第67話 第5試合その③
「ボスっ!」
そう叫んだのは、ドンナーだ。
ドンナーは現在、ユキヒメと交戦中だ。
ユキヒメは氷剣を使ってドンナーと戦っている。
銃夜はシックザールを落としてすぐ、後で乱戦をしているフリーデン、ユキヒメ、ルーナ、ドンナー、アサシンの方を見る。
しかし、
「お、おかしい。1、2、3、4……一人足りないっ」
銃夜はその乱戦の様子を指で一人ずつ確認する。
すると、いるはずのアサシンの姿が見えないことに気づいた。
「おい!みんな!一人足りないぞっ!!」
銃夜はみんなに知らせる。
「へっへっへ。バレたか。だが、もう遅いっ!」
アサシンは急に姿を現す。
現れた先はルーナの真後ろだった。
「はっ!ルーナっ!!」
銃夜は見えた瞬間、声を大きくし、知らせたが遅かったらしく、ルーナがその存在に気づいた瞬間ナイフのような小さな短剣でルーナの背中をグサッと刺した。
「ぐはっ……!!」
後から串刺しにされたルーナは天井の方を見て口から血を吐いた。
『ルーナ。一定ダメージにより、リタイア』
機械的音声がルーナの脱落を知らせる。
そして、部屋に強制的にワープさせられた。
さらに、アサシンは再び姿を消した。
「どこだ?どこへ行った?光学系のスキルか?透明人間すぎてわかんねぇしかもすごい速度で移動している気がする」
乱戦をしていたユキヒメ、フリーデン、ドンナーは未だいがみ合っている。
すると、ここで、ドンナーが後退する。
「はぁはぁはぁ、お前ら強いな」
ドンナーが声を荒げて言った。
「ちっ、仕留めそこなんした」
「そろそろ終わりにしようぜ。光魔法、フラッシュ!!」
刹那、ドンナーを中心にダンジョンが眩しいほどの光を放った。
「うっ」
銃夜、ユキヒメ、フリーデンはそのあまりの輝きに目を背ける。
そして、銃夜は何かを察する。
「感覚探知」
サーモグラフィーのような視界が展開された。
(やはり、俺達の後に人の気配を感じる。これは、おそらくルーナを貫いた短剣の女……!!)
銃夜はエターナルライフルを装備し、気配を感じた方に注意を向け、発射させる。
スキル、絶対命中により確実に命中する。
それは、アサシンの右腕を貫いた。
「ちっ」
舌打ちをしながら、右腕を庇う。
そして、透明化は解け、後退したドンナーの後へと身を隠した。
そして、持っていた双剣の片方をその場に捨てる。
「右腕が使えない以上持っていてはお荷物だ」
アサシンは再び、姿を透明化させる。
そして、そのままプリズンダンジョン内にある全ての牢屋の鍵をぶっ壊していった。
それも物凄いスピードで。
そして、解き放たれる。数多のモンスターが。
「厄介なことしやがって。フリーデン、死の香りだ。広範囲攻撃でモンスターを一掃してくれ!」
「いや、です」
フリーデンはそう呟いた。
銃夜はフリーデンがそう言ったことに驚き、一瞬、何を言っているのかわからなかった。
「え?」
「だから、嫌です」
「なん、なんでだよ?フリーデンっ!」
銃夜はフリーデンに目を合わせ、訴えかける。
しかし、フリーデンは嫌の一点張り。
「だって、ジューヤさん言ったじゃないですか。信頼しろと。ですが、ルーナさん瞬殺されてしまったじゃないですかっ!!人の信用や信頼は簡単に壊れてしまうんです」
フリーデンのそのA型らしい真面目さやきっちり感が裏目にでたらしい。
しかも、最悪のタイミングで。
圧倒的有利な状況でのパーティー内の破綻。それは、フリーデンの精神的戦闘不能を意味していた。
銃夜は考える。
敵味方無差別に攻撃をしている数々のモンスターが襲ってくる中。
フリーデンの説得を。
幸い、ユキヒメの戦闘は可能のようなので、時間稼ぎをしてもらうことにした。
「ユキヒメ、頼めるか?」
「わかりんした」
ユキヒメが氷魔法で襲ってくるモンスターの足止めをしている。
モンスターは強い者から弱い者まで。
最弱でゴブリン、最強でキメラ。
さらに、ゴールドイクリプスのメンバー。
それらを一人で相手するのだから、あまり時間は稼げないことは重々承知だ。
そして、戦意喪失、暗雲低迷、疑心暗鬼なフリーデンの説得を試みる。
「頼む。今一度俺とルーナを信じてくれ」
「嫌です」
フリーデンは断固拒否な模様。
その間にもユキヒメはしっかり氷壁を作り2人の安全領域を守っている。
「実はさ。フリーデン、ルーナの覚醒には、ある工程が必要なんだよ」
「ある工程?」
「ああ、しかし、俺はその工程を無理矢理やらすのは気が引けるんだ。過去にルーナとアイリスと旅をしたことがあってね、俺はやむを得ない状況でルーナの覚醒を無理矢理行ってしまった。それ以来、ルーナの覚醒には俺は一切関与しない。そう誓ったんだ」
「だからなんですか?勝てなきゃ意味無いじゃないですか」
「違う。俺達の目的はフリューゲルに一発でかいのをお見舞いしてやること。その目標は俺の意思であり、ルーナの願いだ。そして、その目標にはルーナの覚醒をしてはいけない。俺が考えるにあの覚醒状態はルーナ本人じゃない。おそらく、ルーナの意識が無くなる代わりに何かが乗り込んでいる」
「………」
「フリーデン。俺達の目標は魔王ではない。あくまで、フリューゲル。協力してくれるのは今回だけでいい。フリューゲルを倒したら好きにしても構わない。だから、頼む、今一度、俺を信じてくれ」
フリーデンは大きなため息をつく。
「はぁ~」
そして、フリーデンの表情から曇りが消えた気がした。
「わかりました。わかりましたよ。ジューヤさん。あと、今回だけでなく、フリューゲルを倒してもついていきますからね。それが私の勝手です」
フリーデンは銃夜に目を合わせながら言った。
「おうっ!」
銃夜はそれを笑顔で返す。
「そ、そろそろやばいでありんす」
ユキヒメはかなりきているらしい。
「ああ、説得は終了だ。ユキヒメ、聞いていたな。お前も、今回が終われば好きにしろ」
「わかりんしたっ!そ、それより―――」
ユキヒメの氷壁がキメラによって突破された。
すると、フリーデンは魔法を決める。
「防御魔法、最強の防御結界っ!!!!」
フリーデンは護神の龍杖でその場を守って見せた。




