第44話 翠色の眼の少年
シャル区冒険者ギルドにて、
「おめでとうございます!!トゥインク=シャイナー様っ!
クエスト『閃光の覇者』難易度A+
クエスト『月夜が照らす新たな痕跡』難易度A+
クエスト『狡猾な支配者』難易度A+
以上、全てA+以上のクエストクリアが確認されたため、バトルトーナメントの出場権が得られましたっ!!」
そう言ったのは受付嬢だ。
「まぁ、僕にかかればこんなもんかな」
シャイナーは若干自惚れている様子。
「あとは、パーティーメンバーを残り3人見つけるだけか」
今までのA+以上のクエストはなんと、シャイナー一人でクリアしてきたのだ。
それは、彼のスキル【幸運】があったおかげである。
そして、シャイナーはその3人を見つけるため、シャル区を散歩していた。
そんな時、
「おらぁーー!!ガキがぁぁぁーー!!!」
路地裏で、大男が子供を殴りながらそう叫ぶ。
子供はかなり、背が低い。小学校低学年くらいの背丈しかない。
その子供は誰かに助けを求めるわけでもなく目の前にいる大男にただ一方的に殴られているだけだ。
シャイナーはその光景を見て、見て見ぬふりをしようか迷った。
が、その子供と一瞬だけ目が合う。
しかし、その子供はまるで、「助けなくていい」と言っているように合った目をシャイナーから背け、大男の方に向けた。
この心の揺れがシャイナーの迷っていた心をぶち壊した。
「おい!お前、流石にそれはあんまりじゃあないか?子供をいじめて」
やってしまった。極力無駄の無い生活を心がけているシャイナーだったが、ここで、足を止めた。
「ああ?なんだ?お前?」
「通りすがりの、冒険者だっ!」
きまった。
「冒険者?だったら失せろっ!!関係ねぇだろ?俺も関係ねぇやつをいたぶる趣味はねぇぜ」
「そうか」シャイナーはその大男に背を向ける。
そして、「だったら無理矢理関係してやるぅぅーー!!!」
と、言ってその大男に小石を投げる。
「痛っ」
大男は小石が当たった頭を抑える。
「やりやがったな……てめぇ……」
「一つだけ忠告してやる。俺のスキル幸運は全てを呑み込む。それは例えお前の力さえも」
「はぁ?何言って―――」
瞬間、大男の頭に当たった小石はそのまま地面に転がっていく。
さらに、転がる、その小石は止まることを知らない。
どんどんどんどん転がっていき、やがて、たどり着く。
たどり着いたのは犬小屋。
その犬小屋に小石が勢いよくぶつかった。
その衝撃で、犬小屋にいた犬が暴れだす。
暴れるその犬はどういうわけかシャイナーの目の前にいる大男に向かって走り出した。
その犬は大男の右足にガブッと噛みついた。
「ぎゃあああ!!!」
その大男は犬を無理矢理振り払ったが、犬は逃がすまいと、そのまま大男を追いかけてどこかへ行ってしまった。
どうやら、大男が使用していた香水の匂いが気に入らなかったらしい。
そして、殴られていた子供はゆっくりとシャイナーに近づいていく。
路地裏にいて影に隠れていたのでよくわからなかったがその子供は翠色でとても綺麗な目をしていた。
シャイナーはその子供の翠色の目に引き込まれるかのように立ち止まる。
「助けてくれてありがとうございます」
その子供は自分の体を90度曲げて丁寧にお礼をする。
その言葉をかけられてようやくシャイナーは今いる存在に気がついた。
「あ、ああ」
そして、その子供は立ち去ろうとした。
しかし、シャイナーのスキル幸運は発動していた。
「少年!!」
と、その子供を引き止める。
「はぁ、まだ何か?」
「行く宛はあるのかい?」
「行く宛ですか?ありません。ですが、大丈夫です」
「いいや、僕は君を保護する」
「保護ですか?」
「ああ」
シャイナーはその少年と共に、いつも泊まっている宿に到着した。
少し、落ち着いた頃、その子供はなぜ自分を保護したのかをシャイナーに問う。
「なぜ、僕を保護したのですか?」
「なぜか?それは、僕のスキル幸運がそう示したんだ」
「こううんですか?」
「ああ、そこでこの幸運が示した目的地はこの後、数週間後に行われる勇者選抜だ」
「勇者選抜ですか?」
少年はぎこちない敬語でシャイナーに言う。
「魔王の討伐任務が受けられる。そういう大会だ。僕は父のためにも魔王を絶対に討伐せねばならない」
「僕にその大会を手伝えということですか?」
「ああ、よくわかったな。僕の幸運がそう示した。が、無理強いすることはない。これは戦いだ。僕が言うのもなんだが、子供は巻き込んではいけないな」
「そうですか?でも、僕はやりますよ」
「君は、毎回、僕の意見の逆を行くんだな」
「いえ、もう決定事項なのです。僕のもそういうスキルだから」
シャイナーは少し驚いた表情をした。
「そういうスキル?そういえば君、名前はなんと言うんだ?僕は―――」
「トゥインク=シャイナーさんですよね」
シャイナーが最初に自己紹介をしようとすると、その少年は遮るように言った。
「なぜ、知っている?」
シャイナーは今まで体験したことのない不気味さを感じた。
「答えろっ!!少年っ!!」
「ですから、僕のはそういうスキルなのですっ!そして、僕の名前は、シエル」
「シエルっ!!答えろっ!どういうことなんだっ!!君のスキルは一体っ?」
「端的に言うと『未来予知』なのです」
「未来予知だとっ……」
「はい、僕のこの翠色の眼はこれから起こる事象の全てを覗くことができるのです。そして、シャイナーさん、僕はその勇者選抜にシャイナーさんと一緒に出場しているビジョンがこの眼に写ったのですっ!!!」
「なにっ」
「これは運命なのです。シャイナーさんっ!!僕はこの先の未来が見えるのですっ!!この未来は絶対なのですっ!!!ですから、シャイナーさんっ!!!」
シエルはシャイナーに近づく。
「僕をその勇者選抜に連れて行くのは絶対なのですっ!!!」
ここで、シャイナーはシエルの圧力に折れる。
「ああ、わかった。これも、僕の幸運の力なのか。
そして、シエル、お前をパーティーに加えるっ!!」
「はい。お任せください」




