79 おっさん、いきなりか!
ビーツたちも言葉が浮かばなかった。
ランキング1位のブルーがこれほど苦しむとは。
それに一緒に組んだパーティも、いくら支援してくれたとはいえあの24階層をクリアしたんだ。
凄いことだ。
それがやられたのか?
ビーツは信じられなかった。
だが、目の前のブルーを見ていると事実なのだろう。
ブルーがつぶやきながら、ポツリポツリと話してくれた。
ブルーも誰かに言わなければ気持ちの整理がつかないのかもしれない。
・・・
・・
ビーツはただブルーの話を聞いていた。
結果はブルーのパーティでは大剣使いのマゼンダが死んだそうだ。
一緒に攻略をしていたパーティも、ほとんどが半分の人員を失ったという。
ビーツは改めてダンジョンの恐ろしさを感じるとともに、どこかこの攻略の難しさにワクワクする自分を感じていた。
こんな時に不謹慎だと思うかもしれないが、仕方ない。
だからこそ単純な経験値を積み重ね、それを繰り返し己を高め、不安を塗りつぶしていく。
そして、絶対と呼べるほどに身体と心を作り上げ挑戦していく。
それが冒険者であり、攻略というのはそういうものだろう。
ビーツはそう思いながら聞いていた。
ビーツはブルーに労いの言葉をかけ、ブルーを見送る。
「さぁみんな、俺たちももっともっと自分たちを鍛えてダンジョンを攻略しよう」
ビーツは何か変にふっ切れた気持ちになり、仲間に言葉を飛ばす。
プリカ、ピマン、マーネギもビーツの顔を見て、気持ちを切り替えたようだ。
◇◇
<テツがギルドを出て>
俺はドレイクからのメッセージを受け取り、すぐに神殿へ向かっていた。
ルナは後でいいだろう。
とにかく、トップからの呼び出しだ。
すぐに行かなければ。
神殿に到着。
中へ入ると、案内係のような人が近づいてくる。
俺はライセンスカードを見せると、係の人がにっこりとしてうなずく。
「テツ様ですね。 伺っております。 どうぞこちらへ」
丁寧に対応してくれて、俺を案内してくれる。
俺は案内してくれる女の人に付き従って行く。
係の人はお尻をフリフリと振りながら歩いて行く。
俺もリズムを取っていたのだろう。
同じテンポで気持ちよく歩く。
前を歩いている女の人がたまに俺を見て、クスクスと笑う。
「テツ様は、楽しそうに歩かれますね」
そんな言葉を掛けてくれる。
「そ、そうですか?」
俺は曖昧に答えながら歩く。
まさかあなたのお尻を見ていたとは言えない。
一つの扉の前で女の人が立ち止まる。
コンコン・・
女の人がドアをノックしながら伝える。
「ドレイク様、テツ様をお連れ致しました」
扉の中から声がする。
「入ってもらってくれ」
やや低い、重厚感のある声だ。
俺は生理的に思う。
苦手だな。
女の人が扉を開けてくれて、俺は中へ入った。
俺の後ろで女の人がゆっくりと扉を閉める。
俺の真正面で机に肘をつき、こちらを見ているおっさんがいる。
迫力がある。
だが、嫌な感じではない。
威風堂々といった感じだ。
そのおっさんがドレイクと呼ばれる神官長だろう。
「君がテツ君かね?」
いい声だ。
ドレイクは俺をまっすぐに見つめて聞く。
俺は人の目を見て話すのは苦手だ。
首か顎を見て話すと、相手の方を見て話している感じがすると教わった。
顎を見て話す。
「はい、そうです」
「ふむ。 もう一人連れがいると聞いているが・・」
ドレイクは目線を逸らすことなく聞いてくる。
「はい、今は宿で休息しております。 私が1人でギルドへ行った時にドレイク様からのメッセージを受け取ったので、急遽馳せ参じました」
俺は事実を伝える。
「ふむ、そうか。 それでテツ君に聞きたい。 君はこの世界の外からやってきたということだが、事実かね」
俺は驚いた。
何故? と思ったが、最初に立ち寄った神殿都市からの連絡で知ったのだろう。
俺は少し迷ったが、本当のことを伝える。
「はい、その通りです」
俺がそう答えると、ドレイクがため息を出す。
「はぁ・・本当なのかね。 まさか外の世界が事実だとはな。 話に聞いているが伝説みたいなものだ。 おとぎ話だと思っていたよ。 ただ、それが本当に事実だとすればだがな」
ドレイクはそういうとゆっくりと立ち上がる。
!
で、でかいな。
2メートルはあるんじゃないか?
俺の方へ近づいてくる。
俺の前1メートルくらいの所に立つ。
顎に片手を置き、俺を品定めしているようだ。
「ふむ。 我々と見た目は変わらんな」
そう言ったかと思うと、いきなり抜刀した。
ドレイクの剣は一応鞘付きのようだ。
ただ左腰から吊り下げている諸刃の剣。
それをいきなり俺に向けて横薙ぎに払ってくる。
・・・
だが、遅い。
遅すぎる。
俺はその初動に少し驚いただけだ。
もし集中していなければ、俺の近くに来るまで剣が迫っていただろう。
だが、今はドレイクが右手で剣を手にしてスーパースローモーションで俺に迫ってきている感じだ。
このおっさん、いきなり斬りつけてくるとは何だ?
俺はそう思いつつ、ドレイクの剣の軌道を読む。
・・・
間違いなく俺を貫く。
本気か?
俺を試すのなら、寸前で止めるつもりかもしれない。
だが、わからない。
俺はいろいろ考えていたが、とりあえず俺の身体に当たる前に止めなければ俺も痛いだろう。
いや、神光気を纏えば問題ないか。
待てよ、それはマズいだろう。
う~ん・・やっぱ、飛燕で受けよう。
俺がそこまで考えても、まだドレイクの剣は俺には届かない。
俺は飛燕を抜き、ドレイクの剣に合わせる。
ガキーーーン!!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
よろしければ、ブックマークなど応援お願いします。




