97 協議会
「おぉ、ドレイク殿ではないか。 今日は大変な会議になりそうだな」
ニコニコしながら、ぽっちゃりとしたおっさんが話しかけてきた。
「これはこれは、お久しぶりです。 神官長もお元気そうでなによりです。 この街を見ていると感じます。 良い行政をされておられますな」
ドレイクは返事を返しながらしっかりと握手をしていた。
「ところでそちらの方々はどなたかな?」
ぽっちゃりしたおっさんが俺たちを見て聞いてきた。
「えぇ、この方々は私の客人でして、神殿騎士の方々です。 テツ殿とルナ殿です」
ドレイクがそう答えると、ぽっちゃりとしたおっさんは少し考えていたようだが、明るい顔になって言う。
「・・なるほど、例の地上から来たとかいう人でしたか。 で、本当にこの世界の外から来られたのでしょうか?」
俺たちとドレイクを見ながら聞いてくる。
「いやはや、それはわかりませんが、かなりお強いですよ」
ドレイクが曖昧に答えていた。
「ふむ、なるほど。 それよりもドレイク殿。 魔術都市の三巨頭たちですが、何やら事故で大変な重傷を負ったとか・・」
「えぇ、そのようですな。 私が駆けつけたときには事故の後でした。 ダンジョンの深いところでしたので、誰も近づけなかったようです。 ただ、命だけは失わずに済みましたが・・記憶を失っております」
ドレイクが目線を下にしながらつらそうに話す。
役者か、ドレイク。
「なるほど、なるほど。 それは大変な事件でしたな。 心中お察しいたしますよ。 ですが、命があっただけでも良しとしなければいけませんな」
ぽっちゃりとしたおっさんは言う。
俺たちはドレイクと一緒に歩きながら議場へ向かった。
議場は2階にあった。
かなりの広さだ。
舞踏会などの催しものでも出来そうな空間だ。
そこに大きな楕円形のテーブルがあり、それぞれの地域ごとに席が割り振られていた。
人種族の連中が2/3ほどの席を占めている。
後は龍神族代表と死霊国家党首などと表札がかかっていた。
俺たちが部屋に入ると俺の頭にいきなり念話が飛んで来た。
『テツ殿、ルナ殿、お久しぶりです』
ヘルヘイムの声だった。
俺は驚いて、辺りを見渡したが誰もこちらを向いて話していない。
『テツ殿、動きに注意してくださいね』
その言葉を聞き、俺もすぐに普通の状態を維持。
『お久しぶりです、ヘルヘイムさん』
『ありがとうございます。 要件だけを伝えますね。 テツ殿とルナ殿は我々とは初見ということでお願いします。 後々の面倒事を避けるためです。 また、龍神族たちには既に調整済みです』
ヘルヘイムが言う。
そりゃその通りだ。
俺たちはダンジョンから転移石で出て、迷子になって帰ってきたことになっていたはずだ。
まさか他の種族のところを回っていたとは思われていない。
『わかりました』
俺がそう答えるとルナが言葉を飛ばす。
『ヘルヘイムよ、魔素の流れが戻りつつあるな。 これで後は交渉次第というわけか』
『はい、ルナ様』
それだけを確認すると、俺たちも席についた。
ドレイクの横に席が確保されている。
!!
俺は席について驚いた。
龍神族のヴァヴェルの横に長い蒼髪のスラリとした女性? が座っていた。
誰だ?
あのアホな赤い龍ではないようだが。
ヘルヘイムのところは執事長のようだ。
こちらは言わずとも問題ないだろう。
それにしても、たった2人ずつで来たのか?
まぁ、人間たちがいくら集まって来ても、戦闘となれば問題にすらならないだろう。
ドレイクでも一蹴だな。
そんなことが俺の頭浮かぶが、あの蒼い髪の龍神族が少し気になる。
・・・
見た目が女性っぽいだけで、男だったらショックだよな。
俺がそんなことを考えていると、協議が始まったようだ。
「よくぞ皆様お集まりいただきました。 そして、この歴史的な会談は未来永劫、記憶されるでしょう」
なんか大げさな始まりだな。
「皆様といっても、我々人種族の向かいに座られている方々ですが、龍神族の代表と死霊国家の代表の方々です」
司会だろうか、その人の紹介でみんなが挨拶をする。
当然な反応だが、人種族たちは驚いていた。
「おぉ・・彼らが龍神族か・・」
「うむ、何か威圧感というか神々しいというか・・」
「・・・」
「・・歴史の始まりだな」
・・・
・・
いろんな言葉が飛び交うが、ディスっている言葉はない。
怯えているのかどうかわからないが。
「では、始めたいと思います。 まずは今この世界における魔素に関することですが・・」
ドレイクが立ち上がり話始めた。
魔素の流れを人工的に管理して都合の良いことを考えている連中がいたこと。
そして、その組織を壊滅させるために活動していた三巨頭が事故に合い、大変なことになったこと。
また、その組織を弱体化させた結果、他種族との交流が可能となったことなどなど・・。
・・・・
・・
「・・というわけで、これからは種族関係なく・・というのは、すぐには難しいかもしれません。 ですが、とりあえず争うことなく同じ世界にいるものとしていろいろ話合い、歴史を刻んで行ければと考え、今回の協議会に至った次第です」
ドレイクが流暢に話していた。
ドレイクって、政治家向きだな。
俺はそう思いつつも、三巨頭たちを悪者にしないドレイクの知恵にも感心してしまった。
凄いな、ドレイク。
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