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第14話 恐怖心を捨てろ!

 時刻19時23分。皇銃夜、アドルフ、トゥインクル=シャイナーはバヘ村に到着する。


 予定より20分も遅くなってしまったのは道中

 のモンスターとのエンカウントが主な原因だ。

 モンスターの一体一体はそれほど脅威ではなかった。が、トロールの大群に出くわしてしまった。

 中にはレッドキャップという残虐なトロールもちらほらといた。これも『夜』という環境の影響なのかもしれない。


「結構遅れちまったけど大丈夫か?」

 と、アドルフがつぶやく。


 20分という時間の中で冒険者達はどれほどの成果を上げているのだろうか。

 もうとっくのとうにゾンビ共は一掃されているだろうか。


 銃夜、アドルフ、シャイナーはバヘ村の入口までやってきた。

 村は既に半壊していて、かつての面影すら薄く感じる。

 家々が炎の海に呑まれ既に灰と化している。

 入口に一番近い家の中から


「ゔ、ゔぅぅぅ」


 という唸り声が聞こえてきた。


「なんだ?」と、銃夜は家のそばまで近づいてみる。

 が、何か異常な空気を感じ取った銃夜はその家に向かっていた足をピタリと止めた。

 家の入口にあった藁のようなものでできたカーテンがザザザと幕を開ける。

 銃夜はエターナルライフルを構え、アドルフとシャイナーもそれぞれ武器を握り、警戒態勢に入る。

 そして、いよいよ正体が判明した。そいつはボロボロの服を着用し(争った痕跡あり)茶色っぽい緑色というなんとも言い表せそうもない腐ったような肌の色、ボサボサの髪の毛、常に向いてる白目。さらに、腐卵臭のような異臭も辺りに撒き散らしている。


 今回のターゲット、『ゾンビ』である。


 銃夜は即、エターナルライフルをゾンビに照準を合わせ、トリガーに手をかける。

 しかし、銃夜はそのトリガーを引くことができなかった。

 なぜなら、それはかつて祭りを一緒に楽しんだ村の住人だったからだ。

 おそらく、ゾンビの襲撃によって負傷し、噛まれ、ゾンビになり変わったのだろう。

 その村人の名前は知らないし好きな食べ物も知らない。が、銃夜はそのトリガーを引くことができなかった。

 モンスターを倒すのとはわけが違う。銃夜の中では明確な殺人。

 もし、ここで、トリガーを引いてしまったら後には戻れない気がしたからだ。

 このクエストを受ける前、覚悟を決めたと思い込んでいた。

 が、実際は、なんにも変わっていなかった。

 力は強くても、レベルが高くても心は弱いままだった。

 オーク戦やサーペント戦の時とは全く持って変わっていない。

 人間の精神は思った以上に“弱かった”。


 銃夜が一体のゾンビに手間取っていると、シャイナーが、


「金貨一枚っ!一攫千金っ!!」


 と、言ってトゥインクルソードでゾンビの体、斜めに斬撃を与える。

 ゾンビの傷口から赤色の血が吹き出した。

 そして、そのゾンビは倒れる。

 血液が赤いことからまだ、ゾンビ化の進行は乏しかったのだろうか。

 その光景が銃夜にとってはとても厳しかった。

 まるで、幼児にしてサンタさんの正体を知ってしまったかのような絶望だった。

 裏切られたそんな気分だった。

 いや、違う。裏切ったのは銃夜なのかもしれない。


「ふうっ、これで一体か。楽勝だな。」


 と、シャイナーは膝を地につけている銃夜を見下ろしながら、

「おい、お前何やってんだよ」


「………」


 遠くで見ていたアドルフがズカズカと銃夜の前に立つ。


「俺、言ったよな。来るなって。でも、お前は来た。もう、引き返せねぇんだよ。俺はもう助けねぇ、が、まだ村の入り口だ」


 アドルフは人差し指で村の出口を指し、


「戻れ」


 と、銃夜を突き放した。

 続けて、


「もう一度言うが、俺はこの先助けねぇぜ。それに時間は無限にあるわけじゃねぇ。五秒だ。五秒で選択しろ。生きるか死ぬかの選択だ」


 さて、五秒という短すぎる選択を強いられた銃夜だったが、既に答えは出ていた。


「ああ、行くよ。それにいざとなれば切り札を出す」


 まだ、生きている人がいるかもしれない。村人達の怒りを全て引き受ける。

 冒険者ギルドにいた時の覚悟の延長線がようやく今断たれたような気がした。


「そうか、死ねっ」

 と、アドルフは銃夜の意思をしっかりと受け取った。


「では、銃夜、アドルフそろそろ。」


 と、シャイナーは村の奥の方に人差し指を向け、ゾロゾロと出てくるゾンビの存在がようやく銃夜によって観測された。


 ゾンビ達はざっと十体。一体一体がさっきのゾンビのように「ゔゔぅ」と唸りゆっくり近づいてきている。


 銃夜、アドルフそして、シャイナーは横並びで各々の武器を構え、ゾンビ達を迎え撃つ。


「「「さっ来いっ!!」」」


 まず、銃夜が鑑定スキルを発動させる。


【名前】 ゾンビ

【種族】 アンデッド

【レベル】 36

【装備】 なし

【攻撃力】 183

【防御力】 99

【魔力】 0

【スキル】 繁殖、噛みつき、腐化


「やはり、一体一体は弱い」


「だが、数の暴力があってだな……」

 と、シャイナー。


「まあ、なんでもいいけどよぉとりあえずいっぱい殺す」


 アドルフ、シャイナーは一斉にゾンビに斬りかかる。


 銃夜はその場で背を低くし、エターナルライフルをスナイパーライフル状態で装備する。

 そして、二脚架を地面に設置し、スコープを覗く。

 一体のゾンビに照準を当て、村人達の怒りと悲しみを一つの弾丸に込めるように引き金を引く。

 スキル【絶対命中】が発動しているので、吸い込まれるようななめらかな弾道を描き、ゾンビの頭を貫いた。

 ヘッドショットを食らったゾンビはそのまま後ろに倒れる。ゾンビに意思や記憶があるかは分からないが、あったとしても自分が絶命したことには気づかないだろう。


 やはり、元々人間ということを考えると心が痛む。

 が、そんな思いを押し殺し、次のゾンビにまだ湯気がでている銃口を向けた。


 一方、アドルフとシャイナーはというと、それぞれの武器で応戦する。


 アドルフは自分で制作したと思われる大男の身の丈に合うような大きな斧を両手で二、三体のゾンビに振り下ろす。

 当然元々防御力がないゾンビはそんな攻撃を食らったらひとたまりもない。

 最早、原形を留められていない。緑色と赤色の血液が入り交じり、ぐちゃぐちゃの粉々になってしまっている。まるで、吐瀉物のように。

 アドルフの真横から襲ってきたゾンビに片手を向け、「ダート」と、土魔法を発動させる。

 アドルフの手のひらから土の塊(コンクリートのように硬い)を飛ばす。ゾンビの顔面に命中し、頭が崩れ、地面に落ちる。


 シャイナーは自前の黄金に輝いたトゥインクルソードを大きく振りかぶって襲ってきた一体のゾンビを一刀両断、ゾンビの脳天を真っ二つに切り裂いた。

 切り裂かれたゾンビは濃い緑色の血液と腐った脳みそを垂れ流し地面に向かって一直線にぶっ倒れる。

 次に、両サイドから挟み打ちのように二体のゾンビが「ゔゔぅ」と唸りながら襲ってきた。

 が、これにもすぐ対応する。

 シャイナーはその場でトゥインクルソードを持ちながら体を一回転させ、二体のゾンビの体を上半身、下半身で切断した。

 シャイナーはトゥインクルソードの刃についたゾンビの穢らわしい血液や汚れをポケットから出した真っ白なハンカチで静かに拭う。


 襲ってきたゾンビ十体をわずか60秒で鏖殺。


 銃夜はスナイパーライフルの胴体を肩に掛け、

「さっ次だ。奥に進むぞ」


 頷くアドルフとシャイナー。


 いつの間にか銃夜の中にあった恐怖心は消えていた。あるのはただ、怒りと使命感だけ。


 そして、村の奥に進む銃夜一行はある光景を目の当たりにする。




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