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第33話 新スキル

向かったCランクのダンジョンは、『草むら』と言う名のダンジョンだった。

ゲートを抜けると腰まである草が密集して視界一面に生えており、だだっ広い空間が唯々ひたすら広がっている。


「なるほど……こりゃ人気がないのも頷けるな」


このダンジョンは人気が無かった。


理由その1。

ここで出て来る魔物が全て虫型である点だ。


生息する魔物の体高は全て生えている草よりも低い。

そのため、草むらによって全ての魔物が姿を隠されている状態となってしまっていた。

しかもその殆どが待ち伏せ型。


つまり探索系の魔法やスキル、マジックアイテムでも無ければ、間違いなく奇襲を受ける事になるという訳だ。

しかも戦闘中も魔物の姿を覆い隠す草のせいで、ひたすら戦い辛くなってしまっている。

因みに、生えている草は火に強い耐性があるらしく、余程強烈な火勢でも無ければ燃やす事は出来ない。


理由その2は、360度広がる広い空間型のダンジョンである点だ。


周囲には目印がなく、特定の魔法やスキルが無ければ自分の位置を見失う事になってしまう。

しかもボスは徘徊タイプであるため、決まったゴールという物が存在していないと来ている。

探索しにくい事この上なしだ。


纏めると、奇襲されやすく戦い辛い。

更に、広くて何処に行けばいいかわからないダンジョン。

そりゃ人気がないのも当然である。


因みに、俺がここを選んだのは水溜まりと同じ理由だ。

人が寄り付かなきゃ、高確率でボスを狩れるからな。

ここでボスを狩ってさっさとランクを上げさせて貰う。


「探索頼む」


俺は背中から翼を生やし、猫の姿のまま飛行するアングラウスに頼んだ。

ボス位置の探索を。


魔竜には探索能力がある。

だからこそ、人間の世界にいた俺を見つける事が出来たのだ。


ここを選んだのは当然その能力ありきである。

何処にいるか分からないボスを延々探すとか、やってられないからな。


「ふむ、自分で探す気は0か」


「スキルがない俺が探すのは、完全に運任せだからな。そんな事してたらいつ見つかる事やら」


勘に任せて探すには無理がある。

ここは希少な探索系のスキルありきのダンジョンだ。


「運も実力の内なのだがな。まあいい」


アングラウスの眼が赤く光る。

スキル発動のエフェクトなのだろう。


「このダンジョンで最も大きな魔力の気配はあっちだ」


アングラウスの指し示す方向に俺は走る。

スタミナは【不老不死】のお陰で無限なので、疲れは気にする必要はない。


道中、草むらの中から虫型の背の低い魔物達に何度も襲われてしまう。

だが命が4つ使える今の俺ならCランクの魔物如き敵ではない。


適当に蹴散らしながら進んで行くと――


『ふおぉぉぉぉぉ!きたきたーー!!』


――ぴよ丸が唐突に奇声を上げる。


「何が来たんだ?」


どうせしょうもない事だろうとは思いつつ、俺は足を止めて尋ねた。


『進化の時じゃ!ワシの時代が来た!』


進化?

コイツ進化なんかするのか。


「マスター!奇跡の瞬間をその目に焼き付け、次代の生き証人になるがいい!!」


ぴよ丸が勝手に融合を解いて体から出て来きたので、俺はそれを片手でキャッチした。


「さあ!伝説の始まりじゃい!」


ぴよ丸の体が輝く。

そしてその丸っこいシルエットが――


丸々とした球体から、ヒヨコっぽい物へと変わる。


その状態を一言で言うなら。


「単にやせただけじゃねぇか」


「ふっふっふ、わかっとらんのう。ならば刮目してみよ!アルティメットブリンク!」


叫ぶと同時にぴよ丸の姿が消えた。


「——っ!?」


右肩に何かが乗っかる感覚。

視線を横に動かすと、俺の肩の上に偉そうに胸をはるぴよ丸が乗っていた。

どうやらぴよ丸は転移能力を手に入れた様だ。


「これがワシの新たな力じゃ!名付けてアルティメットブリンクじゃい!アルティメットブリンク!」


再度姿が消え、今度は左肩に。


「おおおおおお!アルティメットブリーンク!!」


今度は頭の上に。


「もういち……ど。アルティメットブリ……ブリ……むり……」


頭の上から転げ落ちて来たぴよ丸を俺はキャッチする。

三回が限界の様だ。

俺の手の中で、ぴよ丸が白目をむいてぴくぴく痙攣している。


このまま死んだりしないだろうな?


「世話のかかる奴だな」


アングラウスがぴよ丸に魔法をかけた。

恐らく回復系の魔法だろう。

どうやら魔竜は回復の魔法も使える様だ。


まああまり得意ではないのだろうが。

もし得意なら、俺との戦いでもバンバン使っていた筈である。

だが奴は使ってこなかった。

魔法を使って回復する手間と、受けるダメージが釣り合っていなかった証拠だ。


「ワシ!大復活!アルティメ――ほげっ!?」


回復した途端転移しようとして、アングラウスの足でぴよ丸は上から押さえつけられた。

まあこいつはほっとくと無軌道に能力を使うからな。


「転移したいなら悠と融合してからにしろ。それなら疲労で倒れる心配もないだろう」


「名案じゃ!マスター!さっさとミラクルドッキングじゃ!」


自分から勝手に融合を解いておいて、さっさととはこれ如何に。

本当に無軌道な奴だ。


『アルティメットブリンク!』


融合したぴよ丸が転移を使う。

すると俺の肉体が、元居た場所から10センチ程動いた場所に瞬間移動した。


「これが転移か」


『転移ではない!アルティメットブリンクじゃい!』


再び体が転移する。

こんども10センチ程。


『そしてマスターとワシの力が合わさった今!これはアルティメットを越えたアルティメット!ダブルアルティメットブリンクへと至る!アルティメットブリンク!!』


ダブルアルティメットって何だよ?

あと、ダブル要素速攻で消えてるぞ?


などと野暮な突っ込みはしない。

不毛なやり取りの相手をするのが面倒くさいからだ


『アルティメットブリンク!!』


ぴよ丸が転移を連続で発動する。

10回程続いた所で俺は口を開いた。


「なあ、もうちょっと飛距離出せないのか?」


ぴよ丸の転移は全て10センチ程だった。

一応尋ねてはみたが……


『ふふふ、いい質問じゃ!ハッキリ言おう!無理!!』


うん、だと思った。


「じゃあ移動には使えないな」


転移距離が長ければ便利な移動手段になったんだろうが、この距離じゃそれは望めない。


とは言え、戦闘ではたぶん役に立ってくれるだろう。

俺は不死身なので防御面では全く無意味なのだが――攻撃を回避する必要がないから――攻撃の補助としては悪くない筈だ。

転移距離的に死角を突いた攻撃なんかが出来ないとはいえ、それでもうまく使えばかなり役に立つはず。


まあ発動させるのがぴよ丸なので、上手く連携して使えるかって大きな問題が残るが。

そこはまあ練習次第か。


「まあ取りあえず、ピョンピョン飛ばれると鬱陶しいから無意味には使うなよ」


『マスター!この世に無意味なものなどない!!』


いや、ある。

少なくともぴよ丸の無駄転移は完全に無意味だ。


「悠よ。急いだほうがいいぞ」


「ん?なんでだ?」


「どうやらダンジョンボスが戦闘に入った様だ」


「マジか……」


ここのボスなら確実に遭遇できると思ってこのダンジョンを選んだというのに、完全に無駄足になってしまった。


「まあ急げば、また前みたいに混ぜてくれる可能性はある」


「また前みたいに?ひょっとして戦ってるのは……」


俺がボス戦に混ぜて貰ったのは、過去に一度だけだ。


「ああ。姫ギルドの奴らだ」


またかよ。

なんでかぶる?


まあダメ元で行ってみるとしよう。


『マスター!アルティメットブリンクの出番じゃな!』


「うん、余計な事はすんな」


走ってる最中にピョンピョン転移されてはかなわない。

下手したらすっころんでしまう。


「やったらマヨネーズ抜きな」


『ふぁっ!?』


俺はぴよ丸に釘を刺し、急いでボスへと向かうのだった。

『面白い。悪くなかった』

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自作宣伝
異世界転生帰りの勇者、自分がいじめられていた事を思い出す~何で次から次へとこんなにトラブルが起こるんだ?取り敢えず二度と手出ししてこない様に制圧していくけども~
異世界から帰って来た主人公が、ふざけた奴らを力で無双制圧して行く話になります。
最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
魔界で大魔王を倒して戻って来た勇者は、かつて転生者だった自分を育ててくれた侯爵家が没落した事を知る。これは最強男勇者が執事となって、恩返しとして侯爵家の復興に尽力する物語
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