第51話 開催
勇者選抜当日。
ここヘリルス最内区であるロワ区にはたくさんの人が訪れた。
長年支配を受けてきた魔王を討伐する勇者が誕生するからである。
一方、ロワ区の冒険者ギルドには数多なる歴戦の猛者達が集っていた。
なぜなら、ここの冒険者こそ、本大会へのエントリー場だったりするからだ。
中には、見覚えのある人達がちらほらいた。
シャイナーやルイーゼ、フリューゲルにゲミュートと。
(下衆ートは絶対しばく)
銃夜はゲミュートの方を一瞬、チラっと睨んだ。
そして、受付嬢に参加資格を貰い、ここの冒険者ギルドの受付の奥にある会場へとつながる道に案内されるのだ。
参加条件は次の通りだ。
・A+以上のクエストを3つクリアした者。
・冒険者パーティーがぴったり4人であること。
・ヘリルスの国籍を持つ者
この3点だけだ。
当然、銃夜達も参加する。
しかし、参加条件であるパーティー人数に達していない。
「ジューヤさん!あと、一人って一体誰なんですか?」
続々とエントリーを終えていく冒険者達の中でフリーデンは不安を募らせる。
「まぁ、待て。そのうちやってくる」
「ここは我慢だ」と言わんばかりにフリーデンに意見を押し付けた。
すると、後の方から、「ジューヤ、久しぶりじゃないか」
と、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
金髪のそいつはかつてゾンビ達を一掃した時の即席パーティーのメンバーだった。
「シャイナー!なんだよ。お前も勇者選抜に出るのか?」
「ふっまぁな」
シャイナーは金髪の長い髪をなびかせた。
そして、銃夜はシャイナーの隣にいた子供に気がついた。
身長はユキヒメと同じぐらいだ。
シエルのことである。
「なんだ、シャイナー。こいつは」
と、銃夜はその子供に指をさす。
「これは、本場勝負。子供なんか連れて、もしかしてパーティーメンバーじゃないだろうな?」
「ビンゴっ!」
シャイナーは奇抜なポーズをとってみせた。
すると、フリーデンが「なんですか。この胡散臭いやつは」と小声で言ってきた。
「こいつは運だけでここまで来た男だぞ。名はシャイナー」
と軽く自己紹介をした。
「シャイナー……どこがで聞いたことがあるような……?」
しばらくすると、「思い出した!」と、言って「シャイナーって言えばあの金持ち貴族じゃないですか!!どうしてこんなとこに?」
「ビンゴっ!」
再び、シャイナーは奇抜なポージングをした。
「なぜなら―――」と、シャイナーは話し始めた。「僕にはある野望がある。それは、魔王討伐に関係しているのだよ!!」
「まじですかっ!!」
フリーデンとは早くも打ち解けたようだった。
「それで、その子供は?」
「こいつか?こいつは、シエルって言うんだ。スキルは言わないが、けっこう強いぞ」
「ども……」
シエルは銃夜に軽く会釈し、他のパーティーメンバーの方へ行ってしまった。
そのパーティーメンバーは眼鏡をかけている頭良さそうな奴とか、真っ黒のフードをかぶっていてよくわからない奴がいた。
「じゃあ、僕は作戦会議があるから」
そう言ってシャイナーは自分のパーティーメンバーの所へ帰ってしまった。
「なんかあいつやばそうでありんしたが……」
「そうだね」
ユキヒメとアイリスがそう言った。
「やばそう?」
銃夜はユキヒメにそう聞き返した。
「ええ、シャイナーとかいうやつはともかくあの翠色の眼の少年……あいつ、かなり厄介な気がしたでありんす」
「厄介ね……」
今度は、真っ黒の髪の毛を腰まで伸ばしている女が銃夜の横を通った。
その女の悪い目つきは明らかに銃夜に向けられたものだった。
しかし、彼女は何も言わず、そのまま他の仲間と共にエントリーに向かった。
(今のルイーゼだよな?気まずい……)
前にルイーゼには叱った覚えがあるので、かなり気まずい。
お腹が痛くなってくるほどに。
ギュルギュル
そして、しばらくすると、冒険者ギルドのドアがキキキという音を立ててゆっくり開かれた。
そこの冒険者ギルドにいた人達は皆その方向に注目した。
すると、開かれたドアからひょっこりと青色の何かが見えた。
スライム?一瞬、そう思いかけたがそれは違う。
銃夜はその何かを確信し、アイリスと目を合わせる。
そして、その青色の何かの全貌がはっきりした。
髪の毛だ。
太陽の光を反射し、つやつやと輝きを見せる。
そして、彼女はゆっくりとドアを開け、銃夜とアイリスとしっかり目が合った。
そのボブヘアーな彼女には銃夜は何度も助けられた。
おそらく異世界に来て会ってきた中で最強の人物。
ルーナだった。




