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第62話 第4試合その⑦

「リアっ!」


 ルイーゼがそう声をかけても彼女の耳には届かなかった。


 ―――暴走。


 その単語がルイーゼの脳を駆け巡る。

 瞳孔が開く。鳥肌が立つ。


「闇魔法、蟲害操術(異)」


 リアは再び、魔法を発動させる。


 リアの周りに無数の魔法陣が構築される。

 その魔法陣は真っ黒で禍々しいオーラを放っている。

 今すぐその場から離れたいところだ。


「リアっ!!」


 再び、彼女の名前を叫ぶ。

 しかし、止まらない。


 ゲミュートは理解した。


(たしか、あの女をやりに行ったのはサハリンだったはず。サハリンは今どこへ?いや、ここは落ちたと考えるべきか……)


「あなた、サハリンをやりましたね」


「うがぁぁぁっ!!」


 リアは意識の安定を保っていない。

 廃人と化している。


「ま、とにかく。サハリンのかたきを打つとしましょう。虫の件もありますしね」


 ゲミュートは抜刀の構えをとる。


千紫万紅せんしばんこう


「リアっ!!避けてぇぇぇ!!!」


 しかし、リアは先ほど立てた魔法陣に魔力をためるばかりで少しも動こうとしない。


「もう遅いっ!!」


 ゲミュートの抜刀術は超速で繰り出される。

 抜刀の軌跡はレッドゾーンとなり、真っ赤な蛍光色の軌道を描いた。


 直前、ようやくリアの闇魔法が発動する。


「がぁぁぁぁっ!!!」


 ゲミュートは気づく。


「!?」


(ここは?どこだ?)


 ゲミュートはリアに向かって抜刀術を繰り出したはず。

 だが、ゲミュートが現在いる場所は、なんと表現したらよいだろうか―――異空間。

 千紫万紅せんしばんこうで敵を斬った時に起こる一面の花畑のように自分にしか見えない領域が展開されている。


 それは、ドロドロとした地面に一面真っ暗な空間。

 ゲミュートが現在わかることはこれぐらいしかない。

 どこを振り向いても景色は一向に変わらない。


 そんな中、

 ガシッ


(なんだ……?)


 ゲミュートは足を誰かに掴まれた気がした。

 下を向く。


 しかし、見えない。

 真っ暗な景色しか見えない。

 そこで、ある結論にたどり着く。


(視界がなくなっている……?)


 ガブッ今度は、そのドロドロとした地面から何かに噛まれた気がした。


(くっ……わかる。出血しているっ……何かに噛まれて出血しているぅ)


 シュルシュル次は、体中を何かに巻き付かれ這いずり回れている。

 そして、冷たい。何かの液体が滴っているらしい。


 やがて、ゲミュートの視界がクリアになった。

 先程の異空間から外に出たらしい。

 真っ暗な視界に急に光が差し込むから目が眩む。


 そして、目が光に慣れてくる頃、東京の街並みやルイーゼとリアを認識する前に、


「!?」


 ゲミュートは絶叫する。


「あああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」


 ゲミュートの体は文字通りボロボロだった。

 胴体は何かに噛まれたような傷でいっぱいだった。

 血まみれである。

 そして、足や手なんかは発疹で埋め尽くされていた。  それに、皮膚と皮膚の間の傷口に小さい卵のような物もうえつけられていた。


 クラッとゲミュートは立ち眩みを起こした。

 しかも、「はぁはぁはぁ」と息切れを起こしている。


(く、苦しいっこれは!?この症状は―――貧血。さっきの異空間で何者かに血を奪われたのか!?それに、この発疹、感染症か?)


 その場に立ちすくむ。

 そして、ゲミュートは先程のリアの言葉を思い出してみる。

 ―――蟲害操術(異)。

 そして、一つの結論にたどり着き、恐怖と鳥肌が加速した。

 ―――虫。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 絶望の最中、ゲミュートが見た光景は自身に斬りかかってくるルイーゼだった。


 そして、ルイーゼは「今だっ!」とゲミュートに斬撃を入れた。


 ゲミュートの体に斜めの傷が入る。

 そして、一定ダメージに到達し、リタイアとなってしまった。




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