表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王宮の幻花 ~婚約破棄されたうえ毒殺されました~  作者: 玄未マオ
第三章 北の大国フェーブル
85/120

女神の化身

 その後部屋に戻ったネイレスは、同じように戻ってきていたロゼやクロと互いの情報を交換した。


「ヴィオレッタ嬢の周辺はすでにそんな危険が迫っていたとはな」


 自分が受けた王太子妃教育より深刻なブラウシュテルン公爵家の出来事について、ネイレスはつぶやいた。


「ええ、そういうわけだから、あたしはこれからブラウシュテルンの方にかかりきりになるから。すでに、ヴィオレッタ嬢と妹のサフィニアそれぞれに分身体をつけて見はらせているわ。サフィニアの方は事情が分かって味方になってくれそうだから、彼女にだけ姿が見えるようにしているから」

 黒猫クロが報告をした。

「ダリア王妃の方も篭絡させるのは時間がかかりそうだから、クロについてもらって弱みを探ろうかなと思っていたんだけどね」

 ネイレスが残念そうに言った。

「う~ん、分身体は多くなればなるほど情報が混乱するから、繊細さと正確さが必要な調査の時に乱発するのは避けたいのよね」

「だめかな~」

「サフィニアの方に本体を置いて、分身体は王妃とヴィオレッタ嬢のとこ。それで何かあった時に戻ってきて報告をってことでいきましょう。ロゼとは常に連絡が取れるようにしてね」

「わかった、それで頼むよ」


 二人と一匹の調査の方針はとりあえず決まった。


 翌日より本格的な王太子妃教育が始まった。

 礼儀作法やダンスなど実践的な授業は最初に魅せてやった。

 音楽や美術などはネイレスの司る概念の管轄内なので問題なくこなせた。

 だが、法律、外交、歴史などは人間だった時に王太子妃教育を受けたことのあるロゼの助力がなければ無理そうだ。


 ロゼにとっても五十年以上前の隣国での経験だったが、多少知識を刷新したら楽勝だった。

 ネイレスことロゼッタ嬢が教師の前で口ごもると、すかさず精霊同士で伝わる「念話」で答えをロゼが教えた。カンニングみたいなもんだが、そのやり方で苦手な科目でも「ロゼッタ嬢」の記憶力の良さを見せつけることができた。


「「「ここまで優秀な方だとは!」」」


 法律、外交、歴史の教師が舌を巻いた。


「「覚えがいい上に実際にやらせてみても巧みですわ」」


 音楽や美術の教師も感嘆のため息をついた


「「いやはや、その立ち居振る舞いの美しさ、まるで女神の化身のような」」


 礼儀作法やダンスを実践してみても、ダメ出し好きな底意地の悪い教師すら称賛するようになった。


 そしてその評判を聞きつけたナーレン王太子が授業を見学にやってきて、ダンスの総仕上げの時に相手役を請け負い、教師たちや使用人や見学者の前で一緒に踊って見せた。その見事さに、教師たちが漏らした『女神の化身』という言葉が嘘ではない、と、見ていた人間すべてが実感し、評判は王宮中に瞬く間に広まった。


「女神じゃなく精霊なんだけどね」


 侍女として彼、いや、彼女(ロゼッタ)についていた精霊ロゼがつぶやいた


「いやあ、見直したぞ、ロゼッタ! もともと見所があると思ってはいたが、側妃どころか王妃の役もこなせるのではないか」


 王宮の庭を一緒に散歩をしながら上機嫌で王太子がロゼッタに言った。


「もったいないお言葉でございますわ」


 しとやかなしぐさでロゼッタは恥じらいながら王太子に礼を言った。


 二人の少し後をついて歩いている精霊ロゼが化けている侍女のゾフィアは、そんな二人に生温かい目を向けながら苦笑いをした。

 

 向かい側からヴィオレッタ嬢が侍女を連れて歩いてくるのが見えた。

 王太子はそれに気づいたのか気づかなかったのかは知らないが、言葉をつづけた。


「ああ、そなたの髪は黄金のように光に映え本当に美しいな。そなたに比べれば誰かの髪など、同じ金髪でもまるで藁だ、ワラワラ、ハハハ」


 あきらかに少し灰味がかったヴィオレッタの金髪を引き合いに出している。

 そんな持って生まれた髪の色にいちゃもんつけてどうするんだ。

 嫌味な王太子だね。


 ロゼは心の中でナーレン王太子に悪態をついた。


 後ろの方からはユーベル・ノルドベルクが小走りでヴィオレッタに近づいてきていた。


「こんにちは、ヴィオレッタ殿。相変わらずお美しい」

 くったくなくユーベルはヴィオレッタに挨拶をした。

「おそれいります、こんにちは」

 ヴィオレッタもにこやかに挨拶を返した。

 正面から歩いてくる王太子とロゼッタ嬢の仲睦まじい様子など一切気にしていないような表情で。


 ユーベルとヴィオレッタは、ロゼッタを連れていた王太子に道を譲り、二組の男女はさも何事もなかったかのように、別々の方向へと歩いていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ