85 驚愕
ドーブが右手を自分の前で軽く払うようにして振る。
ドレイクの動きが止まる。
「うぐぐ・・この・・動け、この・・」
ドレイクは身体をガタガタと震わせながら必死の形相でドーブを睨んでいる。
「無駄だ、ドレイク。 さて、貴様に初仕事を与えてやろう。 後ろの神殿騎士を殺さずに動けなくしろ」
ドーブがそう言うと、ドレイクが不自然にゆっくりと俺たちの方を向く。
「そうね。 まぁ最悪、不幸な事故が起きても問題ないかしら」
インパも笑いながらつぶやく。
ドレイクの身体の動きは、何か操り人形がうまく動いていない感じだ。
「グググ・・す、すまない。 せめて・・ルナ様だけでも・・避難させてくれ」
ドレイクが自分の身体に抗いながらも言葉を出す。
そして、ゆっくりと俺たちの方へ歩いて来る。
おいおい、ルナさんだけでもって俺はどうなるんだ?
俺はそんなことを思いながら、ルナを背中から降ろした。
ルナは目覚めていたようだ。
「ふわぁ・・テツよ、ここは魔法陣のあるところか?」
ルナは呑気に眠そうな声で俺に聞く。
俺も別に焦ることもないので、素直に答える。
「はい、あのドレイクって人が案内してくれたのです。 この武装都市の魔法陣みたいですよ」
「なるほどな・・それで違和感を感じなかったのか。 確か魔素の流れを歪める石は破壊されていたのだったな」
ルナは周りを見ながら言う。
「えぇ、そうだったと思います」
「で、あの男は何を踊っておるのだ?」
ルナがドレイクを見て言う。
「い、いえ違います。 あのドーブって男に隷属の首輪をつけられて思うように動けないようです」
「ふぅ・・面倒なやつだな。 あの時に始末しておけばよかったようだ」
ルナが言う。
ドレイクが俺たちの前までヨロヨロと歩いて来て、泣きそうな顔をしている。
「ル、ルナ様、申し訳ありません。 この身体が思うように動かないのです。 どうか私を殺すか、私の攻撃を避けてください」
ドレイクがそう言いながら剣を振り下ろす。
ガキィーーーーン!!
ドレイクの剣が折れ、折れた刀身が地面に刺さる。
俺が飛燕を抜き、ドレイクの剣を受けていた。
だが、脆い剣だな。
俺は受けただけだぞ。
「な、なんだと?」
「「バカな!!」」
ドーブたちが前のめりになり驚いている。
そしてさらに驚く。
ルナがドレイクの首のところに軽く手を当てると、首輪が砂のようになって崩れていく。
!!!
「な、なんだ? 何が起こっているのだ?」
ドーブたちが大いに驚いていた。
「く、首輪が・・隷属の首輪が破壊・・いや、消滅したぞ」
インパがつぶやく。
シーナは言葉も出ないようだ。
首輪が無くなり、ドレイクは普通の状態に戻っていた。
「こ、これは・・私は・・ルナ様、ありがとうございます」
ドレイクがにっこりとしてルナにお礼を言っていた。
「うむ。 ドレイクよ、貴様の見方は正しい。 魔素の管理など人の所業ではない。 さてと・・」
ルナはそう言うと三巨頭の方を見た。
俺もルナと同じ目線だ。
俺たちが一歩踏み出すと、三巨頭はビクッとなる。
俺たちはゆっくりと歩きながら三巨頭へと向かう。
「シーナよ、隷属の首輪は簡単に破壊できるものなのか?」
ドーブが聞いている。
「まさか・・私の知る限り、破壊なんて聞いたこともない」
シーナも驚きながら返答する。
「で、では、我らは何を見ているのだ? あの女が手を差し出したら、首輪が消えたぞ」
ドーブが言う。
「わからないわ。 それよりも来たわよ!」
シーナがそういいながらも魔法詠唱をしていた。
ドーブも魔法杖を取り出す。
インパは魔法銃を構えていた。
俺たちと三巨頭の距離が10メートルくらいになっただろうか。
ルナが言葉を出す。
「お前たち、また同じことの繰り返しか?」
ドーブたちはお互いに顔を見合わせてから俺たちの方を向く。
「な、何を言っているんだ。 俺たちは貴様たちとは初めて会う」
ドーブがそう返答しながらも、全員の身体が震えているようだ。
インパがつぶやく。
「な、なにどういうこと? あの女が近づいてくると身体が思うように動かないわ。 何なの?」
「私の身体も堅くなっているみたい・・」
なるほど、身体に刻まれた記憶は覚えているみたいだ。
いくら記憶が改ざんされようとも、身体の記憶までは消せないようだ。
俺はそんなことを考えながら見ていた。
シーナが引きつった顔をしながらも魔法を放つ。
インパとドーブに補助魔法をかけたようだ。
うっすらと赤い光に身体が包まれる。
「ありがたい。 これで俺たちの魔法レベルが上がったな」
ドーブがそう言うと、インパが魔法銃で俺たちに照準を合わせる。
そして迷わずに魔法銃を放つ。
ドン!
青い小さな光の弾が俺たちの方へ飛んで来た。
こいつ、俺たちを撃つのに迷わなかったな。
俺は少しカチンときたが無視。
少し前へ出て、その青い弾を飛燕で斬る。
スパン!
俺たちの左右に弾が分かれて着弾。
ドゴォーン・・ピキピキピキ・・。
氷の柱が出来上がっていた。
「な、バ、バカな! 魔弾を斬った・・のか?」
インパが驚いた顔をして見る。
ドーブも口を開けて驚いている。
シーナは目を閉じて魔法を詠唱していた。
「インパよ、俺が極大魔法を放つ。 その後に続けて魔法を撃てば、奴等も躱せまい」
ドーブはそう言うと魔法杖を俺たちに向けて声を出す。
「消えろ、メガ・フレア!!」
俺はその言葉に驚いた。
!!
マジか?
メガ・フレアだと?
フレアの上位版か?
あんな魔法が来るのか?
俺は急いで防御魔法を三重に展開した。
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