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王宮の幻花 ~婚約破棄されたうえ毒殺されました~  作者: 玄未マオ
第三章 北の大国フェーブル
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王太子の無茶ぶり

 エルダー卿たちシュウィツアの特使一行はフェーブル王宮の謁見の間に足を踏みれた。


 体調をくずしていたという国王はすでに健康を回復し、隣国の特使を出迎えるため広間の奥の中央の席に座していた。その両隣には王妃と王太子が着席。

 そして入ってきた特使らから見て右側には、フェーブル側の貴族たち。今回被害を受けた公爵令嬢の家族、ブラウシュテルン家の面々は一番王に近い先頭の位置を陣取っている。左側には大使としてフェーブルに滞在していたシュウィツアの貴族や、逆にシュウィツアに大使として派遣されていたり、シュウィツアの貴族と婚姻関係を結んでいたりして隣国寄りとみなされている者たち、今回の事件でずいぶん肩身の狭い思いをしていたらしい。


 エルダー卿は国王の前に出るとひざまずき、今回の件で両国の友好にひびが入っていることに遺憾の意を述べ、国王はこの件が両国の関係に悪影響をもたらさないことを願うむねを述べた。


「両国とも過去はさておき、未来において良き関係を望む気持ちが一緒であることは喜ばしい」

 国王は張りのある声で広間にいた者たちに高らかに宣言した。


「確かに喜ばしい限りである、だが、事件を起こした側から、何の償いもないというのはなあ……」

 隣に座っていたナーレン王太子が続けて声を上げた。


 これは王と王太子による役割分担だろうか?


 エルダー卿は考えた。

 トップがあくまで友好的な態度を崩さない代わりに、その側近やナンバー2的な立場の人間が厳しいことを言うのは、外交交渉でもよくある話だ。


「王太子よ、その件に関してはすでに事務方にて交渉は済んでおる」


 違うみたいだ。

 王太子をいさめるフェーブル王を見てエルダー卿は考えを訂正した。


「ええ、たしかに。確認したのは両国の関税と通行税、それについても今まで通りですし、新たな友好の証としてシュウィツアの王女が我が国に嫁すことと相成りましたが、これとて、もともと話し合いがなされていたことが本決まりになったに過ぎない」


 両国間の行き来や経済的な事柄に関しては、幸いにも、フェーブル側から無理難題をふっかけられることもなく現状維持に落ち着いた。

 シュウィツア現国王の王女リナリアは、友好の証としてナーレン王太子の弟にあたる三人の王子のうちの誰かとの結婚話が持ち上がっている。結婚してのちは王子を臣籍降下させ、新たに公爵家を立ち上げさせる事までは話が決まっていた。ただ、リナリアも相手となる三人の王子もまだ十歳前後で、誰を相手とするのがいいかも決められず、そこで話は止まっていたのである。


 この王太子は何を求めているのだろうか?

 もしやリナリア様を人質としてすぐさまフェーブルによこせという意味か?


「そなたらの国の王家の者が、わが婚約者を永遠に手の届かない場所へ連れ去ってしまったせいで、私はひどく寂しい境遇となってしまった。本来ならその償いとして王家の姫を妃として差し出すのが筋ではないのか」

「お待ちください、リナリア様は年若くまだ妃として務まるご年齢ではありません。それに婚姻のお約束は、王太子殿下の弟君たちの方が年回りも近く……」

「はは、それはわかっておる。しかし王家の血を引く娘は彼女だけではないだろう。たしかシュウィツア一の美女との評判が高いホーエンブルク家のジャスミン嬢は、母親が現国王の妹君であったな」


 ナーレン王太子のいきなりの提案にエルダー卿は頭を殴られたような気がした。


 現国王の妹ヴェレーヌは、シュウィツア二大公爵家の一つホーエンブルク家に嫁ぎ、一男二女をもうけた。その中でも長女のジャスミンは国一番の美女と評判も高い。


 ふざけるな、この王太子!


 エーデル卿は体の内側から怒りが沸き、手足の震えを抑えるのに必死であった。


 ジャスミン嬢は御年十三の時に国内の侯爵家の令息と婚約し、政略とは思えないほどに良好な関係を築いている。そのお相手との仲を引き裂いて好色との評判の隣国の王太子のものになれだと!

 我が国の情報機関をなめてもらっちゃ困る! 

 亡くなったヴィオレッタ嬢を差し置いて別の女を寵愛していたのを、シュウィツア側が知らないとでも思ったのか。その女も厚かましくもこの謁見の間に侍女とともに顔を出している。

 その状況で、婚約者もいる我が国の公爵令嬢を欲するとは!


 怒りに震えながらも冷静さを保ち、絶対に了承すべきではない王太子の要請にどう答えたらいいのか、エルダー卿は考えを巡らせていた。


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