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第18話 兄妹

 さて、ルーナがフランメンと戦う事になったが、ことの経緯は銃夜とルーナが別れた日まで遡る。


 ルーナは銃夜達と別れた後、馬を馬宿に戻し、騎士団があるロワ区へと向かった。


「す、すいませーん!只今戻りましたー!」


「おお!ルーナじゃないか!今まで何処にいたんだ?」


 声をかけたのは騎士団の同期であるネーベルという紫色のポニーテールの女だ。

 ネーベルは入団から仲良くしてくれた唯一の友達だ。


「ネーベル!もぉ、調査中においていかないでよ」


「……」


 などと喋っていると騎士団長のフリューゲルからルーナは団長室に向かうようにアナウンスがかかった。

 ルーナはフリューゲルの元へ向かう。


 ◇


 フリューゲルはヘリルス王国最強の部隊、魂の守護者(ゼーレンヴェヒター)の騎士団長である。

 最強部隊というのだから団長もそれにふさわしい人でなくてわならない。

 フリューゲルの実績はまさにチート級だった。

 幼少期、フリューゲルはわずか9歳にして既に剣術をマスターし、15歳で剣聖になる。

 王様にも認められ、17歳で団長に抜擢。

 それから、3年間団長を続けており、魔族の討伐数も最多。市民から圧倒的信頼を獲得し、勇者候補にもなっている。

 そして、現在、フリューゲルは20歳である。


 ルーナはコンコンと団長室の扉をノックした。


 しばらくして、中から「入れ」とフリューゲルの低い声が帰ってきた。

 ドアを開くと、フリューゲルはルーナに背を向け椅子に座っていた。

 そして、明らかにフリューゲルより歳上の部下が両サイドに二人立っていた。


 白いローブに身を包み、銀色に髪の色。キリッとした目つき。腰には剣が備わっている。

 その様子はまるで、自分自身のチートを自覚しているような堂々としたたたずまい。


 そんな最強チートな団長は座っていた椅子をルーナの方向に回転させ、重い口を開いた。


「ルーナか。なぜ戻ってきた?」


 この時、ルーナは言葉の意味を理解できていなかった。


「へ?」


 と間抜けな声をフリューゲルに向ける。


「なんだ。気づかなかったのか。流石は無能だな」


 フリューゲルはルーナを罵倒する。


「と言いますと?」


 天然なルーナはまだ気づかない。


「ふっ、呆れた。だからお前は鈍いんだよ。結論から言おう。お前はこの騎士団には必要ない。だから、あの日お前を追放したのだっ!」


 そして、ルーナは初めて理解する。あの日自分が偶然はぐれたのではなく意図的なものだったということを。


「そ、そんな私はこれからどうすれば良いんですか?」


「そんなものは知らん。その辺で野垂れ死ねばいい」


 しかし、ルーナはフリューゲルに訴えかける。


「私は無能なのですか?」


「はぁ〜お前のそういうとこだよ。人の話は聞かないし剣術の腕は上達しないし稽古だって遅い。はっきり言ってこの国のお荷物だよ。最強部隊と言われる魂の守護者ゼーレンヴェヒターの風上にも置けない」


「では、私に一つチャンスをください」


「何?」


「このお願いはフリューゲルではなくお兄様として聞いてください」


「ほう、兄としてか」







 昔、ある平凡な家庭に兄妹が生まれた。

 ルーナとフリューゲルのことである。

 生まれた後二人はすくすく成長していったが、二人の間には一目瞭然、圧倒的実力の差があった。まさに、天と地の差である。


 二人の母親はルーナを産んですぐに死んでしまった。

 二人の母親はかつて、ヘリルス王国で初代剣聖として崇められていた。

 故に、二人の父親は亡き母を超えてほしいと剣術や魔術に対して強いコンプレックスを持っていた。


 そんな父親の教育はどんどんスパルタになっていく。そのプレッシャーをはねのけるフリューゲルと毎日どこかに傷を作っているルーナ。

 フリューゲルは毎日ぎゃん泣きしているルーナを気にも止めなかった。

 仲が悪いというわけではなく、まるで赤の他人のような振る舞いをみせていた。

 そして、父親は14歳のフリューゲルを騎士団に推薦し、わずか3年で史上最年少の騎士団長になったのだった。


 一方、ルーナは父親の教育を受けている。どうやら、強いコンプレックス故、父親はどうしてもルーナを騎士団に入れたいらしい。

 訓練兵よりもきつい特訓を強いられていたルーナは既に精神がまいっていた。

 だが、ある日、ルーナは急激な成長を遂げる。

 それは一瞬のことだった。


 いつも通り父親と剣を使って一対一で戦っていたときだった。

 ルーナに向かって剣が振り下ろされた瞬間、ルーナの右手は既に動いていた。

 父親が放った斬撃を刀身で防ぐ。そのまま、剣を弾き、父親の剣は宙を舞う。


 驚き、尻もちをついてしまった父親に対し、刃を向け、チェックメイト。


 その様子はまるで母のような剣術だったとその時、父親は思う。

 面影のようなものを感じていた。


 そして、この出来事を契機けいきにルーナの騎士団への推薦を行うのだった。







 そして、現在ルーナの願いを聞いているフリューゲルは考え込み、やがて答えを出す。


「そうだルーナ、フランメンという大罪人を知ってるか?」


「いいえ、存じ上げていません」


「はぁ〜」とフリューゲルはため息をつく。


「フランメンは大罪人だ。盗み、強姦、拷問、殺人。しまいにはエンゲル様をも殺害しようとした。」


 エンゲルとはヘリルス王国の王様のことだ。


「まぁ、そんなとこだ。そして、そいつの処刑をする予定があったんだがお前がやれ。しくじったら今度こそこの兵から抜けてもらう」


「はいっ!」


 ルーナは敬礼のポーズをとる。


「処刑方法はこちらで決める。そうだな―――では対戦形式だ。闘技場でフランメンとお前のタイマン勝負。デスマッチだ」


「デスマッチ……」


 ルーナは小さくつぶやいた。


 それからルーネは自室に戻り、窓から見える星空を眺めながらフランメンとの対戦の日を待った。



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