71 緊急招集
「いえ、特にどうということはないのですが、この俺の刀で接近して敵を倒すスタイルが多いですね」
俺は正直に答える。
「なるほど。 テツは接近戦タイプということね」
プリカがニコッとして答える。
「なんだ、俺と同じスタイルか」
ピマンがそう言いながら、自分の武器をテーブルの上に置く。
諸刃の剣のようだ。
俺もその仕草につられて、飛燕をテーブルの上に置いた。
「俺もこの刀、飛燕って名前をつけているのですが、これで戦います」
ピマンがビーツを見た。
ビーツがうなずく。
「テツ、もし良ければ触れてもいいかな?」
ピマンが言う。
「どうぞ。 あ、ただこの武器は俺専用なので扱えない人がほとんどですよ」
俺は急いで付け加える。
ピマンがそっと手を伸ばし、飛燕に触れる。
飛燕の見た目はそこら辺にある日本刀と変わらない。
ピマンが片手で持ち、持ち上げようとする。
・・・
当然、ビクともしない。
ピマンが真剣な顔つきになった。
席を立ち、両手で思いっきり持ち上げようとする。
「ふぅーーーーん!!」
ピマンの顔が真っ赤になる。
「ぷはぁ・・はぁ、はぁ・・ダメだ」
ピマンが天井を向き、椅子に倒れ込むように座った。
「ピクリとも動かないわね・・」
プリカのつぶやきが飛んでくる。
「はぁ、はぁ・・テツ、この武器はいったい何でできているんだい? まるでビクともしない」
ピマンが言う。
他の連中もみんなで一緒に持ち上げようとしているが、全く動かない。
周りから見たらテーブルに手を伸ばして唸っている絵面だろう。
「何と言うか・・俺専用の武器ということくらいしか答えられないのですが、確か魔石を加工していると思うのです」
!!
「「魔石を加工だって?」」
ビーツとマーネギの言葉が重なる。
「魔石を触媒にして武器を作るのは知っているわ。 それでも稀な武器のはずよ。 それを加工だなんて・・」
プリカがつぶやくように言う。
皆で少し顔を見合わせてから俺を見る。
俺は何を驚いているのかわからない。
じいちゃんが普通に当たり前に作っていたからな。
ビーツが周りを少しキョロキョロしながら前のめりになり小声で言う。
「テツ、凄い武器を持っているね。 魔石の加工なんてドワーフくらいしかできないんじゃない。 この世界でもどこかにいるとは思うんだが、まだ出会ったことはない。 たまに冒険者なんかで伝説級の武器を持っている人もいるけど、ほとんど飾りだね。 その武器を振るうこともできない。 俺が知る限り、武具は存在するがそれを扱える人を見たことがない。 ブルーにしても無理だろう」
ビーツはそこまで話し、一呼吸おいて続ける。
「テツ、君はいったい何者なんだ?」
他の仲間もジッと俺を見る。
俺は返答に困った。
まさか外の世界からやってきたとも言えないしな。
!
「俺は神殿騎士なんですよ。 それにいつもパートナーでいる女の人ですが、遠い国のお姫様でして、その護衛で俺がいるのです」
でまかせにしてはうまく言えたと思ったが、大丈夫か?
俺はゆっくりと顔を動かして全員の反応を見る。
ビーツたちは何やらブツブツと話して、うんうんとうなずいていた。
「そうか、神殿騎士だったか。 それなら武器も納得だ。 それにあの美人さんがねぇ・・なるほど」
おい、信じたのか?
この世界の住人って、人がいいよな。
俺の方が呆れるくらいだ。
「テツ、俺たちもあまり詳しいことは聞かない。 よろしく頼むよ」
ビーツがそう言って握手を求めてくる。
俺もしっかりと握り返し、ダンジョンの話になった。
・・・
・・
早速俺たちはダンジョン攻略へ行くことになった。
おそらく俺の様子見もあるのだろう。
24階層までカウントしているのですぐに飛べるという話になった。
「あ、俺たちは24階層までカウントしているけど、テツは・・これはうっかりしていた」
ビーツが苦笑いしていた。
「リーダー、俺も24階層は大丈夫です。 神殿騎士の訓練で連れて行ってもらったことがあります」
嘘ばかりだな。
俺は平気で嘘を言う。
「そっか、神官長はドレイク様だものね。 当たり前か」
プリカが大きくうなずきながら勝手にフォローしてくれた。
「よし、それなら話は早い。 早速行こう」
ビーツがそう言うと、みんなで席を立ちダンジョンへと向かった。
席を立つときに俺が飛燕を軽々と持ち上げるのを見て、改めてみんなが驚いていた。
◇◇
<交易都市>
ドレイクを乗せた輸送車が交易都市に到着した。
輸送車は発着場には停車せずに、そのまま神殿へと向かう。
神殿に到着し、ドレイクが降りて来る。
同じタイミングで魔術都市の三巨頭も到着したらしく、ドレイクを見て近寄って来た。
「おぉ、ドレイクではないか。 久しぶりだな」
ドーブが言う。
他の2人もニコニコしながら軽く挨拶をする。
「ドーブか。 元気そうだな。 我らがそろうなど滅多にないからな」
ドレイクは答えながらゆっくりと歩いて行く。
ドーブたちも一緒に歩きながら話しかけた。
「聞いたかドレイクよ。 フォルセティが離反したらしいぞ」
インパだ。
「あぁ、知っている。 いったい何を考えているのやら」
ドーブは別にどうでもいいという感じで答える。
「そうか。 おそらくはそのことで我々が招集されたのだろう」
インパが微笑みながら言う。
「そういえばドレイク、貴様のところに神殿騎士の2人組がいなかったか?」
ドーブが歩きながら聞く。
「あぁ、いるらしいな。 まだ会ってはいない」
「そうか。 我々の魔術都市にも来たが、結局は我々も会わず仕舞いだったからな。 ま、どうでもいいことだがな」
ドーブは吐き捨てるように話す。
「それよりもドレイク、また一段と強さを増したような気がするぞ。 身体からオーラを感じる」
ドーブがドレイクを見ながら言う。
「フッ、その言葉、素直に受け取っておこう」
三巨頭とドレイクが神殿に入って行く。
交易都市の神官長たちも到着したようだ。
スカディもいた。
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