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王宮の幻花 ~婚約破棄されたうえ毒殺されました~  作者: 玄未マオ
第三章 北の大国フェーブル
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弑逆の犯人は?

 ウルマノフの言葉に耳を傾けようと、広間は水を打ったように静まり返った。


「先ほどレンガといったが、レンガのごとく単純に建物の壁のような役割をするのもあれば、外からくる敵と戦って防衛する役を担っているものもあるのじゃ。風邪をひいたり怪我をした時にはそれらのものが大活躍する」


 免疫機能ってやつですね、わかります。


 サフィニアは再び聞きながら何度もうなづいた。


「病気や怪我の時にはその小さな戦士らが外から侵入して体の中で悪さをする者たちと戦う。そしてその外敵らとともに死ぬ。普通の人間の体では、死んだ小さな戦士は外敵と一緒に外に排出され、新しい戦士が補充される、しかし新しいものが生まれない状況になっていれば一体どうなるか?」

 

 ウルマノフの説明は少し抽象的過ぎて聞いている者たちは理解しようと頭をひねった。


「つまり、敵対関係にある国との境で戦闘が起き戦死者が多数出たけど、新たな戦士も物資も補充されない状態になると?」

 騎士スコルパスが具体的な状況を挙げてみた。

「そのとおりじゃ! 肉体は常に外敵にさらされ兵士も物資も減り続けているのに補充はされない、そうやって肉体はどんどん衰弱していく。体内の時を止めるというのはそういうことなのじゃ。特にけがや病気で体が弱っているときを狙いこの薬を飲ませ続ければ、若く健康なものと違い悪影響の方が強く出るのじゃ」

 わが意を得たりとウルマノフは手をたたき説明を補強した。


「あの当時の母は、亡き祖父の跡を継いで領地経営や王宮とのやり取りなど激務をこなしておりました。そして、風邪をこじらせてあっけなく……、疲労のせいかと思っていたのですが……」

 ヴィオレッタが当時を思い起こし言った。

「ふむ、薬をこっそり盛ったのは夫であったファイゲの可能性が高いがそれは当時懇ろとなっていたカルミアの入れ知恵じゃろう。ティスルの近くにいたあんたなら、薬の副作用もよくわかっていただろうからな」

 ウルマノフはカルミアに目をやり言った。


「くっ!」

 カルミアは忌々しそうな目でヴィオレッタとウルマノフをにらんだ。


「おお、怖っ! 人を平気で手にかけるような奴の逆恨み、始末に悪いのう。どこでこの薬を手に入れたかを聞こうと思っていたが、お前さんがティスルの付き人であったことを自白してくれたので手間が省けたわい。で、その薬を王侯貴族にも多く売ったようだが、誰にどのくらい売ったか覚えておるか?」

 ウルマノフがカルミアに尋ねた。

「そんなものいちいち覚えてないわ!」

 吐き捨てるようにカルミアが答えた。

「まあ、そういう答えも想定内じゃ。だからこそ、わしは王都の各貴族の屋敷を訪問しヴォルフに邸内を探らせた。まあ、持っているだけなら、副作用を知らずに購入した事例もあるじゃろうから咎めるつもりはなかったがの。もう一つ質問するぞ、ティスルが特別に薬の副作用までしっかり教えた相手はいるか? どうじゃ覚えているかの?」


 ウルマノフの質問に今度はカルミアは顔をそむけた。


「覚えてないのか、答えたくないのか、まあいい。そういう反応をされるのも想定内じゃ。あの薬の悪影響を取り除く場合、人によっては、髪がごっそり抜け落ちたり、肌が脱皮したようにむけていくことがある、あと高熱を発することもな。この症状を聞いて思い出すことはないか、医師団よ」

 

 ウルマノフの質問に王家の医師団の顔色が変わった。

 それこそウルマノフが牢に入れられた原因となった国王のおかしな症状であったのだから。


「薬の悪影響をとり除けば、いままで止まっていた時が動き、長らく体を守っていたレンガのようなものは死んでゆく。髪であったり肌であったりな。そして高熱というのは今まで補充されなかった兵士が補充され、やつらが戦いやすいように体が反応した証拠なのじゃ」


「待ってくれ、つまりわしもその薬を知らずに飲まされていたということか?」

 フェーブル王は愕然とした。


「ああ、そうじゃ。あんたが当時のシュウィツアの若き王太子妃のように美容効果を求めて服用するとは考えづらい。だからその薬をあんたに飲ませたのは誰か、と、わしは考えた。この薬を使った殺人は、自然死のように見せかけられる反面、時間がかかり薬も大量に必要となる。ティスルは貴族相手にはずいぶんぼったくった料金設定をしていたようだし、そんな高価なものを大量に購入できる財力を持ったものと言えばおのずと限られている」


 ウルマノフの答えに周囲は息をのんだ。国王殺害未遂の犯人がそれなりに地位と財力のある人間であると言っているも同然だったのだから。


「あんた、ロゼッタ嬢、そこの精霊に戻ったやつじゃが、その者に美容薬を譲ったことがあっただろう、ダリア王妃よ」

 

 

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