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80 一度帰ってきます



ドレイクが驚いていた。

「ほぅ、俺の剣を防ぐか。 それに焦っているようでもない。 余裕か・・」

ドレイクがそう言うと剣を収め微笑んだ。

「いや、悪かったな。 当たる寸前で止めるつもりだったのだが、まさか受けられるとは思ってもみなかった。 許してくれ」

ドレイクが左手で俺の肩をポンと叩き、自分の席へ戻る。

俺はその場で突っ立ったままだ。

「テツ君。 君は強いだろう」

ドレイクが言う。

俺は沈黙している。

「まぁ、そう警戒するな、といっても無理もない。 いきなり斬りつけたからな。 それにしてもこれほど簡単に受けとめられるとは、いささかショックを受けるよ」

ドレイクはそういいながら自嘲し、続ける。

「さて、なぜこの世界に来たのか。 それを聞きたい」

ドレイクが真剣な顔になって俺を見る。


いや、俺がそれを知りたい。

何故俺をこの世界に連れて来たんだ、と。

だが、そんなことを言っても仕方ない。

俺は正直にこの世界に飛ばされたシーンを話す。

・・・

・・

「なるほど、その遺跡からいきなりここへ飛ばされたというわけか。 ふ~む・・この世界の神の意思なのか? だが、神の声が絶えて久しいと聞く。 神の復活が近いのか? それとも・・」

ドレイクがブツブツ言いながら一人考えているようだ。

俺はそれを黙ってしばらく見ていた。

ドレイクがハッとして俺を見る。

「おっと、これは失礼した。 考えてもわからんな。 だが、俺たち人種ひとしゅが魔素のコントロールなどを考えているのが歪んでいるのだ・・」

ドレイクはまだ自問自答しているような感じだった。

「テツ君。 お連れの人も連れてきてもらっていいだろうか。 それからいろいろと伺ってみたい」

ドレイクが言う。

俺もこんな魔法やレベルがある世界になってからそれほど経過していない。

生き字引のようなルナがいると、何かといい答えも出るだろう。

俺はそう思うと、二つ返事で答える。

「はい、わかりました。 では、早速宿へ戻って出直します」

俺は席を立ち、部屋を出て行く。


ドレイクの部屋のドアを閉め、ドアの前で待機している人に一礼をすると、ルナのいる宿泊所ホテルへと向かった。



<ドレイクの部屋>


テツが出ていった後、ドアのところで待機していた人が入ってきた。

「ドレイク様、客人が帰られました」

待機していた人が言う。

「うむ。 確か連れがいたのでな。 その者とまた来るだろう」

ドレイクがそう答えながら席を立とうとする。

待機していた人がドレイクの不自然な動きに気づき、声を掛けた。

「ドレイク様、どうかされたのですか?」

ドレイクはニヤッと笑いながら、左手で右腕を持ち上げる。

「右腕がうまく動かんのだよ。 先ほどの男を試して剣を振るってみた。 見事に防がれたよ」

ドレイクの言葉に待機していた人が驚いた顔をしてドレイクの顔を見る。

「ほ、本当ですか? まさかドレイク様の剣戟を防ぐなど・・」

信じられないという感じだ。

「事実だ。 防がれたうえ、その衝撃でこちらの腕が痺れてうまく動かせない。 いったい何者なんだろうな」

ドレイクは別に答えを求めて発言しているのではないようだ。

「確か、この世界の外から来たものだという話でしたが、誰も信じておりませんでした。 私は今のドレイク様のお話を聞いて信じる気持ちになっております」

ドレイクが自嘲しながら聞く。

「俺の剣の速度は遅くはないよな?」

「はい。 我々では見ることすらできません」

待機していた人は言う。

「まぁお世辞だとしても、並み以上だということはわかる。 それに相手に与える衝撃も強いと思っていたが・・」

ドレイクは言葉を出しながら、自分の右腕を確認している。

手の平を広げたり、握ったりしていた。

「ふむ。 戻って来たな」

ドレイクがそう言うと、待機していた人は少し焦りながら言葉を発する。

「ド、ドレイク様の剣戟は、私の知る限り最速で最も重いと思います。 それが防がれたというのが信じられません」


ドレイクはチラっと待機していた人を見て、笑う。

「ありがとう。 さて、あの客人がすぐにでも戻って来るだろう。 我々も迎えの用意だ」

待機していた男が大きくうなずく。

「はい」



<テツ>


俺はルナのところへ戻ってきていた。

ルナは起きている。

「テツ、ワシをほっぽりだしてどこへ行っていたのだ。 扱いが雑になっておるぞ」

笑いながら俺を責める。

俺は包み隠さず、ダンジョンへ行って来たこと、ドレイクに呼び出しを受けたことなどを話した。

・・・

・・

「ふむ、そうか。 では、早速行くか」

ルナがベッドから腰を上げて歩き出す。

「おっと、そうだ。 この都市の地下を探っていたが魔素の流れは普通だな。 どこにも滞りがない。 魔法陣はどこか違うところにあるのかもしれぬな」

ルナはそういうと、部屋を出て行く。

少し驚きながら俺はルナの後を追う。


魔素が溜まっていない。

ということは、この都市に魔法陣はないってことなのか?

じゃあどこを探せばいいんだ?

あのドレイクっておっさんに聞けばわかるのか?

どうなんだろう?

俺が頭の中でいろいろと考えていると、ルナが言う。

「テツよ、考えても始まらないぞ。 まずはその神官長に会えばわかることだ」

なるほど、それ以外にないな。

俺の頭から余計な考えが消え、そのままルナと一緒に神殿に向かう。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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