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87 最長老



ドレイクが適当なところで話を切り上げる。

「ではルナ様、地上へ戻りますか」

ドレイクはそう言うと俺たちを先導して来た道を戻って行く。

三巨頭もドレイクの後を不安そうに追う。

俺たちもその後からついて行く。

ドレイクも複雑な気持ちだろう。

だが、そんな雰囲気を微塵も感じさせない。

男だな。

俺はそう感じた。


無事、ドレイクの執務室に到着。

ドレイクが部屋に戻ると、背筋を伸ばして立ち止まっている。

どうしたんだ?

俺はそう思ってドレイクの前の方へ視線を移す。

そこには一人の老人が椅子に腰かけ、それに寄り添うように精悍な感じの男が立っていた。

ドレイクが片膝を折り、挨拶をしていた。

「これはバナヘイムの最長老様。 いったいどうされたのですか?」

「うむ。 三巨頭がこのビフレストに向かったと報告を受けてな。 我々も後を追ったのだ」

最長老と呼ばれた老人が答える。

そしてすぐに気づいたようだ。

ドレイクの後ろから、三巨頭がオドオドしながら顔を出す。


「お主たち、いったい・・」

最長老はそこまで言葉を出すと、いつもと雰囲気が違うことに気づく。

驚いた顔をして、ドレイクを見る。

「ドレイクよ、これはいったい・・」

最長老が独り言のように言うとドレイクが答える。

「はい、実は魔法陣ところで事故が起こりまして、魔法陣は崩壊しました。 その際にこの三巨頭たちの記憶が失われたようなのです」

ドレイクが慎重にゆっくりと答えた。

おい、ドレイク!

お前、天才か?

パッとよくそんな話が作れたな。

俺は内心驚いていた。

最長老はその言葉を聞きながら椅子に深く座り直す。

・・・

「う~む・・そうか。 もはやあの三巨頭はおらぬようだな」

最長老はそうつぶやくと、しばらく目を閉じていた。


俺たちはドレイクの後ろで立っていた。

といっても途中でルナが背負っていけ、などと言うので、実際立っているのは俺一人だ。

ルナは俺の背中で眠っている。

最長老がゆっくりと目を開けドレイクを見る。

少し視線を動かして俺の方を見た。

「ふむ。 そなたは確か地上から来たという者だな」

俺はその言葉を聞きドレイクの横に移動した。

「はい、そうです」

俺はルナを背負ったまま返事をする。

「なるほど・・」

最長老はそう答えると横を向き、何か話していた。

少しして俺を見て言葉を出す。

「その方らはバナヘイムのダンジョンを凄まじい速度で25階層まで進んだそうだな」

最長老のその眼光は品定めをしている目だ。


「凄まじい速度かどうかわかりませんが、普通に進んでいたと思います」

俺はそう答える。

「ふむ、なるほど。 それよりも、背中のご婦人だが、調子が悪いのかな?」

「いえ、寝不足みたいで眠っているだけです」

俺がそう答えると、最長老は笑いだす。

「ふふふ・・あっはっはっは・・寝不足か。 これはいい。 大したものだ」

最長老は笑いながらうなずき、ドレイクの方を見る。

「さて、ドレイクよ。 これからどうするつもりか」

「どうするとは・・」

ドレイクが歯切れの悪い言葉を出す。

「魔法陣も無くなってしまった以上、もはや光の巫女神話はないに等しい。 それに魔素の循環も戻りつつあるようだ。 人種族以外の活動も活発になるだろう。 そういったことを考えつつ人種族の取るべき位置をどう考えるかということだ」

最長老が真剣な眼差しで言う。

「・・最長老様、私ごとき若輩に判断しかねる事案にございます。 それにマグニ様がどうお考えになるか・・」

ドレイクがそう言うと、最長老が目を閉じてつぶやく。

「マグニは死んだよ」

「え?」

ドレイクは間違いなく完全に隙だらけだっただろう。

「マ、マグニ様がお亡くなりになられたと・・」

ドレイクは力なく言う。

「うむ。 マグニのところに行った交易都市の使者に暗殺されたのだ。 その使者もすぐに自殺したようだが、詳しくは調査中だ」

最長老の話にドレイクは言葉が浮かばないみたいだ。


しばらく沈黙が流れる。

三巨頭たちは不安そうな顔をドレイクに向けている。

ドレイクは微笑み、大丈夫だと声をかけていた。

「最長老様はどのようにお考えでしょうか?」

ドレイクは静かにいてみる。

最長老は鋭い眼光をドレイクに向けて答える。

「うむ。 ワシも偉そうなことは言えぬが、今頭にあることを伝えよう」

・・・・

・・

最長老はドレイクに人種族を一つにまとめて、神殿国家を王立国家にすればどうかと提案していた。

王族といっても名ばかりだが、それでも統率するには旗印が必要だろうと言う。

その王国が一つにまとまり、他種族と共存していく道が良いだろうと言う。

他種族も会話できない連中ではない。

むしろ我々よりも高度な知識を持っている種族もいる。

我々はおごっていたのだ。

魔素をコントロールすれば、すべてが手に入ると思っていた。

最長老自身もその計画に賛成だったが、時間とともに疑問を持つようになり、魔術都市へ移動して考えていたようだ。

そして今の結論に至ったのだが、もはや活発に動く力もない。

影に動いてもらって世界の状況を把握していた。

そんな時に妙な神殿騎士が現れたという。

これは何かの天啓かもしれないと思い、見つめていたという。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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