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王宮の幻花 ~婚約破棄されたうえ毒殺されました~  作者: 玄未マオ
第三章 北の大国フェーブル
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正体を現す精霊たち

「お姉さまってダメンズ好きじゃなかったんだ」 


 継姉ヴィオレッタが今の今まで、あのクサレ王太子との婚約を自分の意思で継続していた理由を知って、サフィニアがボソッと小声でつぶやいた。


「どのような事情であれ婚約を結んだのなら、いずれ互いを信頼し合い尊重し合う夫婦になれたらと私は願いました。しかし、これまでの王太子殿下の態度を拝見しそれは難しいのではないかと」


 ヴィオレッタが言葉をつづけた。


「そりゃ、そうよね。浮気はするし、言葉の暴力はあるし……」


 またまたクロがぶちかました。

 

 意見にはほぼ同意だしもう自分が言ったことにされてもいいや、と、サフィニアは思い、何度もうなづいた。


「王太子殿下には私よりも正妃に迎えたい方々がいらっしゃるのでしょう。ロゼッタ様しかり、そうそう、以前、私がロゼッタ様を噴水に突き落としたと王太子殿下はお責めになりましたが、あれは私ではなく、カイザール家のブリュエット様ですわ。女性の集まりの中でのもめごとだったので私以外にも見ていたものは多くいらっしゃいます。殿下はブリュエット様ともお付き合いをなされていたのですね」


「「うっ……!」」


 ロゼッタ以外の別の浮気を責められた王太子と、ロゼッタ以外の別の浮気を知らされた父親の国王がともに、痛いところを突かれ絶句した。


「いやいや、そなた以上に正妃にふさわしい女はいないぞ、ヴィオレッタ。王太子はそなたに甘えておるだけじゃ。そなたも王太子のことを誉めておったではないか。そう『スゴイ』といってな」


 あの時の場の雰囲気で約束させられた国王であったが、なんとかヴィオレッタの気持ちを翻そうとする。


「そういえば、あの時、私はそう申し上げましたね」

「そうであろう」

「はい、国王陛下を除けば、王太子殿下はこの国で一番高貴な殿方であり、その御姿は麗しく……」


「「わかっておるではないか!」」


 国王と王太子が親子で言葉を重ねた。


「にもかかわらず、その方の妻になりたいという気持ちが全くなくなってしまうような言動の数々。ある意味『スゴイ』方だなあ、と」


 盛大な皮肉である。

 そういう意味だったのか、と、あの場で聞いていた者たちは思い、知らぬ者たちも王太子の日ごろの行いを思い出し笑いをこらえるのに必死になった。


「お約束していただけましたこと、果たしていただけないのでしょうか?」


 ヴィオレッタは不安げな顔で国王に尋ねた。


 うむ、と、苦しげな表情を浮かべ国王は返事を渋った。


「ああ、もうっ! いいかげんにしろよ! 一国の王ともあろうものが臣下と果たした約束の一つも守れないのか!」


 国王の態度にじれたある者が大きな声を上げた。


 その場にいた者たちは声の方向を向いたが、そこには今や国一番の美女とも評判の高い王太子の愛人ロゼッタ嬢と、彼女よりは少し地味だがこれまたなかなか器量よしの侍女が立っているだけだった。


「「「「「「……???」」」」」」


 二人の女性のところから、男性のような太い声が聞こえたのに皆が首を傾げた。


「もういいかげん、この変装といてもいいよな、でなきゃわかんないんだろう、あの王家は」


 ぞんざいな口調でロゼッタ嬢がぼやき、その姿は妙齢の美女から線は細いがれっきとした男性の姿に変わった。


「我が名はネイレス! 精霊王の眷属! いいか、フェーブル王よ。そなたがヴィオレッタと交わした約束は世界を支える四大柱のわれも立ち会ってなされたもの。それを破るということがどういうことかわかっているのだろうな!」

 

 突然立ち現れた最上位の精霊の一人の存在に場内は騒然となった。


 国王も驚倒した。

 精霊王のおひざ元といわれるフェーブルとシュウィツアでは精霊信仰が根強く、彼らこそ国の農畜産物の実りや天変地異に深くかかわっていると信じられている。実際、人間の活動を支えるネイレス他四大精霊と、自然をつかさどる火水風土光闇などの精霊は精霊王フェレーヌドティナによってまとめられている。


「おっ、男っ! なっ、ならば、あの時の二人の熱い夜は!」


 こちらは別の意味でロゼッタの正体に驚いて震えている。

 ネイレスの化けていたロゼッタ嬢を寵愛してきたナーレン王太子である。


「男と言われるとどうかな? まあ、われらが精霊には性別はないから女でもないがな。我は美と夢幻をつかさどるから『幻惑の術』で良き夢を見させることなど造作もない。二人きりの時はお前さん、いつも口をぽかんと開けたアホ面で呆けていたな」


 それが『熱い夜』とやらの正体かい、と、あきれながら、精霊ロゼはナーレン王太子の相手を押し付けられなくて本当に良かったとしみじみ思った。


 術をかけさえすれば閨の相手をせずに済むと言われても、アホ面ずっと見続けるのはきついものがある。


「私ももう元に戻っていいわね」

 

 ブリュネットの侍女も姿を変えノルドベルク家によくある髪と目の色をした美女に戻った。


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