任せろ!
マースの号令でブラウシュテルン家子飼いの騎士たちはいち早く動く。
王宮直属の騎士スコルパスを含め十名、ついてきたブラウシュテルン家の騎士マースを含め五名。味方と思って背中を預けていた公爵家騎士団に不意を突かれ、王宮の騎士たちはあっという間に倒され、地に伏した。
「下の令嬢以外は全部殺せ! よいな!」
マースは部下の騎士たちに号令をかけた。
さらに地元のならず者も何名か集まり、
「お前たちは援護射撃だ!」
と、いうマースの命令に従い、騎士が立っている外側から矢を射かけ始めた。
「みんな固まって! あたしに任せて!」
飛んでくる矢はクロの防壁の技で防ぐ。
矢は防げるが剣で切りかかってくる者たちは、ユーベルが防戦せねばならなかった。
「サフィニア、あなたは離れなさい! 彼らはあなたは殺す気はないみたいだから」
ヴィオレッタは自分の前に張り付いている妹に告げた。
「だったらなおさら、私を盾にすればいいのよ。絶対に守るから!」
サフィニアがそれを拒絶し言い切った。
「そうよ、ヴィオレッタの上の方はアタシが、下はサフィニアが防御するわ。だからユーベル、あたしたちを気にせずとっととこいつらやっつけちゃって!」
クロもサフィニアの言を受けて言い放った。
わかった、と、ユーベルは複数で切りかかってくる連中をはじき返していた。
ここに来る前にマースがカルミアに語った、ユーベル一人に騎士五人でギリとの判断は、彼が自身に襲いかかる敵のみに集中していればいい状態を仮定してのことだ。守るべき人間を横に置きながら防戦している状態では、押され気味となっている。
妙な力が働いて弓矢は効かないことが分かったマースは、ならず者たちにも剣で襲いかかるよう命じた。ならず者たちは倒れている騎士たちの剣を奪いマースの部下と同じようにユーベルたちに襲いかかる。ど素人の攻撃だが、それでも、それらを退けるのに気を取られさらに押され気味になった。
マースはこのまま押していけばいける、と、ほくそ笑むが、そのためには傷つけてはいけないサフィニアの存在が邪魔だ。なんとか、あの娘だけ確保できれば、と、考えていたその時、
「きゃあっ!」
誰かが横から無理やりサフィニアを引っ張ってヴィオレッタたちから引きはがした。
「サフィニア嬢は確保した!」
声が響くや否や、マースたちが一気にユーベルとヴィオレッタに襲いかかった。
攻撃してくる複数の剣をユーベルははじくが、そのうちの一つが隙を狙ってヴィオレッタの心臓めがけて突いてきた。
「ヴィオレッタ殿っ!」
即座にユーベルがその騎士を斬って倒すが、淑女の左胸には剣が刺し貫かれていた。
「そんな……」
あおむけに倒れかかった彼女の体を支え、ユーベルは絶望の声を上げる、だが……。
「ふう、危機一髪。入れ替え成功」
ユーベルが腕に抱えていたのは地下牢の階段であったロゼという女性であった。
彼女は自ら刺さっていた剣を抜き、けろっとした顔で立ち上がった。
「彼女ならあそこよ。とっさに互いの場所を入れ替えたの。精霊である私たちが顕現するときに使う体は特別製なの、剣なんてきかないわ」
ユーベルはロゼが指さした木立の陰に立ってるヴィオレッタと彼女の肩に乗っているクロを確認しほっとした。
「どういうことだ、何者だ、この女は!」
突然現れたユーベルと同じ髪色をした、心臓を貫かれてもピンピンしている女の存在に騎士やならず者たちは動揺した。
「この服お気に入りだったのに、穴開けてくれちゃって。まあ、修復できるからいいけどね」
そう言ってロゼは心臓の位置に空いた服の穴を魔法で修復し始めた。
「ひるむな、ヴィオレッタはあそこだ!早くとどめを!」
マースが気を取り直して部下に命じ、一番彼女の近くにいた騎士がヴィオレッタに再び狙いを定めたた。しかし、その瞬間、何者かが木の上から飛び降りてきて彼らの真ん中に降り立った。
「わしが来るまでよく堪えた!」
魔導士ウルマノフであった。
「あとは任せろ!」
老魔導士は杖を持った腕を高く掲げた。
「伏せろ!」
「伏せて!」
「しゃがんで!」
ヴォルフ、ロゼ、クロがそれぞれ、そばにいたサフィニア、ユーベル、ヴィオレッタに命じ体を低くさせた。ちなみにサフィニアを引っ張ったのは、ならず者に変装していたヴォルフである。
「雷霆っ!」
雷撃が一人残らず敵の体を刺し貫いていった。
ウルマノフのじいちゃん、言っていることが『鬼滅の刃』の水柱にそっくりだが、やっていることは雷柱だね。




