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52 やはりギルティ



「なるほど、神殿騎士様ですか。 ようこそ神殿へ。 神官長に御面会ということですね。 お呼びいたしますので、しばらくお待ちいただけますか?」

神父風の男はそう答えると、丁寧にライセンスカードを返してくれた。

俺はそれを受け取り、お願いしますと言ってこのロビーで待たせてもらう。

ロビーの椅子に座って待つ。

俺は長椅子に座りながら中を見渡していた。

静かだ。

みんなが特にしゃべることもなくゆっくりと行動している。

そんなことを見ていたが、ルナがやけに静かなので見てみる。

「ルナさん、どこか調子が悪いのですか?」

「いや、そうではないが、あまり気持ちの良いところではないな」

ルナが答える。

「気持ちが悪いのですか?」

「フッ、ワシに干渉できるほどではないが、神殿の中の雰囲気がジメッとまとわりつく感じだな」

ルナがそう言いながら苦笑する。

俺はそんなルナを見ながら、この人も苦手なものがあっても我慢するのだなと感心していた。

すると、俺たちの前に年配の男の人が現れる。


「ようこそお越しくださいました、神殿騎士殿。 確か、テツ殿とルナ殿でしたな。 私はこの神殿の神官長スカディです」

スカディはそういうと、笑顔で俺たちを迎えてくれた。

俺はその第一声を聞き、心に警戒シールドを展開。

神殿の情報網はしっかりとしているな。

俺たちの情報は共有されているというわけか。

神官長は挨拶を済ませると、俺たちを自分の部屋へと案内してくれるようだ。

「長旅でお疲れでしょう、どうぞこちらへ」

スカディが俺たちを先導してくれる。


俺たちは神官長の後をついて行く。

大きな扉の前に来て、神官長がゆっくりと扉を開ける。

俺はこの扉から、また他のところの神官長のような立派な作りの部屋かと思って見ていた。

扉が開き、中へ入って行く。

驚いた。

簡素なというか、質素な部屋だ。

椅子も粗末な椅子が一つ。

部屋の空間は広いが、ほとんどが書棚で埋め尽くされている。

椅子の横にテーブルがある程度だ。

後は何もない。

来客用の椅子すら置いていない。

俺が部屋を少し見ていると、神官長が声を掛けてくる。

「どうかされましたか、神殿騎士様」

「いえ、部屋がきれいに片付いているというか、質素な部屋なので少し戸惑っています」

俺は正直に答える。

神官長は少し微笑み答える。

「なるほど、他の街の神殿と違う感じでしょうか」

神官長が言う。

俺がうなずくと、神官長が言葉を続ける。

「神官長の部屋は、その個人の自由が許されております。 まぁ、私が華美を嫌うものですから、こういった部屋になったにすぎません。 代わりに本などが増えておりますが・・」

神官長が微笑みながら教えてくれた。


街の規模によって、神官職や神殿には定期的に予算が割り振られているらしい。

それを神官長の裁量によってある程度自由度が許されているという。

神官長の色が出るようだ。

ただ、俺の好みの方向を向いているからといって、この神官長が信用できるはずもない。

俺がうなずいていると、ルナが遠慮なく神官長に魔法をかけていた。

「チャーム」

・・・

ルナさん、遠慮ないな。

俺は少し引いた。

・・・・

・・

ルナと一緒にいろいろ情報を引き出す。

やはり魔法陣はこの神殿の地下にあるようだ。

この部屋の書棚の奥から降りて行けると言う。

神官長はその場所を知っているし、管理を任されているということは、ギルティだろう。

俺の人を見る目もまだまだだな。

少し反省。


ルナが神官長にこの場で待機を命じ、自分たちが帰って来るまで誰も近づけるなと指示。

ルナが指示を出すと、チャームをされた人間は大喜びをする。

完全なドMじゃないか。

駄犬丸出しだ。

ルナが指示を出し、神官長の顎の下を軽く撫でてやっていた。

神官長は飛び上がるように喜んでいる。

・・・

見ていられない。

あまりにも気の毒だ。


俺たちは神官長に書棚を移動してもらい、地下の魔法陣へ行く通路へと移動する。

神官長が「お早いお帰りを。 気を付けて行ってらっしいませ、マスター」

などと言っているのが聞こえる。

もはや俺には言葉すらない。

ルナと一緒に魔法陣へと向かう。

書棚の奥の扉を開けると、地下へ行くエレベーターのような乗り物がある。

音もなく動く。

そして、上に行っているのか下に行っているのかわからない感じで移動。

すぐに到着。

ルナが一歩踏み出すと、薄暗い空間に明かりが入る。

パパパ・・と光が灯っていく。


大きな石が規則正しく配置されていた。

なるほど、どこの魔法陣も同じような感じで設定されているな。

俺はそう思いながら空間を眺める。

ルナが人差し指を立てて、軽く振る。

少しすると、空間内にうっすらと緑色の光がともる。

要石かなめいしだろう。

「テツ、あの石を破壊すればこの魔法陣も終わりだ・・ふぅ」

ルナはそう言うと、近くの岩の上に腰かけた。

「ルナさん、お疲れですか?」

俺は聞いてみる。

「うむ。 あの駄犬を見ていると、人間とは不自由なものだな。 何か変に疲れる感じがする」

ルナはそう言うと苦笑していた。

「そうだ。 テツよ、少し顔を見せろ」

ルナがそう言う。

何だ? 

俺はそう思いつつ、ルナの方を向く。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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