第34話 アインハイト
その後、銃夜達はランバートに報告を終え、まだ、魔王軍が攻めて来るかもしれないので少しの間、アインハイトに滞在させてもらうことにした。
ヘリルスにはランバートから報告が入っているので、ゲミュートは今頃さぞ悔しがっているだろう。
宿はアインハイトの王様であるランバートにけっこういいところを借りることができた。なんでも、王宮の中にあってめちゃくちゃ広い。しかも、銃夜とユキヒメ、フリーデンそれぞれ3部屋も借りることができた。
そして、銃夜は少しの間、大好きな猫耳で溢れているアインハイトの街でのんびりすることにした。
「いやー猫耳マジ最高ー」
「いや、だからジューヤさん!それ、めっっっちゃキモいですからね!!」
「はっはっはっキモくてけっこう。あっははははは!!」
「もう!ランバート様から報酬金をもらったんで、ちょっと調子に乗り過ぎではありませんか?!!」
少し前のことである。
「ランバートさーんデュラハン倒しやしたぜーー!!」
「ふっ!!」
「ぐがっ!!」
ここで、再びフリーデンの肘が銃夜を炸裂した。
フリーデンはランバートに聞かれないように小声で喋る。
「だから、ジューヤさん!他国の王様に無礼のないようにっ!!」
「ええええっ!!!?もう、終わったのですニャン?」
「まぁね、聞いてた通りっしょ。俺達、ヘリルスでも、指折りの冒険者なのでっ」
「やはや、なんと礼をしたら良いか。……あっ…そうだっ!」
ランバートはそう言って、執事のトーマスを部屋に招き入れた。
「トーマスっ!この者達に報酬金を、そして、アインハイトを案内するのだっ!それから、この者達がアインハイトで金銭的やり取りを行う際は、全額無料ということにしてくれっ!ニャンっ!!」
「え!?まじで!!!」
執事のトーマスは、ランバートにひざまずきながら、「承知しましたっ!ニャン!ランバート様っ!!」
と言って、銃夜達を案内する。
まず、最初に訪れたのは、アインハイトの冒険者ギルド。
「こちらが、冒険者ギルドでありますニャン」
トーマスは銃夜達に丁寧に接する。
「なるほど、ヘリルスのとあまり変わらんな。変わった点があるとすればキャットっ!それだけだっ!」
そして、次に案内されたのは、鉱石の商店だ。
「こちらは、鉱石を売っている店です。ルビーやトパーズなんかはとても美しく輝いておりますニャン」
「おー!!このラピスラズリきっれぇい!!」
今度はカフェに向かう。
カフェに着くと、「いらっしゃいませニャン」と猫耳の店員さんが迎えてくれた。
「おおっ!!実質猫カフェ!!」
その次はアインハイトの中心にある広場。
「こちらが広場ですニャン」
「おお!!噴水の水がきれいっ!!飲めそうだっ!!!」
そして、最後は、酒場にやってきた。
「こちらが、酒場、です、ニャン」
明らかにトーマスは疲労している。
それは、銃夜達も同じである。
ユキヒメとフリーデンなんかはすでに酒場のカウンター席で頭からぶっ倒れている。
そんな疲れきったトーマスと共に、銃夜は酒を飲んでいると(銃夜は20歳、そして、ヘリルスやアインハイトでは17歳から酒が飲める法律となっている)酒場のドアが勢いよくドンッと開けられた。
酒場に入ってきたのは全身を青い毛で覆われた男だった。
例によってここはアインハイトなので、猫人だ。
顔は猫というかトラに近く、もの凄く体が大きい。
さらに、その男の左目に刀で斬られたような跡があった。
歴戦の猛者という言葉が似合いそうな風格を持っている。
その男はズケズケと銃夜達の前に立つ。
「よせよ、俺は今とても疲れている」
銃夜の言葉を無視して男は話始める。
「噂は聞いたぜ。魔王軍幹部のデュラハンを一瞬で葬り去ったらしいじゃねぇか」
「そんな噂どこから聞いてきたんだよ。それと、お前、語尾に『ニャン』を忘れているぜ」
「はっはははは面白いなお前、俺はこの国に戻って来るのが久しぶりでな『ニャン』を忘れていたよ」
「はっはは忘れていてよかったよ。その形で『ニャン』なんて言われたらこっちもどう反応していいかわからなくなってたところだぜ」
「はっははは―――」
男は急に銃夜が座っていた机をバンッ!と叩いた。
「勝負だ」
「はっ、急に何を言っているんだ?」
「デュラハンなら本来俺がやるはずだった。が、少し、この国に戻って来るのが遅くなってな」
「何が言いたいんだ?結論を最初に述べた方が少しは賢く思われるかもなぁ。猫ちゃん」
「お前の力量を測りに来た」
「へっ俺に戦うメリットがないぜ」
「金だ」
「ああ?」
「お前が勝ったら金をやると言っているんだ」
「いくらだ?」
「なんで、そんなこと言わなきゃいけねぇんだ?勝つのはどうせ俺なんだから言うだけ無駄だろ」
「ああ?お前、頭沸いてんのか?」
「表だ。来い」
「ちっ、死んでもしらねぇぞ」
そう言って、銃夜は自分の席を立ち、男と共に外へ出る。
外はもう夜なので人がいない。
ユキヒメとフリーデン、トーマスは酒場で酔いつぶれている。
つまり、二人の戦いに邪魔は入らない。
両者が向かい合って位置につく。
月が雲から完全に顔を出した瞬間2人がそれをあらかじめ認識していたかのようにスタートした。




