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話し合い

「そうか。疲れてるときに考えてもあまりいい考えは浮かばないだろう。今日はもう寝た方がいい」

「はい……ありがとうございます」


 ティアレッタは隣にとってある部屋へと歩いていく。


 後に残った俺とリンは顔を見合わせた。

 するとリンは少し言いづらそうに口を開く。


「もしかして、彼女をパーティーに加えるつもりですか?」

「まだ決めた訳ではないが、よく分かったな」

「ご主人様の考えていることでしたら何となく分かります。先ほどから何となく彼女に対する扱いが、通りすがりの人への親切という感じがしなかったので」


 もちろん大金と職業をもらったからというのもあるのだが、リンは俺の真意を見抜いていたらしい。


 いつもは俺の言うことは何でも全肯定のリンだが、これに関してはさすがに重大事だからか、そういう雰囲気でもない。

 警戒している……というほどでもないが、歓迎しているという風でもない。


「いいのですか? 私たちは一般人で、王女と同行するなどということをしてしまえば、責任はとれません」

「それはそうだが、このまま後のことは知らないといって放り出すのも無責任じゃないか」

「それは、本人が選んだことですから……」

「俺だって、本人が望まなければ連れていくつもりはない」


 確かに「王女」の職業は欲しかったが、彼女と行動をともにするならリンのように一緒に冒険できるような仲間になってもらわなければならない。

 だから本人にその意志がない限り連れていくつもりはない。


 だがリンの表情はなおも晴れなかった。


「ですが私たちは冒険者としてダンジョンの探索もします。それで彼女に何かあれば……」

「俺たちはパーティーだから、一人に何かあったときは全員が終わりの可能性が高い。それに、俺たちと行動をともにすれば危険はあるかもしれないが、彼女が一人になれば見つかって連れ戻され、エートランド王国で内紛が起こるかもしれない」

「……」


 正直なところ隣国の情勢なんて俺には分からないので、ティアレッタの言っていることがどれだけ正しいのかは未知数だが。

 とはいえあんな風に一人で飛び出してくるということは並大抵のことではないだろう。


「ですが彼女に冒険者が出来るでしょうか?」

「俺は彼女に白魔術師をしてもらいたいと思っている。今日の冒険で思っただろ、二人でやっていくのは大変だって。魔力は遺伝するから王族の生まれなら一般人よりは魔力が高いと思う」

「それはそうかもしれませんが、お城で育った方には色々大変なことも多いです」

「それこそ、一人で国境を越えてこんなところまで来たんだ、苦難を乗り越えることに関しては人一倍得意なんじゃないか?」

「確かに」


 リンは頷くものの、表情は依然として浮かないままだ。

 やはりリンには他にティアレッタのことをパーティーに入れたくない理由があるのではないか。ただ、それが言葉にならないか、もしくは言いづらいからそれっぽい理由を並べている。俺は何となくそんな気がした。


「リン、本当のところを教えてくれないか?」

「え?」

「ティアレッタをパーティーに入れたくない他の理由があるんじゃないのか?」

「そ、それは……」


 リンは一瞬否定しようとしたが、嘘がつけない性格なのだろう、図星であることははっきり顔に出てしまう。

 そして少し申し訳なさそうな表情をした。


「言いたいことがあるなら教えてくれ。リンが言うことなら別に怒ったりはしない」

「でしたら……」


 リンは遠慮がちに口を開く。


「ティアレッタ様は生まれもよくて、髪も顔立ちもお綺麗で、しかも胸も私より大きかったので、目移りされてしまうのかと」

「……」


 そんなことを心配していたのか、と俺は内心拍子抜けしてしまう。

 いや、目移りも何もそもそもそういう風には見ていない……と言おうとしたが、目の前のリンは真剣に悩んでいるようだ。


 確かにティアレッタは生まれも容姿もいいが、仲間を選ぶうえではその二つはどうでもいい。


「そんなことはない。仲間なら生まれも容姿も関係ないし、リンが最初の仲間であることには変わりない。それに仮にいくら何でも相手は王女だ、そういう気持ちになる訳がない」

「そっか、そうですよね」


 それを聞いてリンはほっとした表情になる。


「確かに王女様とそんな関係になるなんてありえないですよね。すみません、私としたことが取りこし苦労で変なことを言ってしまって」

「いやいや、別に気にしてない。仲間なんだからこれからも何かあったら遠慮せずに言ってくれ」

「はい、ありがとうございます! やっぱりご主人様はお優しい方ですね」


 リンは打って変わって晴れ晴れとした表情で答える。


「ああ、解決したようで良かった。とはいえ、それもこれも明日本人に訊いてみてのことだ」

「はい!」


 こうしてリンは上機嫌で自分の部屋に戻っていくのだった。

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