59 ダンジョンへ行ってみよう
神殿騎士、テツとルナか。
何でも外界からの来訪者だという。
特に大きな動きは報告されていないが、それが反対に妙に感じる。
神殿騎士はその特権ゆえ、豪華に振舞ったり横柄なものが多い。
また無駄に力があるものばかりだ。
一般市民に不評を買うのもうなずける。
そうなれば神官たちが取り締まり適切に処分するわけだが、まるでマッチポンプだ。
その行動がまた神官たちが評価される元にもなっているのだから。
まぁ、その後神殿騎士は神官銃で廃人同然になっているがな。
ドレイクは頭を振り、余計なことは考えないようにする。
「さて、行くか」
ドレイクは背中に剣を背負うと、神殿からダンジョン入り口へと向かう。
神殿の近くにダンジョンが設置されていた。
一般の冒険者の入り口とは違う。
神殿からだけの特別な入口。
ダンジョンの中に入れば同じ条件になるのだが、入り口だけが違っていた。
神殿からの入り口のところで2人の神殿騎士が待っていた。
それぞれがレベル28の2人。
2人は頭を下げてドレイクに挨拶をする。
「待たせたな。 では行くか」
「「はい」」
ドレイクと共に3人でダンジョンへと向かって行った。
テツが聞いていたダンジョン攻略者とはドレイクのことだった。
ビフレストの冒険者ランク1位はレベル28。
これは一般冒険者だ。
神殿騎士を含む冒険者ではない。
ドレイクこそが真のナンバーワンだったのだが、ドレイクにはそんなことはどうでもいい。
神殿騎士から神官長へと抜擢されて、このビフレストに就任。
メキメキと頭角を現し、すべてにおいて公平に接していた。
例外は作らない主義のようだ。
例え神職であっても厳罰にしていた。
だからこそ、武装都市ビフレストでは神殿の評価は高い。
ドレイクはライセンスカードをダンジョン30階層に合わせて階段を降りて行く。
ドレイクの後ろから同行している1人の神殿騎士が声をかけてきた。
「ドレイク様、後少しでダンジョンクリアですね」
「うむ」
ドレイクが背中越しに答える。
「我々もその感動を味わえると思うと、感無量です」
もう1人の神殿騎士が言う。
「油断はするなよ。 ここまでお前たちの協力があればこそ来れたのだ。 感謝する」
ドレイクはそう言うと、30階層のフロアに到着した。
ドレイクは30階層のフロアに1歩踏み入れて立ち止まる。
ゆっくりと辺りを見渡して深呼吸をする。
「ふぅ・・ここが30階層か」
神殿騎士2人もうなずきながら目を大きくしていた。
「ここをクリアすれば、後は最下層になるな」
ドレイクはつぶやく。
「「はい」」
神殿騎士も同時に返事をした。
ドレイクはその声を聞きながらゆっくりと歩き始める。
◇◇
<ルナとテツ>
俺たちはギルドを出て、宿泊施設へと向かっている。
まだ寝るには早いだろう。
だが、チェックインだけはしておこうと思う。
紹介された宿泊所は、ギルドからそれほど離れていない。
一般冒険者ではBランク以上でないと宿泊すらできないという。
神殿騎士は問題なく宿泊できるそうだ。
宿泊施設の前に到着。
白い壁のギリシャ風の建物だ。
きれいなところだな、というのが第一印象。
中へ入る。
「いらっしゃいませ」
入り口は自動ドアになっているらしく、ドアの少し奥でゆっくりとお辞儀をしながら挨拶する男の人がいた。
微笑みながら聞いてくる。
「当宿泊所へお越しいただき、ありがとうございます。 どなたかのご紹介でしょうか?」
なるほど。
その微笑みの中に相手を探る感じを受ける。
俺たちを品定めしているわけだ。
俺はライセンスカードを提出し、ギルドからの紹介だと伝える。
相手の男はすんなりとライセンスカードを受け取り、確認して俺に返してきた。
「そうですか、ようこそおいでくださいました。 ありがとうございます。 こちらへどうぞ」
そういって男は俺たちを受付へ案内してくれた。
受付まで案内すると、男はまた入り口付近の元の位置に戻って行く。
俺は受付で宿泊の事を聞いていた。
どうやら1泊5000ギルだそうだ。
朝食はつくらしい。
結構リーズナブルなところだなと思い、とりあえず10日宿泊予定を組む。
ライセンスカードを受付のボードパネルにかざし、すぐに手続き完了。
先程の男とは違う人が俺たちを部屋まで案内してくれた。
建物は5階建てらしく、俺たちは3階に宿泊するらしい。
エレベーターで上へ移動。
受付奥にエレベーターがあるが、大きなフロアに設置してあり、ガラス張りのようで眺めは良い。
そして、不思議と高さを感じない。
これなら高所恐怖症の人でも大丈夫じゃないのか?
そんなことを思いながら上の階層へと運んでもらう。
すぐに到着し、部屋まで案内してもらった。
「こちらの部屋でございます。 どうぞごゆっくり」
案内してくれた男はそう言うと、そのまま部屋を後にする。
アニム王のところでもそうだが、ここでもチップ制度みたいなのはない。
アメリカの映画とかでは、露骨なのになると、ポーターが指先をスリスリしてなかなか離れないシーンがあったななんて思い出した。
そんなうっとうしさはない。
俺たちは部屋に入り、中を確認。
それほど広くもなく、一般的なビジネスホテルの感じだ。
これなら神殿の方が比較にならないくらい豪華だ。
ま、寝れればどこでも同じだが。
俺はそう思いながら、ベッドに腰を下ろす。
ルナも向かいのベッドに腰を下ろし、そのまま上向きになって寝っ転がる。
「テツよ、ワシは少し寝るぞ」
ルナはそう言うとそのまま眠ってしまった。
俺はその寝顔を見て、やっぱり美人だよなと思いながらお腹に布団を掛ける。
そして、どうしたものかと少し考える。
・・・
ルナのことじゃないぞ。
!
そうだ!
ダンジョンへ行ってみよう。
俺はフト思った。
ルナを起こさないようにそっと部屋を出る。
部屋のドアが静かに閉じられた。
ルナがゆっくりと目を開け、テツの出て行った扉を見つめている。
◇
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