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第109話 強化バフ

――『タワーディフェンス』東門。


東門の担当は、大和ギルドである。

その名がギルドマスターである大和猛の名から取られている事は、一目瞭然だろう。


大和猛は身長220センチに、体重150キロを超える筋肉質な巨漢である。

彼は発動タイプのレジェンドスキル【コング】の所持者で、タンカーとしての能力は日本、いや、世界屈指と評されていた。


【コング】は肉体が巨大化してコング――ゴリラっぽい姿になり、フィジカル、特に耐久面が大幅に上がるスキルとなっている。


デメリットは全身剛毛。

普段から長袖長ズボンを身に着けている大和だが、一旦服を脱げば見る者をその剛毛っぷりで圧倒するレベルの姿をしており、女性受けはあまりよくなかった。


「気合を入れろ!」


「「「「おーーーー」」」」


第一フェーズ開始のカウントダウンがアナウンスされ、前方に大量の魔物が出現する。

フェーズ開始前は魔物との間に光の膜が張られており、その向こう側では、魔物達が血走った眼で覚醒者達を睨みつけていた。


大和は号令を上げ、レジェンドスキルを発動させコングへと変身する。

コング化した大和の身長は5メートルを超え、もはやちょっとした巨人レベルだ。


「綾瀬!敵のレベルは!」


出て来た魔物は全て二足歩行の獣タイプで、その手には武器が握られていた。

数はおよそ50体ほど。

大和は鑑定能力をもつメンバーにそのレベルを確認させる。


事前にノーブルウィングから情報を得ているので、敵のレベルは実は分かっている事だった。


なら何故確認したのか?

イレギュラーが無いとは限らないからだ。

だから慎重な性格の大和は、石橋を叩く意味でレベルを改めて確認させたのである。


「敵の平均レベルは2500程です!」


『タワーディフェンス』は4つのフェーズに分かれており。

最初の攻撃はいわば、軽いジャブのような物だ。

そのため、敵のレベルもギリギリSSランク最低ラインしかない。


とは言え、その軽いジャブですら、日本のギルドで乗り切れるのは片手で数えられる程度だが。


「2500。情報通りだな。よし!作戦通りいくぞ!!」


大和ギルドの作戦はシンプルだ。

大和猛が【雄叫び】で全ての敵のターゲットを集め、他のメンバーが敵を落とすという物である。


“フェーズ1、スタート”


謎の音声によるカウントが0になり、そして光の幕が消えてなくなる。

と同時に、津波の様に押し寄せる魔物達。


「うほーーーーー!」


大和が前に飛び出し、そしてスキル【雄叫び】を発動させた。

その瞬間、魔物全ての殺意が彼へと集中する。


「かっかってこい!」


魔物達の全てが大和に向かって突っ込んで行く。

だが、並みの覚醒者ならそのままひき殺されそうなその怒号の突進を、彼は正面からガッチリと受け止めて見せた。

世界最高峰レベルのタンカーの強靭さを見せつけるかのように。


「ぐおおおおおおお!!」


「ぶおおおおおお!!」


「ははははは!こそばゆいぜ!」


突進を止められた魔物達だが、すぐさま手にした武器で大和を攻撃し始める。

だが、そのどれもが彼に大きなダメージを与えるには至らない。

そして多少のダメージならばギルド所属のヒーラーと、憂のアルティメットスキルで呼び出したヴァルキリーが瞬く間にダメージを回復させてしまう。


その姿は正に不沈艦。


「うほーーーーー!」


継続的な雄叫びによって、魔物は倒せない大和に攻撃を仕掛け続ける。

その間に、大和に群がる魔物達をそれ以外のメンバーが攻撃して処理していった。


「ふ、軽い軽い」


最初のフェーズに与えられた時間は30分だ。

その時間内に終わらせられなければ、次のフェーズが始まり魔物が追加されてしまう。

だがそんな心配は無用と言わんばかりに、大和ギルドは5分ほどで第1フェーズの魔物達を殲滅した。


「想像以上に早く終わりましたね。回復二枚もそうですけど、やはり顔さんの強化バフの効果は大きいと言わざるえません」


「ああ。あるとなしじゃ、殲滅速度が全然違ってくる」


強化バフは顔憂の呼び出したヴァルキリーのかけた物だ。

その効果は、召喚者の10分の1のレベル分見方を強化するという物である。

現在の憂のレベルは6,300程であるため、そのバフ効果はレベル630程となっていた。


大和のレベルは4、000程ある。

そのため630レベル分固定強化されても、彼にとって数値上は2割以下の強化にしかならなかった。


とは言え、全体的に能力が上がる効果は確実に2割以上の恩恵を齎す物だ。

ましてや参加者の大半を占めるSランク達にとっては、あるとなしでもはや完全に別世界と言っていいレベルとなる。


そしてその差が、想定以上の殲滅速度へと繋がったのだ。


「さて、じゃあ第2フェーズが始まるまでは休憩だ!各自、気を抜かない程度に休息を取れ!」


まだまだ『タワーディフェンス』は始まったばかりである。

長丁場に備えるため、彼らは軽い休息をとるのだった。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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異世界転生帰りの勇者、自分がいじめられていた事を思い出す~何で次から次へとこんなにトラブルが起こるんだ?取り敢えず二度と手出ししてこない様に制圧していくけども~
異世界から帰って来た主人公が、ふざけた奴らを力で無双制圧して行く話になります。
最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
魔界で大魔王を倒して戻って来た勇者は、かつて転生者だった自分を育ててくれた侯爵家が没落した事を知る。これは最強男勇者が執事となって、恩返しとして侯爵家の復興に尽力する物語
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