第63話 第4試合その➇
「よし、ゲミュートは落とした。結果的に助けてもらったが―――いや、聞こえてないらしいな。リア」
リア。獰猛化。
その血のように紅く染められた眼はルイーゼに向けられる。
「闇魔法、闇結界」
「!?」
リアは結界を構築する。
その正方形はルイーゼを捕らえた。
「ちょっと待って、リア!私は味方よっ!!」
ブラックボックスの中からそう叫ぶが、リアは言うことを聞かない。
それどころか、黒い幽霊をその正方形の箱の中に召喚した。
ブラックボックスで繰り広げられる黒い幽霊とルイーゼの戦い。
ルイーゼはリアを止めるため、黒い幽霊に挑む。
「どうやら、やるしかなさそうね」
そう思った瞬間、黒い幽霊が全速力でルイーゼとの距離を詰めてきた。
「速いっ!!私のより断然っ!!」
しかし、ルイーゼは剣を抜いて黒い幽霊の手刀を弾き返した。
(この黒い幽霊は近接戦闘向きだ。距離があれば倒せることができうる)
再び、黒い幽霊の猛攻がルイーゼに向けられる。
―――打撃。
一発重いのがルイーゼの腹に直撃した。
「ぐはっ!!」
口から血が吹き出す。
血と唾液が混ざってぐちゃぐちゃになっている。
唾を飲む時に鉄の味がする。
が、ドーパミンだだ漏れのルイーゼはそんなことは気にしない。
(私のより遥かに速く、そして、強い……!!)
しかし、ルイーゼは即座に立ち上がり、意を決して剣を構える。
それに、対するように黒い幽霊もファイティングポーズをとる。
一騎打ち。
そして、2人同時にお互いに向かっていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
ルイーゼは大きく剣を振りかぶった。
しかし、ルイーゼの目の前で黒い幽霊が突然バランスを崩し、結界ごと消えてしまった。
「!?」
そして、先程、リアが居た位置を見てみるとリアの姿はなかった。が、代わりにフリューゲルがそこに居た。
「遅かった」
フリューゲルはそう一言告げる。
よく見てみるとフリューゲルの左手には斬撃をふんだんに食らったリアの姿があった。
フリューゲルはリアをまるで猫のように掴んでいる。
「もっと早く終わると思っていたがゲミュート達よりお前らの方が強かったらしいな」
「リアを離せっ!!」
「ちょっとまてよ。君、このリアってやつに殺されかけていたじゃないか。ここはお礼を言うのが筋ってもんじゃないか?それに、君ももう斬っておいたよ」
「何を言って―――」
ザシュッ。その効果音が聞こえた次の瞬間、ルイーゼは気を失った。
そして、次に目が覚めると例の部屋で回復魔法師に傷を手当てされていた。
「隊長っ!!」
アレンがそう言いながらルイーゼの元へ駆けつける。
それに続いてルーター、そして、元に戻ったリアの姿もあった。
「そうか、負けたのか。すまない。みんな」
「いえ、謝るのは私の方ですっ!」
リアは深々と頭を下げる。
「私の暴走が原因で負けてしまって……」
リアは泣きながら謝る。
「本当にすいませんでしたっ!!」
「いや、いいんだ」
ルイーゼはリアから目を背ける。
「たしかにネクサスの目標はここで、途絶えた。けれど、それ以上にリアが無事でよかった。なぜなら我々ネクサスは何よりも仲間を大事にするチームだからね」
ルイーゼは目を背けながらボロボロと涙を流しているリアにそっと拳を当てた。
それから、そんな重い空気の中パンパンと2回拍手が鳴り響く。
そんな空気を拍手ごときでぶち壊したのはアレンだ。
「そろそろしみったれた空気はやめません?それより、隊長、俺が落とされた後、このモニターで観戦していたんですけど、フリューゲルが最後に隊長に向けて放ったとされる斬撃が確認できなかったんですが、何をされたんですか?」
「そうそう、僕も見ていました。リアがやられた時の斬撃も見えなかったです」
「ああ、その件か。私も何をされたのかわからない」
「私も闇魔法の暴走で気を失っていたので……すいません」
「ていうかリアの暴走のやつ詳しくは知らないっすけどどういうことなんすかね?」
アレンがそういうと、ルイーゼを回復させている回復魔法師が説明する。
リアがフリューゲルに食らった斬撃も彼が直したのだ。
「それはね」
と、話し始める。
回復魔法師はかなりの年配の男性だ。
けれど、ヘリルス屈指の回復魔法師として有名なので、かなり信頼がある。
「魔力の暴走さ。たまにあるんだよ。魔力が術者の体の主導権を握ってしまうんだよ。ほら、魔力って、血液のように体中に通っているだろ?その魔力によって意識が乗っ取られてしまうんだ。そして、今回の被害者であるリアは元々多大なる魔力を持っていたそうだね。魔力のコントロールの訓練が必要になりそうだ。もう無闇に魔力を放出したりしない。いいね?」
「はい。すいませんでした」
リアは申し訳無さそうにする。
「わかればオッケー」
回復魔法師は意外と軽かった。
「それにしても改めてやばいっすねフリューゲル。もうあいつ勇者確定じゃないっすか」
「そうかもしれないが、私は知っている唯一フリューゲルに対抗しりうる力をもっている男を」
「えー、だれですか?」
「スメラギ ジューヤという男だ。私は彼に意思を預ける。頼んだぞ」
ルイーゼは後半、独り言のようになっていた。




