89 料理とスイーツ
受付に到着。
ロビーにはそれほど人はいない。
受付には3~4人ほどが優雅な動作で仕事をこなしているようだ。
俺たちが近づいて行くと笑顔で迎えてくれる。
「お帰りなさいませ、お客様。 何かわからないことがございましたら、ご案内させていただきます」
丁寧な対応をしてくれる。
忘れていた。
ここは高級宿泊施設だ。
なるほど。
俺はどこか美味しいスイーツが食べられるところと食事の場所を訊く。
するとルナが横から普通に話しかける。
「スイーツだな」
俺は優先してスイーツの美味しいところを紹介して欲しいと付け加える。
受付の人は少し考えていたようだが、大きくうなずく。
「お客様、当宿泊施設のお食事処ですが、ビフレストでも最高ランクと自負致しております。 スイーツも絶品を揃えております。 是非お試しください」
にっこりと満面の笑みで、受付の人が紹介してくれた。
それならば、試さないわけにはいかない。
俺たちは受付で場所を教えてもらい、食事のできる場所へと向かう。
宿泊施設内に連なって食事ができる施設があった。
宿泊している人以外も食べられるようになっているようだ。
だが、宿泊している人だけが食べられるところを勧められた。
ここが受付の言っている場所か。
全部で4階建てだが、2階までは一般の人も利用できるという。
それより上は、特別な人か宿泊している人しか利用できない高級店扱いのようだ。
その3階を紹介してもらった。
俺とルナは3階の見るからに高級店そうな店の前に来ている。
俺は少し緊張したが、ルナは平気みたいだ。
まぁ、この人は緊張しないのだろう。
店の入り口に近づくと、店員がこちらに気づく。
待ち時間はないようだ。
店員はゆっくりと頭を下げ、俺たちを迎えてくれた。
「テツ様とルナ様でございますね。 伺っております。 どうぞこちらへ」
店員はそう言うと、俺たちを案内してくれる。
どうやら受付の人が連絡してくれていたようだ。
出来る人だな。
店員に案内されながら、店の中を見る。
すべてが個室というかきちんと区切られていて、プライベートスペースは確保されているようだ。
大人数で座れるところもあれば、少人数でも大丈夫みたいだ。
もしかして、人数に応じて変化できるのかもしれない。
まぁいい。
どのテーブルも人がいるようだ。
声は聞こえてこない。
遮音壁か何かを展開しているのだろう。
俺たちは2人くらいが入れるところへ案内された。
「こちらをご利用くださいませ」
店員がどうぞと手で案内。
俺たちは椅子に座り、テーブルを見る。
椅子の横にパネルボードのようなものがあり、メニューが表示されていた。
「そのボードでご注文ください。 では、失礼します。 また何かわからないことがございましたら、お呼びくださいませ」
店員は丁寧に挨拶すると下がって行く。
俺たちがメニューを見ていると飲み物が運ばれてきた。
「失礼します。 どうぞ、ウェルカムドリンクです」
飲み物を運んできた店員が笑顔で飲み物を置いて行った。
俺は飲み物を一口飲み、パネルボードでメニューを確認。
!
おいしいな。
炭酸系か?
口の中で軽くシュワーッとなって、スッと喉を通過する。
ほんの少しの甘さがあるが、いやな感じじゃない。
さて、俺は肉系が食べれればいい。
それよりもルナだ。
パネルボードを見つめたまま動いていない。
ボードもめくられた雰囲気もない。
ずっと同じ画面で固定されているようだ。
少しすると、ルナがボードに指を当てて、パパパパ・・・と素早く手を移動。
終わると、俺の方を向いてにっこりとした。
笑顔は子供だな。
俺はそう思うが言葉には出すはずもない。
まだ死にたくはない。
「ルナさん、何を頼んだのです?」
俺は聞く。
「うむ。 画面に出ているスイーツケーキ類を全部だ。 それで後は食べてから決める」
「・・・」
俺はルナを見たまま言葉を失う。
そして、自分の方のパネルボードを見て、スイーツ系を確認する。
なるほど・・この1ページがすべてスイーツか。
だが、ケーキ系は上半分だけのようだ。
しかし、この量を全部頼んだのか?
えっと・・18個あるな。
見た目は派手ではないが、美味しそうに見える。
ボードの中でゆっくりと回転して全体像が見える。
確かにおいしそうだ。
俺が見ていると、ルナが言う。
「テツよ、それほど種類が多くない。 だが、期待させる何かを感じる」
ルナがそう言いながら、まだかとつぶやいていた。
俺は肉の盛り合わせだ。
魚もいいのだが、肉だな。
しばらくすると、料理が運ばれてきた。
料理・・そう、俺のは料理だ。
ルナはケーキいっぱいだ。
見事にきれいに盛られている。
まるで花を飾っているように見える。
店員がお皿をテーブルに置いて去っていく。
ほんのりと甘い香りがする。
俺のは肉の焼けるいい匂いだ。
鉄板の上でジュージューと音を立てている。
「いただきます」
俺はそう言って肉を食べ始める。
・・・
うん、いい感じだ。
おいしい。
肉は口に入ると、香ばしい味がしてから溶ける。
軽く噛むだけで肉が無くなっていく感じがする。
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