61 ビフレストのダンジョン
俺は周りを見て、急いで天井へジャンプ。
・・・
まるっきり忍者だ。
天井に張り付いて営業マンと身なりの良い男が行き過ぎるのを見ていた。
さて、あの見張りのガタイの良い男を倒して子供たちを解放・・この方法ではダメだな。
あの男たちの話では、ドレイクとかいう人物は身なりの良い奴よりも上位にいるらしい。
それに不正が嫌いな感じだった。
その人物に俺が匿名で知らせればいいだろう。
何とか解決するんじゃないか?
また、エルフを見つけたら保護してくれと精霊王には言われていたし、現場を混ぜても根本に対処していないと、いつまでも同じことが繰り返されるだろう。
どうせエルフの子供はこの屋敷からは移動しないだろうしな。
他の子供たちもすぐに危険というわけでもなさそうだ。
何よりも、子供を扱う事件というのは俺の中では絶対に許せない。
こいつ等全員、すぐにでも消してやりたいが、それではいつまで経っても同じことだ。
俺はそう思うと、周りに人がいないのを確認して移動。
パッパッパッと移動して、屋敷そして門の外へ移動した。
ふぅ・・クズが。
俺はチラリと屋敷を見て、後にする。
俺は一度ギルドに戻ると、受付に行った。
受付でドレイクって誰? と聞くと、受付の子が驚いた顔をする。
「テツ様、ドレイク様はこの街の神官長です。 テツ様って、神殿騎士ですよね?」
俺も慌てて、その場をしのぐ。
「え、い、いや・・ギャグ、そうギャグですよ、おやじの・・だはは」
俺は引きつった笑いをしながら話すと、受付の子も笑ってくれた。
「テツ様、そんなつまらない冗談を言っているとお連れの方に嫌われますよ」
受付の子は容赦なく言う。
「はぁ・・気を付けます。 それで、神官長に直接連絡と言うか苦情を言ったりする人はいるのですか?」
俺は要件だけを聞いてみる。
「はぁ? どういうことでしょうか?」
受付の子は変な顔で俺を見る。
「え、いや、俺の言い方が悪かったですね。 なんていうのかな、何か改善してもらいたいことでどうしようもないことなどの相談というか、そういった誰にも言えないような困ったことを直接神官長に言う手段はないのかと思いまして・・」
俺がそう言うと受付の子はうなずいて答えてくれる。
「なるほど。 ドレイク様は一般市民の意見をよく聞いてくださるお方です。 それにギルドにも投稿するボックスはありますし、街のいろんな場所にありますよ。 ライセンスカードからでも投稿できます。 ただし、ライセンスカードから投稿すると、誰が行ったのかわかってしまいますが、テツ様は神殿騎士ですよね? 直接お伝えすればいいのでは?」
受付の子がそう言って、一応投稿ボックスの方を指さして教えてくれる。
「え、あ、いや・・他の冒険者の人たちがそんなことを言ってたのを聞いて、どうするのかなって思ったんです」
俺はとっさにそう言葉を返す。
受付の子はどうでもいいらしく、にっこりと微笑んで次の冒険者を案内していた。
俺は軽くお礼を言って、受付を後にする。
投稿ボックスにはパネルボードが設置されていて、そこで文字を記入。
そのまま送信すると、ドレイクのところへ届くらしい。
便利だな。
俺は早速投稿ボックスのところへ行く。
選挙の投票のような仕切りで区切られている。
一応、プライベートは確保されているということか。
パネルボードを見て、送信先を選択。
神官長ドレイクという項目を発見。
それをタッチして、投稿内容を書いた。
『子供の人身売買が行われおり、エルフの子供も確認。 街はずれの立派な門構えの屋敷』
名前は・・あ、確認しなかったな。
そう思ったが、どうやら地図などの情報も添付できるようだった。
街の概略図が表示され、大きな屋敷だったので一発でわかった。
それをタッチして添付。
ドレイクに送信した。
さて、今度こそダンジョンへ行こう。
俺はそう思ってギルドを後にする。
ダンジョンの入り口に到着。
全く帝都のシステムと同じだな。
入り口でライセンスカードをかざし、誰が入ったのかわかるものだ。
入り口からフロアまでに自分の行きたい階層を選択。
ライセンスカードで階層を確認すると、選択した階層に到達しているシステム。
ただ、行ける階層は自分が進んだ階層以外にはない。
そして戻るときには自分の足で戻ってくるしかない。
結構厳しいと感じる。
ギリギリまで進んでいると、帰って来られなくなる恐れもあるだろう。
さて、俺はこのビフレストのダンジョンは初めてなので、1階層から進むことになる。
いろんな冒険者がいる。
入り口付近にはたくさんの人がいて、どこかのお祭りかと思うような雰囲気だ。
みんな明るく、希望に満ちた顔をしている。
レベルアップと素材集めなど、お金にもなる。
ワクワクするだろう。
それに即席パーティなどを組んで、効率よく進もうとする人たちもいるようだ。
ん?
女の子たちだけのパーティもあるのか?
俺はそんな人たちを見ながら、一人で入り口を通過。
警備隊だろうか、笑顔で見送ってくれる。
ソロで入る人も珍しくはないということか。
俺はそんな風に思いながら、軽く挨拶をした。




