75 オーガという魔物
俺たちは順調に進んで行く。
このフィールドにはオーガジェネラル:レベル26程度の魔物が一番強いようだ。
少し危なくなりながらも、俺が特に手出しすることもなく進んで行けた。
しばらくすると、大きな扉の前に到着。
ボス部屋だ。
その扉を見上げながら、ピマンが言う。
「リーダー、俺たち普通に進んで来れましたね。 俺の頭ではここでかなりの時間を使う計算だったのですが・・収納ボックス付きのバックパックに食べ物いっぱい詰めて来たのに必要ないみたいです」
「まぁそういうな。 備えあれば憂いなしだ。 みんな体力も十分だな。 少しここで休憩してボス部屋に入ろう。 中のボスが何かはわからないが、このフィールドではオーガたちが多くいた。 おそらくその上位種だろうと思う」
ビーツが顔を引き締めながら言う。
「そうっすね。 おそらくオーガキング辺りじゃないですかね?」
ピマンがつぶやく。
「オーガキング・・ね」
プリカがつぶやき、続ける。
「ねぇ、オーガって、もし生きたまま掴まると慰みものになるっていうけど、ほんと?」
ビーツがチラっとプリカを見て、下を向いたまま答える。
「プリカ、その通りだよ。 オスは食べられるが、メスは自分達の種族と交配させるんだ。 それで種が残れば死ぬまで子供を産まされ続ける。 その後はエサだな」
・・・
少しの沈黙が流れて、プリカが言葉を出す。
「ちょ、ちょっとビーツ! 怖いこと言わないでよ。 じ、事実だとしても、改めて言葉で聞くと嫌だわね。 いっそ死んだほうがマシね」
「プリカ、それがなぁ、死ねないんだよ」
マーネギが真剣な顔をプリカに向ける。
「えぇ!! 死ねないってどういうこと?」
マーネギがプリカを見つめて言う。
「舌を切られて口を塞がれる。 そして両手両足を縛られるか切断される。 魔法も詠唱できないし動くこともできない。 オーガのいいようにされるんだ・・うげぇ、自分で言ってて気持ち悪くなってきた」
マーネギが口を押えて横を向く。
「ほ、ほんとなの、それ? ねぇ、マーネギ・・ピマン、ほんと?」
プリカが言うと、ビーツがクスクス笑っている。
「え、何? どういうこと?」
プリカがキョロキョロとしている。
「あっははは・・プリカ、心配しなくてもいいよ。 マーネギがそのシーンを見たはずないだろ? 見たのなら死んでるし、誰も見たことあるわけないだろ?」
ビーツがそう言うと、プリカがしばらく考えていた。
・・・
「あーーー! マーネギ、騙したわね! 私を驚かせて何が面白いのよ! あなた怪我しても回復しないわよ」
プリカがマーネギに突っかかって行く。
マーネギは頭をポカポカ殴られながら謝っていた。
俺も笑いながら聞いていた。
するとプリカが俺の方を見て言う。
「テツも笑ってないで話を止めてよね」
「いやいや、怖い話だったんで聞き入ってしまったんだよ。 でも冷静に考えるとおかしいよね。 オーガに掴まったら生き残れないんだよね。 だったら証人が存在しないのに、マーネギの話が上手だったから・・」
俺が笑いながら答えていると、ビーツが真剣な顔になって言う。
「・・テツ、生き残りがいないわけじゃないんだ」
「「え?」」
俺とプリカがビーツを見る。
ビーツは下を向いたまま話す。
「たまにオーガが討伐されて、その巣が発見されることがある。 その時に正気を保っている人がいたり、さらわれて来たばかりの人がいたりするんだ。 あ、俺も人に聞いた話だから真意のほどはわからないよ」
ビーツが顔を上げて顔の前で手を振っていた。
「えぇ~、そんなぁ・・ビーツ、ちょっと怖いじゃない。 私、帰ろうかなぁ・・」
プリカが下を向いて少し考えていたが、顔をパッと上げるとマーネギを見た。
「そうよ! マーネギ、あんたが悪い!」
プリカはそう言うと、マーネギを蹴飛ばしていた。
プリカ、その蹴り格闘家に向いているぞ。
俺はそう思って見ていた。
「さて、身体も休まっただろ。 いつまでこんなことをしていられない。 行くか」
ビーツがそう言うとみんなうなずく。
「行くぞ!!」
ビーツの声と共に、全員で大きな扉の前に立ち、みんなでゆっくりと扉を開けて行った。
ズーーーン・・・。
扉が開かれて、俺たちの背後で閉じられる。
これでボスを倒すか、死ぬか、転移石で脱出するしかの選択しかない。
ビーツたちは転移石は持っていない。
「みんな気合入れろよ。 まさかこんなに早くここまで来れるなんて思っていなかった。 転移石はないぞ」
ビーツの声を聞きながら、俺は索敵をしてみる。
ピピピ・・。
オーガキング:レベル28×1、オーガジェネラル:レベル26×3。
「リーダー、この部屋の奥にいます」
俺は見えた通りをビーツに伝えた。
「そうか、やはりオーガキングがいたか。 それにレベル28とはな・・まずはオーガジェネラル3匹を倒してキングに向かうのがベターだな」
ビーツがそう言いながら続ける。
「それにしても、テツのその能力のおかげで助かるよ。 それがなければ、行き当たりばったりだものね」
「あぁ、全くだ。 いったいどうやったらそんな能力が手に入るんだよ」
マーネギが言う。
「マーネギ、盗賊の職種を極めて行くと稀に索敵能力が備わるって聞いたことあるぞ。 でも、戦闘向きじゃないし、誰もなりたがらないからな」
ピマンが答える。
「そうだよな。 華がないものな。 それにレベルも上がりにくいだろう。 戦士系が手っ取り早くレベルアップできるし、レベルが上がってから盗賊系に行くやつはいないだろうしな・・」
マーネギがそこまで言った時だった、ビーツが静かに言葉を出す。
「そこまでだ。 来たぞ」
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