第37話 女郎蜘蛛その①
媚薬に侵されたままユキヒメは銃夜達と一緒にA+のクエストをクリアしに行く。
クエスト内容は次の通りだ。
クエスト名:滅紫の剣で敵を刺す
クエスト内容:女郎蜘蛛の討伐
クエスト詳細:シャル区にいる少年からの討伐依頼で虫取りをしていたら襲われたとのこと虫好きの少年達のためにも一刻も早く討伐してほしい。
クエスト難易度:A+
報酬金:金貨10枚
「じゃあいっちょやりまっか。えいえいおー!」
「おー!」
フリーデンは元気よく拳を突き上げる。
ユキヒメは小さく拳を上げる。
「おいどうした。ユキヒメ、そんなんじゃ勝てないぞ!少年達のためにも意を決して俺達がやらなきゃならない!はい、もう一度、えいえいおー!」
「お、おー」
「若干元気が足りない気がするが、まぁ、ギリ合格点といったとこか」
それから、銃夜達は目的の場所である『カサカサの森』に到着した。
「いやな名前だなー」
『カサカサの森』という立て看板を見てつぶやく銃夜。
「そうですか?」
と、フリーデンは銃夜に聞く。
「そりゃあ、俺が元いた世界じゃカサカサって家中を彷徨う黒光した昆虫がいたんだよ。ほんとあいつ誰からも嫌われてたな」
「そんな虫が、一度見てみたいですね」
「やめとけ。というか、フリーデンは虫平気なのか?」
「はい!」
フリーデンは手でピースサインを作る。
「お、これは頼もしい。ユキヒメは?」
「ひゃぁい!」
と、ユキヒメは間抜けな声をあげる。
「わ、わ、わ妾も大丈夫でありんす」
ユキヒメはそう言ってフリーデンの後に隠れた。
若干顔が赤くなっていることに気づいた銃夜はユキヒメに近づき、おでこに手を当てる。
「ひゃ!」
ユキヒメの体はびくびくっとなった。
「うん、熱はなさそうだな」
銃夜は勝手に自己完結する。
ユキヒメは無言のまま、「勝手に触んな」というばかりの表情を銃夜に向ける。
「大丈夫ですか?ユキヒメさん無理なら無理とそうおっしゃってください」
「わ、妾は、別に無理なんかは……」
「そうか、ま、無理だけはするなよ」
そう言って、銃夜は、びくびく震えてフリーデンの後に隠れながらカサカサの森を探索することにした。
森の中は、色んな昆虫で溢れていた。
が、どれも害はなさそうだ。
どの昆虫もそれほど大きい者はいない。
どれも、元いた世界のものとあまり変わらない大きさだ。
ムカデやセミ、アリの行列や、巣を守っている蜂など、どれも、元の世界で既に体験済みだ。
少し、拍子抜けした。
「なんだ、異世界の昆虫はどんなものかと思ったら結構楽勝じゃねぇか」
が、少し進むと御神木だろうか森の中心に大きな木が一本立っていた。
とにかく大きかった。長さも、あるが凄まじいのはその太さだ。
その御神木に大量の昆虫が吸い寄せられていた。
答えは樹液だ。
その蜜を求めて昆虫達が大量にやってきているのだ。
そこにいる昆虫達は先程のような大きさの虫ではなくみんなとにかくバカデカい。アメリカンサイズである。
銃夜達の身長を遥かに上回っている。
おそらく、この御神木から流れている蜜が原因なのだろう。
そして、その御神木の中で昆虫達の間で生き残りを賭けたバトルが行われている。
「所詮この世は弱肉強食……」
銃夜は昆虫達の争いを観て言葉をこぼす。
すると、ここで、ある勝者が決まる。
大きなカブトムシがこの場を制した。
あらゆる昆虫を蹴落とし、最後に残ったのだった。
しかし、そのカブトムシにとってイレギュラーが発生した。
そう、今回のターゲット、女郎蜘蛛の乱入である。
女郎蜘蛛は御神木の上の方からにゅっと顔を出した。
その女郎蜘蛛はとにかく異形。
女郎蜘蛛の上半身は人間で下半身は蜘蛛のようだ。
足は6本、腕は2本。
腕はまるで、人間のようだ。しっかり両手共5本の指が備わっている。
そんな、女郎蜘蛛は勝ち誇っているデカいカブトムシを糸でぐるぐる巻きにしていく。
やがて、カブトムシの原型がわからなくなるほどの真っ白い糸に覆われた。
そして、女郎蜘蛛はゆっくりと捕食していく。
まるで、蛇のような真っ赤で長い舌で。
「あれが……女郎蜘蛛……」
銃夜は唾を飲み込む。
「あ、あへぇがじょろうぐも」
ユキヒメの発言で場が凍る。
媚薬の効果はさらに加速している。
「まぁ、いいや。ユキヒメ、いつも通り女郎蜘蛛凍らしちゃって」
「え、えちょ、無理かも……でありんす……」
「は?」
次の瞬間、女郎蜘蛛がビシャっと口から糸を吐いてきた。
「っく……」
銃夜はその糸をかわし、フリーデンは防御魔法で自身を防御する。
しかし、ユキヒメはというと、そのまま糸に巻き付かれて女郎蜘蛛によって回収されてしまった。
なんと、女郎蜘蛛は既に蜘蛛の巣を形成していたようで、ユキヒメはそこに縛りつけられる。
「なにしてんの?」
銃夜は真顔でユキヒメに冷たい視線を送る。
すると、フリーデンが、
「違いますよ。ジューヤさん。ユキヒメさんはわざと、捕まったんですよ。あーやって捕まったフリをして一気に氷魔法です!」
「あーなるほど。頑張れーユキヒメぇー」
「そうです!頑張ってください!ユキヒメさん!」
そんな、熱い声援を送られているユキヒメだが、そんなのは全く予想外、媚薬の効果で思考力が低下し、普通に捕まっただけである。
(やばい……っく…糸でアソコがこす…れて…はぁはぁはぁ……)
ユキヒメは氷の女王。あくまでも、氷属性なのだが、今はまるで、火属性のように体中が火照っている。
女郎蜘蛛の糸拘束による締め付けでユキヒメの事態は悪化。
しかし、そんなことはお構い無しの女郎蜘蛛。
どんどん糸で拘束し、遠慮なく締め付けていく。
そんなやり取りを下で見ていた銃夜とフリーデンは「なんか、やばそうじゃね」と、とうとう女郎蜘蛛に攻撃を仕掛けることにした。




