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王宮の幻花 ~婚約破棄されたうえ毒殺されました~  作者: 玄未マオ
第三章 北の大国フェーブル
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邸内探索

 こちらはウルマノフ魔導士とヴォルフ少年。

 

 建国祭の翌日の会議の後、国王と対談し、寄付を募るために王都内の貴族の館に訪れる許可をもらった。そして今日はゲハイム伯爵の家に訪れ家主と会話している。


「魔法研究が進むと具体的にどういう良いことが起きるかの一例ですがの、例えばこの国は牧畜が盛んだが、排泄物の臭気などに少し問題があり、特に慣れてない者がこの国を訪れると……」

「ええ、それは他所の方にはよく言われますね、しかし……」

「ゆえに魔導士らが錬金魔法で排泄物の分解を早め肥料に作り替える魔法を使うことで解決していると言いたいのじゃろ。しかし、魔導士の数にも限りがある。今研究しておるのは特定の魔法の力を魔石にこめ自動的にその効果を発動させる仕組みじゃ」

「はあ?」

「魔石とそれを発動させる何らかの仕組みがあれば、限りある魔導士では対応できなかったところにも手が回るようになり、臭気対策もより行き届くというわけじゃ。そういう風に産業や実生活に役に立つ魔法を研究するための金を募り、寄付してくださった方々に優先的にその効果による恩恵がいきわたるようにする、持ちつ持たれつってわけなんじゃよ」


 老魔導士は雄弁に魔法研究塔に出資する利を説いた。


 国王陛下からもお墨付きをもらっている魔導士の話であり、金額は定められておらず各々の貴族が出せる範囲でいいとの話なので、少しだけなら、と、寄付金を出すのも多くいた。


「ジイさん、ちょっと……」


 調子よくお金が集まりそうでほくほくと上機嫌な魔導士に少年がもじもじと声をかけた。


「なあ、俺、ちょっと……」

「なんじゃ、トイレか、しょうがないのう。すいません」


 ウルマノフは正面に座っていたゲハイム伯爵にヴォルフ少年が部屋を出て用を足す許可を求めた。


「ええ、いいですよ、ここを出て右に行って突き当りを左に曲がって、何個目のドアだったっけな? 案内を呼びましょうか?」

「いや、いいよ、だいたいわかるから」

 

 そう言ってヴォルフは部屋を飛び出していった。


「すいませんのう、まだ子供で……」

 

 ウルマノフが謝り、伯爵がそれに答えて笑った。

 その後また研究の話を老魔導士の話が続くのだった。


 部屋を出たヴォルフだが、ポケットに隠し持っていた魔石で何かを探り始めた。


「まったく、毎度毎度、こんな恥ずかしい演技させやがって」

 

 それは何らかの魔力を感知する魔石であった。

 かなり高い感度で特定の魔力を検知することができ、それを持ってヴォルフは屋敷の廊下をしばらく歩いていたが、

「反応なし、ここはシロだな」

 そう判断し、魔石をポケットにしまった。


 反応があった場合には場所もその石の反応で分かるので、その場所まで行って問題のブツを回収するのがヴォルフの役目だ。今回はその必要がなかった。あった場合にはこっそり回収するのが骨なのはもちろん、なかった場合と違ってより時間がかかるから、道に迷ったとか、腹を下したとか、戻った後にいろいろめんどくさく釈明しなければならない。


 ヴォルフが用をすましたふりをして部屋に戻ると、ウルマノフはすでに帰り支度をしていた。


 あれ、いつもより話を切り上げるのが早いんじゃねえ?


 そうヴォルフは首をかしげたが、

「申し訳ございません、この後にまた来客の予定がございまして、お金の方はまた後日……」

 ゲハイム伯爵の言い訳にウルマノフはうなづいて、

「おお、かたじけない。わしは今王宮の離れにて世話になっておりますじゃ。午前中はこうやって王都の各貴族の家を廻っておりますが、午後からならいつでも。さ、ヴォルフ行くぞ」

 ウルマノフはヴォルフの背中を押して早々に屋敷を後にした。


 二人の移動は王宮から借りている豪華な馬車を使っていた。

 ゲハイム邸を離れてしばらくすると、ひそかに屋敷に放っておいた探索用の小さな記憶球の映像を映し出し始めた。探索珠は小指の先ほどの球形に小さな羽が生えておりそれをパタパタと降ってあちこちに飛ぶので、虫か何かの類と知らない人は勘違いする。そこに写された映像にはブラウシュテルン公爵令嬢ヴィオレッタの姿があった。


「ふ~む、表門には公爵家が使うような豪華な馬車は停まってなかったな。伯爵も客の存在を知られたくなさそうだったし面妖なことじゃの」

「どういうこと?」

「ゲハイム伯爵は公爵家傘下の家門だから彼女が粗末な馬車で裏門から出入りして訪ねなきゃならんことはないはずじゃ?」

「秘密にしたい理由が伯爵側にも、お嬢様(ヴィオレッタ)側にもあるってことか?」

「そうかもな。まあ、ええか」


 ウルマノフ魔導士は軽く話を打ち切るのだった。


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