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王宮の幻花 ~婚約破棄されたうえ毒殺されました~  作者: 玄未マオ
第三章 北の大国フェーブル
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精霊ロゼどやしつける

「えっ、あれ、ロゼさん……?」


 サフィニアは、王太子の愛人だったロゼッタ嬢の横に立っていた侍女がロゼであったことに驚いた。


「えへへ、びくっりした? あたしら精霊はフェーブル王家のことが心配で人間のふりして紛れ込んでいたの。ま、ロゼはもともとは人間だったんだけどね」


 黒猫クロがいたずらっぽく笑いながらサフィニアに説明した。


「うむ、仕方があるまい……」


 フェーブル王は苦し気な表情を浮かべ、王太子とヴィオレッタの婚約解消を了承した。


「陛下、王命ですわ! 約束通り一度婚約解消をした後にもう一度ヴィオレッタに王太子の妃になるようお命じになればいいのです!」


 ダリア王妃が夫である王に、再びヴィオレッタを取り込むための案を忠言した。


 国王は、なるほど、という顔で王妃の言う通り王命を発しようとする。


 その様子を見て精霊ネイレスは、

「ずいぶんとなめた真似を……」

 かなりカチンときた顔でつぶやいた。


 あの約束はヴィオレッタが望むならいつでも王家の縛りから解放してあげるという意味だとネイレスは解釈している。それを言葉尻だけとらえて、もう一度『王命』とやらで彼女を縛り不幸にしてもかまわないという王家の態度に、普段はめったに怒らないネイレスがマジでブチ切れそうになっている。


「おい、貴様ら……」


 柄にもなくけんか腰の口調で、国王一家にネイレスが物申そうとした矢先、それを引き留めたのはロゼであった。


 そしてロゼがネイレスの代わりにこうどやしつけた。


「ふっざけんじゃないわよっ! あんたらヴィオレッタに執着してるけど、それに伴うだけの思いやりを彼女に示してきたとでもいうの?」


「なんだと、貴様! その髪色、ノルドベルクの回し者か?」


 めったに他人に怒鳴られたことのない王太子が露骨に反発した。


「今のノルドベルクとは無関係よ。そもそも私は精霊。人間世界の上下関係など関係なく言わせてもらうわ」


 ロゼは負けじと厳しい口調で言い返した。


 言い返せない王太子を鼻でせせら笑いながらロゼはつづけた。


「アンタさ、ヴィオレッタが自分の身を護るためだけにアンタの婚約者の地位にしがみついたってことに不満そうだったけど、そうでもしなければ自分の身の安全すら守れなかった彼女の境遇を慮ることはできないの? さすがは自己中のクズね」


 なんだと、と、ロゼの『暴言(正論)』に王太子が憤りを見せるのを無視し今度は国王に向かった。


「あなた、王太子は甘えているだけ、なんてヴィオレッタに言っていたけど、それって自分の息子の暴挙を彼女に我慢させ続けるってことよね。息子を甘やかすためなら彼女の方はどんなにつらい思いをしていてもいいの? すでに成人年齢に達している男が恥知らずな甘え方をするような育て方してきたことを、父親として、あるいは一国を統べる王としてどう考えているのよ!」


「それは確かに……、しかしそうであるからこそ、その件に関してヴィオレッタには何度もわびの言葉を……」


「はいはい、口先だけね。そもそもヴィオレッタの家庭環境の劣悪さはあなたも知っていたんでしょう。にもかかわらずあなたは何もしなかった。口先だけの注意や嫌味のみ。あなたは計算していたんでしょう。王太子の不誠実な態度、もしまともにヴィオレッタを愛し守ろうとする保護者なら必ず王家に苦情を言い婚約解消も話に上がるわ。それを思えば、彼女がどんな目に合っていても文句言わないで一緒になって虐めるような保護者の方が自分たちにとっても都合がいいと」


「っぐ……」


 二の句が継げなくなった国王をロゼは厳しい目でにらみ続けた。


 ピリピリした沈黙の仲、シュウィツア特使のエルダー卿が言葉を挟んだ。


「いずれにせよ、一度解消した婚約を結びなおすとおっしゃるのなら、これまでの王太子殿下のヴィオレッタ様への態度を細かく調べてシュウィツアに報告をいただきたい。令嬢は我らが王家の血をお引きになる御方と分かったのですから、その方の結婚相手の素行は重要です」


 再び国王が絶句した。


「ああ、そうそう、思い出したわ。王太子はね、別の女を横にはべらかしながら、ヴィオレッタの髪色を侮辱していたわよ。藁の色とか何とか言って」


 チクるようにロゼが言った。


「ほほう、先王ゼフィーロ様のゆずりの御髪の色をこの国の王太子殿下が……」


 それを聞いてエルダー卿が目をぎろりを輝かせながら国王と王太子をにらみつけた。


「あ、あれは……ヴィオレッタの髪色を言ったのであって、シュウィツア王を侮辱したのでは……」


 ナーレン王太子が焦って言い訳した。


「へえ、隣国の王が相手でなければ人が生まれ持った髪の色を侮辱してもいいの?」

「人間性の問題として、わが王家の血を引く令嬢の伴侶にふさわしいとはとても……」

 

 ロゼとエルダー卿がそろってつっこんだ。


「あきらめろ、フェーブル王よ。ヴィオレッタ嬢はナーレンの馬鹿にはもったいない令嬢じゃ。まあ、それで一件落着、わしの番に行ってもいいかの?」


 彼らの言い合いを仲裁し、ウルマノフ魔導士が言った。


「ヴィオレッタ嬢だけじゃなく、まともな令嬢なら誰でもあのバカ王太子にはもったいないけどね」

 黒猫クロがさらに突っ込んだ。


「ぐっ、その話はそこまでにして、わしらがここに来た本当の理由。フェーブル王よ。ここから先の話を聞けば王太子の婚約者の問題どころではなくなるぞ。国王弑逆という大罪にかかわる話じゃからの」


 クロの減らず口に戸惑いながらウルマノフは言った

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