第45話 数学という名の魔術
そして、シャイナーはシエルを仲間にし、さらに、残り2人の戦力を探しに行く。
再び、出会いを探してシャル区の冒険者ギルドに参った。
「シエル、見えるか?」
シャイナーがシエルにこう問う。
現在、シャル区のギルドに貼られているクエストボードの前にいる。
シエルの未来予知でどのクエストを受けたらどのような出会いがあるかを見てもらっているのだ。
「そうですね」
シエルはクエストボードを一つ一つ見て回る。
やがて、その結論を出した。
「これなんか、どうでしょう?」
シエルが持ってきたのは、『計算という名の魔術』というクエスト名。
「計算という名の魔術?」
「はい、クエスト内容はマロ区の冒険者ギルドにいるモルゲンレーテという男との計算勝負だそうです。ちなみに難易度はBでそれほど難しい難易度設定ではなさそうですね」
「計算勝負?なぜ?」
「はい、ほんとなぜでしょう?しかも、クエスト依頼者はモルゲンレーテ本人という記載があるようです」
「それで、シエルはこのクエストがいいと?」
「はい、このクエストを受ければちょうど2人仲間になってくれる人が現れるはずです。この眼に誓って」
「わかった。とりあえず、このクエストを受けよう」
シャイナーとシエルはこのクエスト用紙を受付嬢の方に持って行く。
「はい、『計算という名の魔術』ですね。今ハンコを押しま―――」
受付嬢がクエスト受注完了のハンコを押そうとしたときその言葉を遮るように、
「待ってくれっ!!」
と、シャイナーの後方から、女性の声が聞こえていた。
「ん?」
シャイナーはゆっくり振り向く。
そこには、黒装束の女が一人立っていた。
女はシャイナーより小さくシエルより大きい背丈をしている。
女は真っ黒のフードのような物で顔を隠している。
「私は魔術師のラーシェっ!そのクエストには大変興味があるっ!!私も一緒に連れて行ってくれっ!!」
(これは……さっそくシエルの未来予知が予期したことなのか……?)
シャイナーはシエルの方に視線を送る。
そして、シエルは「うん」と、頷く。
「わかった。ラーシェといったか?」
「はいっ!」
「いいだろう。一緒についてくるといい」
「やったー!」
どうやら、ラーシェは魔術オタクのようだ。
素顔ははっきりとはわからないが、ラーシェは頬を染め、笑顔になった気がする。
そして、この3人で改めてクエストを受注することにした。
数分して、マロ区に到着する。
マロ区はシャル区の一回り外側にある。
マロ区の冒険者ギルドの入口の前になにやら人だかりができていた。
「なんだ?ありゃ?」
と、シャイナーはシエルとラーシェを引き連れて、その人だかりに近づく。
近づくと、なんと、そこには冒険者ギルドの入口を塞いでいる男がいたのだ。
人だかりはそれが原因らしい。
「おい!早くそこをどけよ!」「ギルド入れねぇーじゃん」「冒険者なんだよこっちはっ!」
人だかりはこう騒ぎ立てている。
「どうしたんですか?」
シャイナーは人だかりの中にいる女性に声をかけた。
「それがね。この男が冒険者ギルドの入口を塞いじゃって中に入れないの」
「入るには?」
「この男となんだっけ?計算勝負?をして勝てばここが解放されるらいしけど。まだ、誰も勝利を収められていないのよね」
男の前には円卓が置かれていて席が2つある。
男が座っている席と空席だ。
その男は、長方形の形のレンズをした眼鏡をかけている。
そして、見るからしてかなり堅物そうな人で、おそらくこの入口からなにがなんでもどかないだろうという強い信念のような物が感じられた。
シャイナーはその男に話しかける。
「なぁ?これお前か?」
シャイナーはその男に『計算という名の魔術』と書かれたクエスト用紙を見せる。
「いかにも、私こそが、モルゲンレーテである」
低い声でモルゲンレーテはそう言った。
「ここをどいてほしいなら私と計算勝負だ。私はさらなる強者を求めている」
すると、その人だかりの中から別の男が一人、モルゲンレーテと名乗った男の前に行く。
「次の挑戦者は俺だ。俺が勝ったらそこをどいてもらう」
「了解した。種目は?」
「計算早押し勝負だっ!!」
そう言って挑戦者は席に座る。
そして、モルゲンレーテの後にある冒険者ギルドから一人の女性が登場した。
その女性は2枚の紙と、2つのペンを持ってきた。
その紙とペンをモルゲンレーテと、挑戦者それぞれに渡す。
「私がこの勝負の審判であり、出題者とさせていただきます」
女性がそう言うと、2人は「うん」と、頷く。
「では、いきます。問題。∫xe^xsinxcosxdxを解いてください」
モルゲンレーテは渡された紙にペンを走らせる。
それに、対して挑戦者のペンは全く動いていない。
「1/50(5x+3)e^xsin2x+1/25(2-5x)e^xcos2x+C」
先に答えを言ったのは当然モルゲンレーテだ。
モルゲンレーテはおそらくここまで、2〜3秒程度で答えを出した。
はっきりいって化け物だ。
人間を超えている。
「あ、あが、がが、はぁはぁはぁ」
挑戦者はさっきまで、威勢がよかったが、冷や汗を垂らし、目を回している。
そして、その挑戦者は目の前にある円卓にむかってバッと頭から知恵熱を出して倒れた。
「ふっはなしにならんな」
すると、先程、審判をしていた女性は倒れた挑戦者が所持している全ての物を取り去り、モルゲンレーテに渡す。
「ありがとう」
文字通り、身ぐるみ剥がされたのである。
挑戦者の男は素っ裸のまま、外に放り出された。
それを見てシャイナーは同情し、
「あんまりじゃないか」
と、睨みつける。
モルゲンレーテは眼鏡を反射させながら、
「これ、賭けだ」
と、シャイナーを睨み返す。
すると、シャイナーの横からラーシェが、
「あ、あれが、数学の魔術……!!」
ラーシェは興味がさらに湧いたらしい。
だが、シャイナーはその言葉を無視して、負けじとモルゲンレーテを睨み続け、さらに、反抗的な態度をとる。
「おい、お前、モルゲンレーテとか言ったなっ!!イカサマか?」
「イカサマねぇ……」
「だってそうだろ?その女性、見るからに怪しいじゃないか。最初から答えを知ってたんじゃないのか?」
モルゲンレーテは目の前の円卓をバンッと叩きつける。
「この私がイカサマをしていると言いたいのか貴様っ!!!!!!!」
「っ……」
シャイナーはその圧に圧倒され、一歩引く。
すると、シエルがシャイナーの袖を引っ張って、
「あれ、イカサマじゃないっぽいですよ。この眼がそう言っています。あれは、正真正銘彼の実力です」
「まじか……」
絶句する。
モルゲンレーテは眼鏡をクイッとして、
「わかったか?これが、私のスキル錬合いカリキュレーション」
それはスキルというより異能に近いのかもしれない。
銃夜の『神回避』同様、神様からのギフテッドなのだろう。ある意味才能だ。
「す、スキルだと……」
「で、どうする?」
モルゲンレーテは聞き返す。
「どうするって……」
「お前、私のクエストを受けに来たのだろ?」
「ああ、そうだったな。今度は僕が挑戦者となろうっ!!!」
「負けず嫌いのお坊ちゃんまが、ねじ伏せてやるよ」
恋愛サーキュレーションのパクリです。




