第64話 中二病の権化
『これより、準決勝に移行します』
再び、機械的アナウンスが通信魔法を通して部屋に鳴り響く。
「ようやく準決勝か」
皇銃夜は休憩状態から緊張状態に体を起こす。
決して寝ていたとかではない。
しっかりフリューゲルの戦闘をモニターごしに見ていたのだ。
「フリューゲルのやばさは改めて理解した。正直、あの斬撃は見えなかった。だが、俺にはある秘策がある」
銃夜は気合を入れる。
『では、準決勝の対戦カードを決めます』
モニターにそれぞれのパーティーリーダーの写真が映し出され、シャッフルされる。
そして、決まる。
『準決勝、第5試合、スメラギ ジューヤvsシックザール。第6試合、フリューゲルvsトゥインク=シャイナーです』
「いや、またフリューゲルあたらんのかーい」
銃夜の切れ味は抜群だ。
「ていうか、シックザールって誰なんだよ」
「うーん。誰なんでしょう?わかるのは黒のロングコートってことと、ネーベルさん達が一瞬で黒焦げになっていたことから雷?でしょうか?その類の魔法または、スキルをもっているメンバーがいるということですね」
フリーデンが試合中にとっていたメモを確認しながら言った。
「ユキヒメはあれをどう見る?」
「あれ、というのはネーベルらが最後に食らった攻撃でありんすこと?フリーデンの言う通り妾も雷だと思うでありんす。一瞬、黒い雲のような物が頭上に見えなんしたゆえ」
「やはり……そうなのか……?」
ここで、ルーナが一つ疑問を持つ。
「それと、第3試合の時、なぜ、シックザールさんはわざわざネーベル達に自分だけ姿を見せたのでしょうか?」
「そ、それはだな―――」
銃夜はなぜか、背中が痒くなる。
「男子には、ああゆう時期が必ずあるもんでして―――なんと、言えば良いのやら。
自分の事を最強だとか自分だけは他と違うと思い込む謎の優越感に浸るといいますか―――つまり、女子にはわからない一つの病気のようなものなんですね―――」
言っている内に過去の自分が嫌いになった。
「び、病気……?」
「えーいっ!!もうっ!この話なしっ!」
銃夜はあまりの恥ずかしさでこの場を無理やり収めようとする。
しかし、
「ジューヤさん……?何かあったんですか?顔が赤い……もしかして、ジューヤさんも同じ病気なんですか?いけないっ!早く回復魔法師さんに見てもらわないと!」
「黙れっ!俺は完治した。したはずだっ!!今だってほら、かなり現実主義者というかリアリストだろ俺。これは、完治の証しっ!そうだよ。そう信じているよっ!もう特殊能力とかスキルとかには憧れませんっ!!え?スキル使いまくってるって?これは、異世界というイレギュラーで起きたただの事故なんですっ!!」
銃夜は長文を並べ、弁解を求める。
ユキヒメと、フリーデンはそろそろ中二病という言葉に感づいたようだ。
ユキヒメはどうでもいいといった感じだ。しかし、フリーデンはこの期を逃すまいとこのネタを必要以上に擦ってくる。
フリーデンはその場でうずくまり、右手を抑えた。
「くっ……右手がっ……」
「おいっ!お前っ!わかってるだろっ!!わかってやってるだろっ!それっ!!まじで殺すぞっ!!」
「いやいや、何がなんだかさっぱりですよ。ジューヤさん。本当に右手が痛かったんです。疼いたんです!」
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
皇銃夜ついに発狂。
そして、ようやく準備が整ったのか、
『ユキヒメと愉快な仲間たちの皆さん、転送を開始します』
「今更だけど、パーティに名ひどいなこれ。誰がつけたんだよ?」
「「「お前だよっ!!」」」
息のあったツッコミ。今日も仲が良い。
ユキヒメと愉快な仲間たち転送完了。
転送先は、プリズンダンジョン。
地下牢獄だ。
いくつもの部屋が横並びで並んでいる。
その部屋の入口は鉄格子のようなもので隔離されている。
そして、このプリズンダンジョンの最大のギミックはその牢獄に数多ものモンスターが囚われていることだ。
それらのモンスターをそのままにするのもよし、開放し戦況を変えるのもよし。
全ては己のストラテジーにかかっている。
「牢獄……?」
銃夜達が転送されたのは牢獄が連なる一本道の廊下だ。
そして、その真正面にシックザールが転送されてきた。
シックザールは相変わらず中二病センスで白髪に黒のロングコート、そして、そのコートのポケットに手をつっこんでいる。
「お前がシックザールか」
「いかにも。我がその人である」
「へっ俺達の目的はあくまでフリューゲル。中二病患者には用はねぇ。病院行って来いよ。さっさと終わらせてやるから」
「そうか、なら我をぞんぶんに楽しませてくれ。スメラギ ジューヤ」
今更ですけど、転送されるダンジョンは完全ランダムです。




