第13話 緊急クエスト
アドルフと一度冒険者ギルドに戻る。
「やはりあまりいいクエストがないな」
と、銃夜とアドルフはクエストボードの前に立っていた。
すると、ここで、受付嬢が騒ぎ立てる。
「き、緊急クエストが来ましたっ!」
銃夜を接客してくれた金髪ポニテの受付嬢は一枚の紙を持ってギルド内を走り回っていた。
一枚の紙というのはクエスト用紙のことである。
イレギュラーな展開にギルド内は一気にシリアスな雰囲気に包まれた。
「緊急クエストだって」「なんだなんだ」「初めてじゃないか」などという声がギルド内を埋め尽くした。
「今いる冒険者は緊急クエストを受信してもらいますっ!一大事ですっ!ご協力お願いしますっ!」
と、銃夜を接客した金髪の受付嬢は呼びかける。
受付嬢はクエスト名『ゾンビ襲来!!』という雑なクエスト名の紙をボードに貼る。
それほど忙しいことがわかる。
クエストの詳細
近くの村でゾンビの被害が報告されました。
村の名前は『バヘ村』。
冒険者は直ちに急行してください。
クエスト難易度A+
とのこと。
バヘ村と聞いて銃夜は一気に青ざめ、全身に鳥肌が立つ。
それを心配したアドルフは、
「おい!ジューヤ!顔色が青いぞっ!平気か!?」
と、声をかけるも銃夜の耳には届かない。
銃夜はガタガタと足を震わせている。
この日の気温は寒くないのに震えが止まらない。
再び、アドルフは「おいっ!」と銃夜を殴りつける。
床に打ち付けられた銃夜は「うっ!!」と、ようやく正気に戻ったらしく、
「悪い」と一言口にした。
受付嬢は叫ぶように、「冒険者の皆さんにバヘ村の地図を渡します!」と言った。
緊急クエストはどうやら冒険者全員強制参加らしく、別の区でも同じようなことが起きているらしい。
バヘ村の地図を渡された銃夜は受付嬢の手を振り、
「いらねぇ」と言って、自分で持っている地図を出す。
この地図はラウルさんから貰ったものだ。
その地図をくしゃくしゃになるまで握りしめる。
受付嬢は「もう持っていらっしゃったんですね」と言い、すぐに次の冒険者のところへ飛んでいってしまった。
銃夜は恐怖する。
仲良くしてくれた村の住人達の気持ちを考えることに。
やがて、銃夜は立てなくなり、ボードの前に座り込んでしまった。
「ゾンビか。おりゃー大昔にゾンビの大群討伐に駆り出されたことがある。」とアドルフは銃夜に話し始める。
「その時は悲惨だった。一緒に組んでいた仲間達が次々と死んでいき、俺はただ、逃げることしかできなかった。
だが、俺はここで死んでいった仲間達の無念を晴らす。敵討ちみたいなもんだ」
アドルフは銃夜の肩に手を置く。
「ジューヤ、そんな半端な気持ちならこのクエストは降りろ。そして、冒険者なんかやめちまえ」
アドルフの言葉は銃夜の心を一直線に貫いた。
(そうだよな。こんなに半端じゃラウルさんや村の皆に申し訳ないよな。覚悟を決めろよ!俺っ!)
銃夜は両手で自分の頬を両側からバチンと叩き、自身を奮い立たせた。
「アドルフよ。俺は半端な気持ちを一つにしたぜ!」
「お、おうそりゃよかった」
(半端な気持ちを一つってどういう……覚悟できたってことでいんだよな?)
既に夕方の5時をまわっていた。
ヘリルスからバヘ村へ歩いて行くとなるとつくのは7時であることが予想される。
天気は曇りで太陽が隠れている。曇天の空。
これから良からぬことが起こる前兆なのかもしれない。
受付嬢が冒険者達をヘリルスの門の外へ誘導し、一人ひとりのギルドカードを確認し、クエストを受信させていく。
銃夜とアドルフの番がやってきた。
受付嬢の「頑張ってください!」という熱い声援が再び、銃夜のハートを持っていきかけた。
このクエストの受信数はなんと100人超え!
ダガー区以外の他の区の冒険者達もやってきているが、やはり、全員参加とはいかない。ビビってクエストを降りてしまった者が少なからず存在している。
このクエストはそれほど過酷ということを皆理解している。
そして、全員がクエスト受信を完了し、各々で四人ぐらいのパーティーを組んで少人数の班ができ始めていた頃。
「君達ぃー!この僕を使う気はないかい?」
と、男の声が銃夜達に向けられた。
そこにいたのは金髪ロン毛の青色の瞳で全身金ピカの装備をしたおそらくナルシスト野郎が立っていた。
そのナルシスト野郎の装備はこの重い空気を照らす太陽かのように辺りを照らしすぎていた。
照らしすぎるが故に既に周りから避けられている。
間違いなくここにいる100人の中で一番目立つやつである。色んな意味で。
「ないです」
と、銃夜はもちろん速答する。当たり前だ。こんな変なインチキ野郎とは関わりたくはない。関わればおそらく破滅する。
「君達ぃー!この僕を使う気はないかい?この僕をだぞ」
「同じセリフを言うやつにまともな奴はいないって昔おばあちゃんに言われてな。ってことで」
といって金髪野郎から離れていく。
だが、離れてもなお粘着してくるのがこの金髪野郎である。
さらに、何度も同じセリフを繰り返していてウザかったので一旦話だけ聞くことにした。
「なんだよ!お前あれだろ女子好きだろ。この班には見ての通りむさ苦しい男しかいねぇえよとっとと女子がいる班とかに行けよ!!」
と、銃夜は目の前にできている女子が多い班に指をさし、誘導する。が、
「いや、無理だ。僕は汚れなき童貞だ。」
『童貞』というワードを銃夜は耳に留めると、
「ようこそ金髪君」
と、すぐさま手のひら返しで彼を班に入れることにした。
「では金髪童貞君。自己紹介をお願いします」
金髪童貞君は奇抜なポーズをとり、
「僕の名前はトゥインクル=シャイナーだっ!シャル区出身だっ!」
次にシャイナーは腰にある赤や青色の小さな宝石の装飾を施してある黄金の鞘から目が痛くなるほどのキラッキラした剣を取り出す。
「使用武器はこのトゥインクルソード、能力は殴った物を金ピカにするのっさ!」
「な、なるほど?」
呆れる銃夜。もう見たまんまである。
「おりゃあアドルフ、ダガー区だ。シャル区って言えば中心部のロワ区から2番目にちけぇとこじゃねぇか。金持ち貴族か?よろしくな。へへ」
「俺、皇銃夜な。ダガー区で銃夜って呼べ。早速だが現地へ急ごう。作戦は移動しながら立てる。目的はゾンビの抹殺と報酬だ」
報酬というのは先程受付嬢が「ゾンビ一体討伐につき、金貨一枚報酬としてご用意いたします」とクエスト受信時に言っていた。
ゾンビ一体に対して金貨一枚はでかすぎる。
無事に帰ってこれたらの話だが。
「じゃあまず移動する前に俺の鑑定スキルでお前らを調べる。その方が作戦は立てやすそうだからな」
「わぉ!ジューヤは鑑定スキルがあるのかいっ!?」
【名前】 アドルフ
【年齢】 53
【種族】 人間
【性別】 男
【レベル】 109
【職業】 武器職人
【装備】 戦斧(怪)
【称号】 戦士、鍛冶士
【攻撃力】 469
【防御力】 341
【魔力】 300
【スキル】 魔剣鍛冶、筋力強化、土魔法
【武器スキル】 斧術
銃夜はシャイナーに照準を合わせ、続けて鑑定を行う。
【名前】 トゥインクル=シャイナー
【年齢】 24
【種族】 人間
【性別】 男
【レベル】 77
【職業】 冒険者
【装備】 トゥインクルソード
【称号】 強運
【攻撃力】 488
【防御力】 124
【魔力】 500
【スキル】 黄金化、幸運、光魔法、火魔法
【武器スキル】剣術
「アドルフは結構バランス型だな。そして、シャイナーは攻撃と運に極振りしてる感じだな」
チックタックと時間が流れていく。
「じゃもうシャイナーの囮作戦な。はい、決定ぇー!」
と、血液型はB型の銃夜。
パチンとシャイナーが指パッチンを鳴らす。
「グッド!僕には強運スキルがあるし、何より目立つことがすこなんだよっ!最高のステージじゃないかっ!」
「なんでもいいが、早く討伐に行かないと村が大変なことになるぜ」
と、アドルフが銃夜達を急かす。
「おっとそうだな。おい、シャイナー行くぞっ!」
そして、バヘ村へと移動する。その間シャイナーのウザったらしく長い自慢話(おそらく嘘)を無理矢理聞かされたので、銃夜達の耳を通り過ぎて、適当に相槌を打つだけになっていた。
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