当たり落ち着いた。
「おやぁ?外したかい?」
矢が飛んできた方向からサハリンがのこのこやってきた。
やがて、ラーシェを通り過ぎ、矢を回収する。
「この矢、全ての状態異常をきたす特別な矢なの。だから、一撃で仕留めようと奇襲を狙ったのに、私の読みが外れたのか?」
「ラーシェ、今度は左だ。左に5cmずれください」
ひょいとラーシェは言われた通りに移動する。
すると、再び、ラーシェの真横をレッドゾーンが通過する。
「おや、私も外しましたか?」
その通過したレッドゾーンの正体はゲミュートの千紫万紅の斬撃の残像だった。
「くっ……次から次へと」
ラーシェが感想を述べている暇もなく、今度はリヒトが大振りで襲ってくる。
しかし、その向けられた矛先はシエル自身だったので、予知能力で軽々避ける。
「俺も避けられた。奇っ怪な術を使うのだな」
そして、シエルとラーシェの前にゲミュート、サハリン、リヒトが立ちはだかる。
「もう、バトルと行くんですか?それに、いいんですか?フリューゲルを一人にしても、うちのリーダーは強いですよ」
シエルが言った。
それに対してゲミュートは丁重に答える。
「そうですね。フリューゲル様ならばすぐ終わるでしょう。それに、フリューゲル様の前では全てのスキルは無に帰します。それでは、初めから全力でいかせていただきますっ!!」
ゲミュートは抜刀の構えに入る。
そして、サハリンは弓を引き、リヒトは剣を構えた。
「ラーシェ、先程施した魔術で戦ってもらいます。魔術を当てるタイミングやどの魔術を使うかはこちらで指示します」
「シエル、そのー大丈夫なのか?」
「ええ、この眼はしっかり見えています。ご安心を」
シエルは翠色の眼を輝かせる。
そして、とうとうゲミュートは抜刀する。
「ラーシェ、地面にある魔術の展開をっ!!」
「千紫万紅っ!!!」
ゲミュートは超速でシエル達に襲いかかる。
そして、シエルとラーシェの真下にあった魔法陣が白く光り出し、シエルとラーシェの体は宙に浮き始める。
空中に浮いたままラーシェがさらに詠唱を行う。
その詠唱の内容は明らかに現代語ではなく、シエルやゲミュート達には理解できなかった。
「―――加速」
そう詠唱を終えた後、シエルとラーシェの体は空中で加速した。
「くっ……逃げられましたか……」
「いや……逃さない……!!」
サハリンが弓を3本シエル達に向かって飛ばす。
その3本の弓の種類は、毒矢、麻痺矢、火矢だ。
やはり、状態異常がメインらしい。
しかし、シエルはそれを未来予知で読んでいた。
「ラーシェ、次はあの木の魔術を」
「ああ」
サハリンの近くにあった木が緑色に光りだす。
木は触手のようにツタを自由自在にしなった。
そのツタの触手はあっという間にサハリンを捕縛する。
「ちっ……」
「あんまり勘違いしないでください。僕達は逃げようなんて思ってませんよ。最初からあなた達を倒す方向で動いています」
空中でシエルがゲミュート達にそう言った。
「ガキがぁ……!!」
ゲミュートは怒りを露わにして言った。




