第60話 便利
目覚めたぴよ丸は相変わらず『アイラブマヨネーズ』だった。
見た目はともかく、進化で消耗したから腹ペコだったのだろう。
ぴよ丸は変身を解いて狂った様に――まあいつもの事だが――マヨネーズを平らげる。
因みに、変身を解いたのは変身中は大量の魔力が消費されてしまう為だ。
そして食事を終えたぴよ丸と融合した俺は、新スキルのグレートフォームチェンジ。
略して変身を早速試してみた。
『グレートフォームチェンジ』
「完全に別人だな」
スキルによって俺の姿が変わる。
姿見で確認すると、見知った我が身からは完全にかけ離れた見知らぬ女性の物へと変化していた。
『称えよ!主にマヨネーズで!』
「さっき腹いっぱい食わせただろうに……どんだけ喰う気だよ」
飲ませたマヨネーズは20本以上。
本当に食いしん坊な奴である。
『マヨネーズは別腹じゃい!』
そもそもその別腹にしか物入れてない訳だが?
「マヨネーズはまた後だ。それより、もっと他の姿には変化できないのか?」
『ワシに不可能はない!グレートフォームチェンジ!』
再びスキルが発動する。
すると今度は俺の視界が一気に低くなっていく。
全身からは黒い毛が生え、その姿はアングラウスに似た猫へと変わる。
「サイズが違う様なのにも変われるんだな。それと、機能的なのも使えるっぽいな」
やり方がなんとなく分かったので、両手の指から猫特有の鋭い爪を出してみた。
これなら姿形だけではなく、本物の猫の様に動く事も出来そうだ。
とは言え、嗅覚や視覚はそのままっぽいので、犬になって匂いを追跡するとかは無理そうだが。
『称えよ!マヨネーズで!』
「あーはいはい。それよりもっと小さな生き物になれるか?蟻とか」
『任せんしゃい!グレートフォームチェンジ!』
更に視界が低くなる。
それもすぐ近くにいたアングラウスを見上げる程に。
低すぎて鏡も見えないので、取りあえずジャンプして姿見に自分の姿を映して確認する。
「って!ノミじゃねーか!」
鏡に映った姿は蟻ではなくノミだった。
随分とジャンプしやすいなと思ったら、まさかのだよ。
『誤差じゃい!』
「いや全然別物だろう」
あってるのは小さい事と昆虫である事ぐらいだ。
「それが誤差なら、マヨネーズとケチャップも誤差レベルだぞ?今度から食事はケチャップでいいのか?」
まあ俺かみたら結構冗談抜きで誤差ではあるが。
『アイラブマヨネーズ!ノー!ケチャップノー!グレートフォームチェンジ!』
ジャンプして確認すると、今度こそ蟻に変わっていた。
まあノミに変われるなら蟻にもなれるのは明白なので、一々確認する必要性はなかったが。
一応。
「取り敢えず……蟻やノミの姿でも喋れるな。アングラウス、俺の声は普通に聞こえてるか?」
映画なんかで、小さくなると声も小さくなって相手に聞こえなくなるなんて設定がある。
それと同じ感じになってないかと、俺はアングラウスに尋ねた。
「聞こえているぞ。普通にな」
どうやら体が小さくなっても声の大きさはそのままの様だ。
「おいぴよ丸、元に戻してくれ」
『ラジャ!』
スキルが解かれ、元の姿に戻る。
そこで気づいた。
「そういや、服は着てる状態のままだな。て事は、変身の時服も一緒に変化してるのか」
体が小さくなれば服は自然と脱げる、もしくは埋もれる様な感じになる筈。
そうならず戻った時に着たままと言う事は、服もまた一緒に変化していたという事だ。
「取り敢えず……ダンジョン攻略を変身してやれば、この前みたいにカイザーギルドに絡まれる心配はないな」
現在の俺の能力じゃ、Sランクを相手にして勝つのは難しい。
早々遭遇する様な事はないとはおもうが、万一出会った時に変身してればこの前みたいに絡まれる心配はないだろう。
……取り敢えず、やり返すにしてももっと強くならんとな。
アングラウスの力を借りれば簡単ではあるが、それだと想像以上の大事になりかねないからな。
今は我慢の時だ。
「それに小さな虫になれるなら、色んな所に潜入とかも出来そうだし。なかなか便利な能力だ」
『称えよ!マヨネーズで!』
ぴよ丸はこれからも丸々と成長していく事だろう。
それだけは確信して言える。
あ、そういや幼女姿は別に太ってなかったな。
なんでだろ?
ま、どうでもいいか。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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