第47話 心理戦
【注意】ゲーム内容がかなり複雑化しています。
「では、まず、お互いカードを伏せて並べてください」
審判の女性がそう言って、お互い、盤に10枚のカードを伏せて並べる。
盤のマス目は横10、縦5だ。
盤には横、右から1、2、3……と、番号が振られている。
ラーシェは、9枚横並びでならべ、マス目の座標、横、6マス目に縦2枚並べている。
きっと、司令塔を守っているのだろう。
そして、右詰めで、最後の1マスは空けている。
対して、モルゲンレーテは横、7枚並べ、2マス目、4マス目、6マス目に縦2枚を並べ、横の余った3列を空けてラーシェ同様、右詰めでゲームを開始する。
このゲームは、お互い、全てのカードを伏せて、ゲームを進行していくため、記憶と駆け引き、そして、運が重要になってくる。
そして、お互いのカードが対面すると、バトルモードに移行する。
「先行、どうぞ」
モルゲンレーテはラーシェに先を譲った。
「ああ、そうさせてもらうよ」
(これも、何かの策略か?)
と、ラーシェは考え込む。
このゲームはターン制で、自分の好きな持ちカードを全方位1マス動かすと相手のターンに変わる。
ラーシェは無言のまま、一番右にあったカードを1つ上に1マス動かす。
ちなみに、ラーシェのカードはこうだ。
攻撃兵2枚、防御兵2枚、バランス兵1枚、魔法師1枚、裏切り者2枚、司令塔1枚、王1枚
裏切り者が2枚あるので、ラーシェは慎重に、ゲームを進めていかなくてはならない。
「私のターンは終わりだ。モルゲンレーテ」
「次は、私か」
モルゲンレーテは無言のまま、ラーシェが動かしたカードに向かっていくように一番右のマスのカードを1つ上に動かした。
次に、ラーシェのターン。
ラーシェもその誘いに乗るために、モルゲンレーテが動かしたカードに向かっていくように一つ前のターンと同じカードを動かした。
「バトル」
お互いのカードをめくる。
モルゲンレーテ、バランス兵。
ラーシェ、攻撃兵。
よって、ラーシェの勝利。
モルゲンレーテのバランス兵は破棄される。
「よし!」
ラーシェは小さく拳を握る。
だが、モルゲンレーテは、あまり焦っている様子はない。
これも、計画の内というような、不気味な表情を浮かべている。
その後、モルゲンレーテは果敢にラーシェに攻めるも、伏せられたカードがわからないので、どんどん打ち止めされる。
そして、戦況は大きく変わり、モルゲンレーテの残り枚数は4枚、ラーシェの残り枚数は6枚となった。
現在、ラーシェ、6マス目に縦2枚(一度も動かしていない)、座標(1,3)に1枚。
(2,2)に1枚。(5,4)に1枚。(9,4)に1枚という状況。
一方、モルゲンレーテは、座標(4,3)、(6,5)、(7,4)、(8,2)に1枚ずつ配置。
そして、モルゲンレーテとのバトルによって、ラーシェの(6,2)にあるカードは防御兵ということで確定している。
さらに、(1,3)のカードは攻撃兵ということも。
他のカード、モルゲンレーテのカードはまだ、伏せたままだ。
ここで、ラーシェのターン。
(5,4)のカードで、(6,5)のカードと勝負。
結果は、(5,4)のカードバランス兵、(6,5)のカード、訓練兵。
よって、ラーシェの勝利。
「くっくっくっ」
モルゲンレーテは笑っていた。
「何がおかしいっ!」
シャイナーが叫ぶ。
すると、ラーシェも、手で「待った」のようなポーズをシャイナーにする。
「悪いシャイナー、私の負けだ」
「くっ……おい、シエルっ!!」
「はい、ラーシェさんの言う通り、このままだとモルゲンレーテさんの勝ちのようです。ですが、あくまで結果であって過程次第でこれから何か変わるかもしれません」
(ああ、まずい、私の負けだ。わかってた。が、勝つにはこれをするのが最適だった。とうとう動いてしまうな。私の裏切り者が。だが、それも既に考慮し、裏切り者はできるだけ遠ざけた)
すると、モルゲンレーテの残りカードが3枚になったので、ラーシェの裏切り者がモルゲンレーテへ寝返った。
裏切り者は盤上で、カードがめくられ、ラーシェに敵対する。
カードの位置はそのままだ。
(2,2)と(9,4)が裏切り者だ。
(くっくっくっ。このゲームはほとんど運ゲーだが、数学という知識を使えばその運は覆る)
モルゲンレーテは不敵な笑みを見せた。
そして、モルゲンレーテのターン。
未だ場所が知られていない王を裏切り者が倒す方針に切り替える。
モルゲンレーテは防御兵の後が怪しいと思うので一番近い(2,2)を(3,1)に斜めに動かす。
その後、ターンをさらに重ね、モルゲンレーテの裏切り者は王と思われる所に到着。
「ラーシェ数学はいいぞ」
モルゲンレーテは突然何かを話し出す。
「数学や物理ってのは、未来予測ができるんだ。例えば、そうだな、今、私がここから石ころを落としたとしよう。すると、石は重力によって落下する。これは、計算で、どのくらいの速度で、どのくらいの質量を持ちつつ、何秒後に地面と接触するのかがわかるんだ。それらを瞬時に明確な数字にする。これが、私のスキル、錬合いカリキュレーションっ!!!ところで、君はこのカード達をどのように選考したのか?」
「急になんだ?」
「質問に答えろよ。君はどのように選考したのか?と聞いているんだ」
「私は、魔術師だ。もちろん、魔術を使った」
「どのような魔術だ?」
「魔方陣を書いてって……これ必要か?」
「大事なことだ。続けてくれ」
「魔方陣から私の『運』や『歩むべき道』を推測することができる。この『運』や『道』に従っただけだ。神からの教えなのだ。それこそが私の『運命』なのだ」
「ほう、では、君は負ける運命にあるようだ。私はね、神なんか信仰しない。私は自分の力を信じるんだよ。私の選考方法は、数学と合理性、そして、心理だ。
私のスキルで、ここにいる全ての人の誕生日を確率的に推測し、見事欲しい手札を引き当てた」
「なっ、可能なのか?」
シャイナーが言った。
モルゲンレーテは続けて、
「ああ、そして、そいつらの性格や癖を瞬時に見抜き、合理性に従う。いいかい、ラーシェ。勝負は始まる前から勝っているということなんだよ」
モルゲンレーテは大きく息を吸い、決める。
「バトルだ。じゃあな、ラーシェ。私の勝ちだ」
この場の誰もがモルゲンレーテの勝利を確信した。しかし、結果それは王ではなく司令塔だった。
(ばかなっ!?これは、フェイクっ!!)
「かかったなあほが。確かにあんたは数字的合理性に従い、私を追い詰めたが、逆だよ。私の手札誘導までは数学では測れなかったか?」
「なっ!!」
「お前、さっき言ってたよな、勝負は始まる前から勝っているって、ああ、その通りだ。おかげでこんな簡単な罠にハマるとは。そして、私のターン。お前は私の裏切り者ばかり見ていたんで、陣営の状況が把握できていねぇらしいな。教えてやるよ。お前の司令塔は今、私の射程距離内だっ!!!!」




