第48話 フラッシュ暗算
「ああ、そのようだな」
モルゲンレーテはゆっくりカードをめくる。
「一体いつから、私が陣営に意識がないと?言ったはずだ。全ては数学と合理性だと。当然、そのことも見抜いている。そして、見えていなかったのはそっちでは?」
結果は、それは司令塔ではなく訓練兵だった。
そして、モルゲンレーテの訓練兵のカードは破棄される。
モルゲンレーテはカードをもう一つの裏切り者を動かす。
「どうした?さっきからラーシェ、お前から冷や汗が止まらないぞ。もしかして、これが、王か?王手だな」
(まずい……確かにあれは、王だ。しかし、前のターンで終わらせるつもりだったので、王を動かすのを忘れていた。既に、相手に囲まれているっ!!ここはひとまず王の脱出を……無理だ。もしかしたらという次元ではない、本当に勝てない。不可能っ!!)
シエルがシャイナーに声をかける。
「シャイナーさん、次の勝負は、フラッシュ暗算と言ってくださいね。いいですね」
「ああ」
シャイナーは険しい表情をした。
そして、
「どうした?まだか?」
モルゲンレーテはラーシェに声をかけるが、沈黙する。
「審判?」
審判にこの状況を委ねることにした。
「はい、ラーシェ様、気絶により、モルゲンレーテ様の勝利です」
モルゲンレーテは賭けの通り、ラーシェを奪おうと、ラーシェの体に手をかけようとする。
しかし、「待て」と、シャイナーがその手を止める。
「俺と勝負だ。そして、賭けるのは、俺と、シエルだ」
「ほう」
「その代わり、俺が勝ったら、ラーシェと、あんたをもらう。こちらの意見は変わらない」
「この私かっ、いいだろう。面白い。勝負内容は?」
「フラッシュ暗算だっ!!」
「ぷっふっははははは、バカかお前は?さっきも言っただろ?私のスキルは錬合いカリキュレーション、最速の暗算術なんだよ。それに君は勝つと」
「当たり前だ」
「ふっ、イカレてやがる。面白い、いいだろう、お前がそう望むのなら、勝負してやるよ。審判」
「はいっ!」
審判は黒板のようなものを用意した。
「私がこの黒板に魔法で、数字を出していきます。そして、モルゲンレーテ様とシャイナー様は紙に答えを書いてください」
「いいだろう。だが、勝敗はどう決めるんだ?」
シャイナーは椅子に座りながら言った。
審判が説明を続ける。
「勝敗は、エンドレス方式を採用します」
「エンドレス方式?詳しく頼む」
「エンドレス方式というのは、例えば、第1問が終了し、両者正解だったとします。その場合、第2問、3問と続けていきます。これを両者のどちらかが不正解になるまで続けるということです。」
「エンドレスとはそういうことか。理解した」
「では、勝負を始めさせてもらいます。用意は大丈夫ですか」
審判はシャイナー、モルゲンレーテに視線を送り、顔色をうかがう。
「ああ」
「問題ない」
2人からそう告げられ審判は早速勝負に移ることにした。
「設定はいかがしますか?」
設定というのは、フラッシュ暗算の数字の桁と問題数、秒数ということだ。
「シャイナー、決め給え。私はそれに従うとしよう」
「そうだな。ここは、3桁4口4秒だっ!」
シャイナーはそう言い切る。
「ほう、3桁か最初から飛ばすな」
「まぁな」
「では、問題を始めます」
審判がそう言って、持ってきた黒板に、3桁4秒で次々と問題が出題された。
426、842、552、576
4秒というのはあまりにも早い。
シャイナー達の脳を高速で疾走していく。
さらに、その速度についていき、計算をせねばならない。まさに、神業。
が、シャイナーとモルゲンレーテのペンはその速度と共に紙に向かって走っていく。
やがて、2人は答えを書き上げた。
まずは、モルゲンレーテから答えを出す。
「2396」
続けて、シャイナーも、
「2396っ!!」
「正解です」という言葉にシャイナーは安堵し、モルゲンレーテは「当然だ」という表情をした。
「どうした、シャイナー。出ているぞ、汗が」
シャイナーの額にキラリと水滴が流れた。
それを拭いながら、
「大丈夫だ」
「辛そうだな。次で決着をつけてやる」
「っ……!!」
「審判」
「はいっ!」
「次は、5桁12口1.5秒だっ!!」
瞬間、シャイナーの心中は絶望という言葉で埋め尽くされた。




