第82話 依頼
カイザーギルド本部にある応接室。
そこでは今、ギルドマスターである山田太郎と、副マスターである鳳英知がある客人を迎え入れていた。
「ようこそおいで下さいました。ミスター劉。それにミスター陳」
相手は中国大手ギルド所属のSSランクプレイヤー、劉咬犬と陳影沈。
どちらもレジェンドスキル持ちのプレイヤーだ。
「立ち話もなんですので、どうぞお座りください」
山田に促され、劉と陳がソファに腰掛けた。
そしてそれに続いて山田と鳳が座り、その場にいた秘書が飲み物を全員に配る。
「まずは……ご依頼を引き受けてくださり、感謝を申し上げます」
「別に感謝する必要はない。こちらにも利があっての行動だからな」
二人はカイザーギルドの依頼を受け、日本へとやって来ていた。
ただ仕事を依頼されただけなら、彼らはわざわざ異国からの依頼を引き受けたりはしなかっただろう。
そこに明確な自分達の求める利益があったからこそ、劉と陳は依頼を引き受けたのだ。
そして彼らが求める利益とは――
「前置きは良い。まずは確認させて貰うが……本当にダンジョン内でなら接触は可能なのだろうな?」
「もちろんです。うちのギルド員達が、二度接触する事に成功していますんで」
――顔悠の持つ、レジェンドスキルのデメリット突破方法だ。
世界中のギルドが顔悠に接触を試み、そのことごとくが失敗に終わっていた。
魔竜アングラウスの張る結界が、彼への接近を阻んでいるためだ。
最強クラスの魔力を持つエリスですらその結界を解除できなかった事からも分かる通り、今の人類に彼女の張った結界を解除する事は不可能。
そのため、どこも指を咥えて見ている事しか出来ない状態となっている。
だがカイザーギルドは、偶然からその抜け穴を見つけ出した。
ダンジョン内でなら、顔悠に接近できるという抜け穴を。
彼らはそれを利用して大々的にその捕獲に乗り出したのだが、失敗に終わってしまっていた。
顔悠の実力を見誤っていたためである。
百々目鬼というイレギュラーの乱入(カイザーギルドはその事実は知らない)があったとはいえ、もしそうでなくとも作戦は失敗していただろう。
カイザーギルドは捕獲失敗に伴い、顔悠の強さを最悪SSランク相当にあると判断。
その捕縛難易度の高さから、外部の人間に協力要請を出した。
それがSSランクプレイヤーである劉咬犬と、陳影沈である。
「ふむ……すぐにばれる嘘を吐く意味もないか。それで?決行はいつだ?」
「三日後、姫ギルドのSSランクダンジョン攻略が始まります。顔悠はそれに万一の保険として随行する様ですので、その時を狙おうと考えています」
姫ギルドのSSランクダンジョン攻略は、周囲に喧伝されているのでカイザーギルドでなくとも知っている事だ。
だが顔悠が参加する事実。
そしてそれが自力でダメだった場合の保険である事を、外部の人間で知るものは少ない。
にも拘らず山田がそれを知っているのは、姫ギルドの中に情報を流すスパイが紛れ込んでいるからだ。
「まさか我々に、姫ギルドも始末しろと言うんじゃないだろうな?」
「お二方には、顔悠の捕獲に注力して頂いて結構です。姫ギルドの方は私達の方で処理しますので」
姫ギルドは近頃力を増してきており、カイザーギルドとしては目障りな存在になりつつあった。
そこで今回、顔悠捕獲の依頼を引き受けた二人——正確には陳影沈のレジェンドスキルを使って、奇襲をかける算段をカイザーギルドは立てていた。
一石二鳥狙いという訳である。
「我々の目的は顔悠の持つ情報だ。邪魔にさえならないのなら、ギルド間の争いは好きにすればいい」
「ご理解感謝します。ボス戦で仕掛けるつもりですので、失敗する事はまずないかと。どうかご安心ください」
失敗の心配など微塵も感じていないのか、山田と鳳の顔は笑顔である。
実際ボス戦で背後から奇襲を仕掛ける事が出来るなら、容易く殲滅する事は可能だろう。
――但し、それは本当に奇襲を掛けられればの話ではあるが。
彼らは知らない。
顔悠の側には、小細工など全く通用しない化け物が潜んでいる事を。
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