74 索敵スキル
さて、俺は迷っていた。
レベルを教えてもいいが、どうしようかと。
・・・
よし、教えておこう。
どうせこの戦いが終わったらお別れだ。
それに目の前で死なれたら後味が悪い。
俺のことがバレても、その時はその時だ。
「リーダー、敵ですが、オーク:レベル23×5 オーガ:レベル25×3 オーガジェネラル:レベル26×1で近くにいるのが全部です」
俺がそう言うと全員が固まっている。
そして俺を凝視していた。
・・・
「テツ、君はいったいどんなスキルを・・いや、それはいい。 ありがとう、これで戦いやすくなったよ」
ビーツが目を大きくして力強くうなずく。
「みんな、格下の魔物だからと言って油断するなよ。 いくぞ!」
ビーツがそう声を掛け、全員で向かって行く。
ビーツが先頭になり、ピマンとマーネギが少し広がって後ろにつく。
ビーツの後ろに位置し、ピマンとマーネギの中間にプリカが位置している。
ちょうどトライアングルというか菱形というか、ビーツを頂点に布陣を進めて行く。
俺はプリカの後ろの方で位置していて、殿だ。
だが、全体の動きが良く見える。
何かあれば助けよう。
そう思いながら、一緒に進んで行く。
「来たぞ!」
ビーツが声を出す。
オークが5体並んで迫ってくる。
棍棒のようなものを持っている。
ビーツがレベル27。
他の連中もレベル26だった。
問題ないだろう。
ビーツがダッ! と駆け出して、一気に3匹のオークを片づけた。
見事だ。
無駄な動きがなく、きれいに剣の軌跡を描く。
残りの2匹はピマンとマーネギがそれぞれ担当していた。
プリカはいつでも回復魔法をかけれるように準備している感じだ。
いいね、このパーティ。
俺は後ろから見ながらワクワクしていた。
次にオーガ3匹が待っている。
その奥にオーガジェネラルがいる。
ビーツたちは陣形を保ちながら近づいて行く。
陣形がやや小さくなっていた。
オーガが大きな棍棒みたいなのを振り上げて打ち付けてくる。
ビーツたちはそれを躱し、オーガに斬りつける。
ビーツの前面のオーガは問題なく倒れる。
ピマンの前面のオーガも大丈夫だ。
ただ、マーネギの前のオーガが倒れた瞬間に、オーガジェネラルが何か放っていたようだ。
!
俺もよく見えなかった。
どうやらオーガジェネラルが弓のようなものを持っている。
銀色に輝いていた。
その弓から放たれた矢が、マーネギに向かって飛んだきたようだ。
というか、オーガの背中越しに撃った感じだな。
あのオーガジェネラルは味方などという考えはないようだ。
オーガが倒れてもいいという感じだ。
オーガジェネラルの放った矢はオーガの肩をかすめていた。
オーガが一瞬、動きが鈍くなる。
そこを狙ってマーネギがオーガを倒していた。
俺が前に来たときには、即座にボスの部屋に行ったからわからなかったな。
ここのボスはオーガキングだったかな?
俺の頭にフトそんな考えが現れたが、忘れた。
マーネギもオーガジェネラルが放った矢に驚いたようだが、うまく躱せたようだ。
「マーネギ! 大丈夫か?」
「あぁ、問題ない。 しかし、あのオーガジェネラル・・自分たちの仲間だろうに・・」
マーネギがオーガジェネラルを睨む。
「良かった・・さ、後はあのオーガジェネラルだけだ」
ビーツがそう声を掛け、3人で向かって行く。
・・・
さすがにレベルがビーツたちの方が上なため、それほど危なくもなくオーガジェネラルを倒せた。
「ふぅ、何とかなったな」
ビーツがつぶやく。
「あぁ、テツが相手のレベルを教えてくれたおかげだな」
ピマンがそう言うと、みんなでうなずく。
「プリカもありがとう。 いつでも回復できる準備していたんだものね」
「べ、別にいいわよ」
ビーツの労いの言葉に照れていたようだ。
「さて、このまま進むか」
ビーツがそう声をかけ、前進する。
進みながらピマンが声を出す。
「リーダー、凄まじく速く進めてますね。 怖いくらいですよ」
「あぁ、そうだな。 テツの索敵の能力がとても役に立っている。 本当なら探りながら這うように進むんだがな」
ビーツがそう言うと、マーネギが笑う。
「俺たちはイモムシですか」
「「あはは・・」」
明るい声を出しながら進んで行ける。
カラ元気ではない。
いいことだ。
俺も笑いながら聞いていた。
ビーツたちはあれこれと詳細を聞いてこない。
聞きたいだろうが、それをしない。
そして、そういう素振りすら見せない。
いい奴等だ。
俺は歩きながら不思議に思っていた。
索敵スキルを持つ人をパーティに入れていないのはどういうことなのだろうかと。
「リーダー、聞いてもいいですか?」
「どうしたんだい、テツ」
「はい、どうしてこのパーティに索敵スキルを持つ人を入れていないのですか?」
俺がそう聞くと、皆少しうつむき言葉を失う。
「そうだね・・実は・・」
ビーツが言いにくそうにしながら言う。
聞けば、索敵スキルを持つものはほとんどが盗賊関係の職種が多い。
狩人の職種もあるが、そんな職種はほとんどソロか他のパーティに入っていて希少種だそうだ。
このパーティはランクが高いので、すぐにでも集まりそうな感じだったが違ったようだ。
攻略組には集まらないらしい。
皆、命が惜しいという。
冒険者だろ?
俺はそう思うが、ゲームじゃないからだろう。
死ねば終わりだ。
確かに、そうなるかもしれないなと俺は情報修正する。
それに盗賊職種は、素行が悪いのが多いそうだ。
パーティの金を盗む、肝心な時に逃亡したりして全滅するパーティが珍しくないという。
それで誰も盗賊職種は仲間にしないらしい。
また、索敵スキルの発現も案外レアみたいだった。
そうだったのか、と俺は一人納得。
ブルーのところは運よく狩人の職種がいるらしい。
そんなことを話してくれた。
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